竜の吹いたブレスはチロチロと、幼児の小便よろしく目と鼻の先のララまで届かずに落ちた。音が凄まじかったのは最初だけで、垂れ流している間はピーヒョロピーヒョロロ。おもちゃの笛のようだった。
「ふ…ふえぇえ!?」
拍子抜けして、へなへなとその場に崩れたララの身体は、勢いそのままに胸まで暗闇の中へ沈み込んだ。この暗闇のどこかに、へたるララの下半身だけが浮かんでいることだろう。
一方のドラキュラは…
「オキタァァァァァァァアッ!
今の、我が一番カッコイイところ!ちゃんと時を止めてあるだろうなぁぁぁ!」
姿を見せないオキタに向かって、炎を吐き散らかした。巨大な竜の吐く炎は、今度も小便の如く情けなく落ちる。
言動から、ここが別空間で、引き入れたのがオキタである、と彼は理解しているようだ。
「今度はどの部隊だ!
何度も何度も…お前の部隊はちと弱すぎるぞ!自分で救援に行けばよかろう!」
竜はなおも炎を垂れ流す。胸元に落ちる炎が思いのほか高熱で、ララは声にならない悲鳴をあげた。
悲鳴でやっと娘に気づいた竜が視線を下ろした、と思いきや、案の定、竜の首は途中から闇に紛れて見えなくなった。
「おお!ララ!復活したのか!
オキタが時を止めてくれるおかげで戦況はすこぶる良い!がしかし、最高神は姿をくらましたままだ。
きゃつの捜索は我らに任せ、お主は身体が乾くまでゆっくり休んでおれ。」
相変わらずの大声だが、ずいぶんと下の方から聞こえる。ドラキュラが娘のどこに向かって話しかけているのか、今は言及を避けよう。
重要なのは、誰の影か分かっていればオキタは対象を闇の世界に引き入れることができる、と証明されたことだ。さらにドラキュラは「時間停止」も肯定した。
つまり女神の祝福に護られた仲間たちと瀕死のララを、時を止めて救った、とするオキタの主張は成立する。
「ありがとう、おじさん。
それと…、オキタさん。なんか、ごめんなさい。助けてもらったのに、私…その…、めちゃくちゃ疑ってた…」
「気にしなくていい。こんな場所で目覚めたら誰だって疑心暗鬼になるさ。」
急接近する声に伴い深さを増した闇の奥から、レヴェナントが現れた。同時にララとドラキュラは「正しい位置」に戻される。
へたり込んだままだったララの大きな猫目が、レヴェナントを上目に見る。見つめられたレヴェナントは少しの沈黙のあと、前方中央の突起を長い指で二度掻いた。
「なるほど!我を能力の証明に使ったか。相変わらず説明が下手な男だ。ならば用は済んだな…。
オキタ!力を無駄にするな!さっさとゲートを開け!」
そんな2人の様子を見ていたドラキュラは、不機嫌な声を張り上げ、再び口の中に地獄の火種を灯した。赤黒く燃える火種は、数秒後に業火へと変わり、敵を燃やし尽くすだろう。
熱は暗闇が焦げるほどに高まった。しかし「いよいよ」の寸前で、ドラキュラは業火をゴクリと飲み込んだ。
「オキタ、もう少しだけ良いか?」
「ああ、まだ大丈夫だ。」
眉をしかめて問うドラキュラにオキタは取り繕ったような元気で答える。レヴェナントが縫われた口をギリギリと噛んだと見えたのは、暗闇の作り出した幻覚ではないのかも知れない。
「気になることがあるなら手短に申せ。」
頭を少し右に傾けて左斜め下を見るのは、考え事をしているときのララの癖だ。作戦会議中によく見られる仕草で、ベッカー・コトミのいう「エキサイティングでマーベラスなクリティカルアイデア」は、たいていこの仕草の後に出てくる。
ただ趣味の漫画を描いているときも同じ仕草を見せるから、必ずしも良いアイデアに直結しているわけではないらしい。ラウンジに置かれているララ作の漫画は、第1話以外、まっさらの新品である。ゾウさんを描いて娘に泣かれたことがある、ミス不器用のコトミにすら「絵が超下手」と言われる画力のせいかも知れないが…。
「うん…。えーと…最高神ってどこにいたの?」
「なんだ、その話か…。
JPが言うには、攻撃してきた銀髪がそうだと。返しにお見舞いした我の一撃を耐えておったから、きゃつで間違いあるまい。
まあ、逃げられてしまったがな!」
色々と口惜しそうに天を仰ぐドラキュラに対し、ララはキラキラと瞳を輝かせて立ち上がると、注意深く辺りを見回したまま、口に手をあて囁く。
ここはレヴェナントの支配する世界。警戒しなくとも敵に知られるはずないが、よほどクリティカルなアイデアなのだろう。
「あのさ…
何の影か分かるなら、最高神の影を探せば良いんじゃない?見つけた後で時を止めれば逃げられることもないし。」
「おお!その通りだ!どうだオキタ?追跡できるか?」
「無理だ。神族はランクの上下を問わず、影ができない…。『光ってる』せいだと思う。その点は、ひときわ輝いているときの君らも同じ。」
