こんにちは。
今回は、佐々木が悠二に手渡した本、
フランツ・カフカの「変身」と佐々木自身の関係について綴ります。
ネタバレ(映画本編、「変身」ともに)ありです。
(C)映画「佐々木、イン、マイマイン」
放課後のバスケットコートで佐々木と悠二が座り込んで話すシーン。
「100回読め。血となり肉となる。」と言って佐々木が悠二に一冊の本を渡します。
映画のパンフレットに載っていた情報ですが、
ここで渡した本はフランツ・カフカの「変身」だそうです。
佐々木が渡したこの「変身」は、悠二へのSOSだったと僕は思います。
「変身」は、
グレゴール・ザムザという男がある朝目覚めると巨大な虫になっていた、というお話。
このあらすじから佐々木は、
虫になり周囲から拒絶され「孤独なったザムザ」と
親との時間を過ごせずに「孤独を感じている自分」を重ねていることが推測できます。
はっきりとは言わないものの、心のどこかでその孤独に気付いてほしい、
悠二に気付いてほしいと佐々木は思っていたのでしょうか。
この「変身」を実際に読んで知ったのですが、
虫になった主人公のグレゴールは、父親に林檎を投げつけられ、
その傷が原因で衰弱し、遂には死んでしまいます。
佐々木はグレゴールと自分を、「孤独」という側面だけではなく
「父親に殺される息子」としても重ねていたのではないでしょうか。
高校時代、父親に甘えられずに孤独を感じていた佐々木。
その空白の時間はある意味「死」であり、
つまりある意味、父親に殺されていた時間だったのでは。
佐々木にとっての「変身」は、
「孤独」の象徴であり、自らの「父子関係」の象徴でもあったのです。
また佐々木は、悠二にこそSOSを届けたかったのだと思います。
佐々木は父親との二人暮らし。
(しかしその父親はいつもどこかへ出かけており、ほぼ一人暮らし状態。)
悠二は祖母との二人暮らし。
彼らには「親の不在」という共通点があるのです。
この共通点が二人の間に他とは違う絆・親近感を生んでいます。
佐々木が悲しげな表情を見せるのも、涙を流すのも、いつも悠二の前だけ。
「悠二、やっぱお前おもんな。」という発言の裏に、悠二への信頼が伺えます。
佐々木から、信頼を置く悠二への密かなSOS。
「変身」に込められた佐々木の思いを僕なりに読み解いてみました。