日本教育経営学会実践推進委員会 第6回実践事例研究会に参加して | Beyond―愚直に、ひたむきに生きるー

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独立研究者として子ども・若者参画について論文を執筆しています。ちなみに発達障がい当事者でもありますo(≧∀≦)o。よろしくお願いします。

 年度末も差し迫った3月31日(日)の午前に日本教育経営学会実践推進委員会の主催する「第6回実践事例研究会:NPO の立場から考える教育経営-岩手県大槌町における学校教育の復興の軌跡-」に参加した。この会は、「教育経営実践の当事者」をより幅広く捉え、NPOの立場から学校教育とつながり、活動しているNPOカタリバの菅野祐太氏による報告とそれを元にした教育経営実践に関する意見交換会であった。

 ここでは、まず、菅野氏から岩手県大槌町の教育行政に携わった自身の経験について報告があった。そのポイントは、以下のようなものであった。

 東日本大震災から13年が経った今、

・NPOという存在は教育経営学においてどのような役割を担っているのか。

・行政とNPOの協働はどのように行うべきか。

・教育指針をつくるためになぜ住民参加の教育大綱づくりを目指したのか。

・高等学校を核とした地域づくりはどのようにされうるか。

 

 筆者からは、NPOカタリバにも籍を置いている菅野氏に「学校や教育委員会との関わりの中で、これは教えないで欲しいとか、これはやらないで欲しいといったNPOとしての活動を制約するような動きが見られなかったか」という質問をした。これは、ある自治体で学校教育に携わったNPOが「子どもの権利について、生徒たちに教えるのはやめて欲しい」と言われ、そのNPOのスタッフが自分たちの活動にジレンマを感じた事例が実際にあったため、カタリバでもそうしたことがあったかを知りたかったから質問したものである。とりわけ、カタリバは、ルールメイキングとして校則見直しにおける対話の実践をしているので、校則や自分たちの生徒指導を変えたくなかったりした教師がいた可能性が考えられ、子どもの最善の利益の実現を目指すNPOとして、矛盾や葛藤を抱える可能性が考えられたからである。

 これに対し、菅野氏からは、「私たちは、学校や教育委員会からの依頼があってから動くのが原則なので、そもそもそうしたしないでほしいことややめてほしいことについては、事前に話はない」ということを強調。そのうえで、カタリバとして、さすがに見過ごせないこと(例えば、学校での朝礼後の校則に基づく服装や持ち物の検査など)は、やめるよう教育委員会や学校に働きかけることがあったとした。菅野氏は、フラットな視点で見ることのできる立場だからこそ意見が集められる」とも述べていて、学校や教育委員会に変容を促すことの難しさと同時に、子どもや若者を学校づくりやまちづくりのパートナーと位置付けていくことの重要性が垣間見えた場面であった。

 筆者自身は、教育自治立法の追求という観点から「大槌町子供の学び基本条例」の制定にも関心を持った。全国的には、自治体の教育法というと、子どもの権利条約に依拠した子ども条例や青少年の健全育成を目的とした健全育成条例、子育て支援や少子化対策条例などがあるが、大槌町の条例は、教育基本法に依拠したもので珍しい。この条例が徳目だけを列挙した理念条例ではなく、教育行政に対する住民参加、子ども参加を促す実効性のあるものになっているかどうか、今後も注目したいと考えた。