何かと比較される2社ですが、在庫管理力という意味ではどちらに軍配があがるでしょうか?


何をもって在庫管理力というべきか定義をした上で、その評価指標を設定することで、ある程度客観的な判断ができます。


在庫は何のためにあるのでしょうか?もちろん、売上があったときにすぐに納品するためにあると考えられます。また、仕掛品なども在庫をもたないと、何かの拍子で、部品供給が止まると、生産ラインが止まってしまいます。新潟で地震がおきたときに、たった一つの部品を作るメーカーの工場の生産がとまっただけで、日本中の車の生産がとまりそうになったことは記憶に新しいといえましょう。


在庫があれば、急なお客の納品要求や、途中の供給が止まっても、対応ができます。従って、在庫は予想できない不確実性に対応するためにあると言えましょう。


ではどの程度持てばよいのでしょうか?たくさん持てば、いろいろな不確実性に対応できますが、リスクも生じます。一つは、商品の陳腐化リスクです。デジタルカメラなど、半年で新商品が出てくる場合、ちょっと長めに在庫をもつとたちまち、値下がりリスクにさらされます。また、部品も長期間在庫で持っていると、なかには物理特性に変化が生じてしまい、不良化するリスクがあります。また、在庫をたくさん持てば、倉庫も持つ必要があり、また、それを管理する人もたくさん必要になります。在庫していた部品が紛失したり、そもそも生産のリードタイムが長くなってしまうというリスクもあります。


忘れてはならないのは、在庫はお金そのものだといえます。仕入を代金を支払ったあと、売るまでは、そのお金が寝てしまうことになります。そのお金は、借り入れなどでどこからか調達しなければなりません。この不況下で財務体質が悪化している企業が多い中で、在庫をなるべく少なくして余計なお金の支出はなるべく抑制しなければなりません。


そう考えるといったいどの程度の在庫を持てばよいのでしょうか?


北米の一流製造業では、平均的にみれば年間売り上げ高の約30日が在庫となっております。しかも、とても興味深いのは、売上がどう変動しても、ぴったりと30日で推移していることです。これは明らかに、いろんなバランスを考えて、30日が最適だと経営判断して、明確に管理されていると推察されます。


では、パナソニックとソニーではどうなっているでしょうか?パナソニックは40日を平均に上下5日で変動していますが、コントロールされているという印象があります。


一方ソニーですが、2000年代の初めでは、30日-40日で推移していましたが、2005年以降は50日が平均となり、しかも最大60日、最低30日と振れ幅が非常に大きくなっています。これは、世界の製造業やパナソニックと比べると、在庫水準が売上高比で見て管理されているかどうか、という視点でみて、相対的に劣っているといえます。また、平均すれば、50日ということは、世界の一流企業が30日であることを考えると少し多いような気がします。


もちろん、ソニーは、ゲームの比率が多い、映画なども手がけている、など、不確実性が高い事業が多いため、在庫を持たざるを得ないという事情もあろうかと思います。よって単純に他社と比較できないとは思いますが、改善の余地があるのではないかと推察されます。


以上の考察を考えると、少なくとも、今得ている情報からは、タイトルの勝負の軍配は、パナソニックに上がるといえるのではないかと思います。


なお、なぜその差が出たのかは、さらに分析をおこなっておりますが、その内容は弊社ホームページに掲載されているJPRレポート「不確実性を競争力に変えるマネジメント力強化に向けて 」をご参照していただきたいと存じます。


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