「そうなんだ…。いいアイデアだと思ったのに。」
即答による否定。明らかな落胆を表すララの肩へ、レヴェナントの無骨な手が伸びる。
しかしその手は、ララの肩を通り過ぎ、そのまま下へダランと垂れた。レヴェナントの巨体がララの小さな身体に、ふわりと覆いかぶさる。レヴェナントは巨体に見合わず羽のように軽い。
「ひゃぇ!?え?なに?ちょっと!なんなの?ふざけてんの!?」
「…まずい…限界だ…
ドラさん…、ゲートは開けておいた…。勝手に出てって…くれ……すま…な……」
「バカ者!力を使いすぎだ!」
「チカラってなに!これどうなってんの!?」
「まもなく時が動き出す。もはや説明している暇はない。目覚めたら本人に聞け。オキタの介抱を頼んだぞ!」
喋りながら薄っぺらな紙になったドラキュラは、先ほど飲み込んだ業火を吐き戻し、吹きつつ消えていった。吹きこぼれた小便のような業火が周囲の暗闇をチリチリと焦がした。
「っ!!?おもっ!」
ドラキュラが消えるのを待っていたのか、オキタの姿に戻った巨体が途端に重量を増した。ヴァンパイアとしては非力なララに耐えられるはずもなく、悪いと思いつつもオキタをずるりと下へ滑らせた。落ちた巨体は右手を挙げた格好で、うつ伏せにふわふわと足下を漂う。口元へ顔を近づけると僅かに吐息を感じる。
「息はしてる。気絶しただけ…?」
介抱しろと言われた手前、ただ傍らに突っ立っているわけもいかず、巨大な頭部の横に腰を下ろし、緑なのか青なのかハッキリしない色の髪を見る。風はないのになぜか揺れるさまは、見た目より柔らかそうである。
触れると汗ばんでややしっとりしていた。オキタの髪は身体のわりに細い。手櫛を入れて、毛は根元が青く、毛先に行くほど緑を経て黄色へと変化するのだと気づく。
「ぷぷ。芝生みたい。」
柔らかな髪に守られた、やたら大きな頭を持ち上げ、おもむろに腿の上に乗せる。厳密に言えば乗っていないのだが、この際よしとしよう。なぜそうしたのか理解できなかったが、介抱というドラキュラが残した言葉のせいだろうと、ララは納得の表情。すぐに脚が痺れるのは間違いないのに、支えるステーをリアライズする気になれず、まるでペットを愛でるように湿っぽいオキタの髪をひたすら撫でた。
いずれにしろ、小さな膝枕で巨人が寝る姿は客観的に見て滑稽である。
「あ、エネルギー切れか!」
理屈は不明だが、アバターはヴァンパイアに近い。
一部の例外を除き、ヴァンパイアの特殊能力は有限。使いすぎればエネルギー不足によりVが休眠し、変身が解ける。イージス戦でのケルラと同じだ。オキタの身に起こった事象をヴァンパイアの理に当てはめれば、まさにエネルギー切れの症状だった。
エネルギーとは、すなわち「血液」。
ララは右前腕の肉を千切り、オキタの口に押し込んだ。流れ出る血液量が少ない体質のため、一定以上の血を与えるには肉を食わせるしかない。しかし当のオキタは飲み込むどころか、1噛みもしないで吐き出してしまった。
元の場所に戻ろうしているのか、打ち上げられた魚のように躍動する肉片。ララは肉片をつまみ上げると、堅く目を瞑り、勢い任せに頬張った。
自分の肉を咀嚼する。決して良い気はしない。加えて何の味もしない。むしろ不味い。
生きる伸びるためとは言え、こんな不味い肉を何度も食べた仲間たちに心底傾倒する。あるいは自分自身でなければ、美味なのか。美味ならオキタが啜るくらいしても良さそうだから、おそらく誰が口にしても不味いのだろう。あれこれ考えているうちに、肉はだいぶ柔らかくなった。
これならば、口移しで咀嚼せずとも飲み込める…。
ーーーーー
オレは真っ白な空間で目覚めた。
浮いているようでいて、足の裏に感覚があるから「立っている」のだろう。この空間には何もない。ただ永遠に真っ白な空間。
誰かがオレを呼んだ。
遥か先に髪の長い女性。
行かなければ、そう思った瞬間、オレは「そこ」にいた。
「オキタちゃん。」
「リ…、リオ…ニ…ア…さん…?」
彼女は路地の先でマダラ模様の化け物に襲われ、四肢と頭だけを残して絶命した。
「大きくなったわね。」
五体満足の彼女がオレの頬に手をあてて言った。彼女の腕は幼い頃の記憶と変わらず、細く、しなやかで、そして温かい。瞳もまた、記憶のままに赤く輝いている。
「よかった…、無事だったんだ。
リオニアさん、オレ…。オレ…、あのとき…、路地で…、あなたを…」
「知ってるわ。看取ってくれてありがとう。
大いなる意思が私の願いを叶えてくれたおかげね。そして今回も。」
「看取って…?じゃあ、やっぱり…」
彼女は自分とオレの唇に人差し指を当て、オレの言葉を遮った。
「ここは死者と死にゆく者の世界。私は『あのとき』、最期を迎えた。
安心して。オキタちゃんはまだ生きてる。私が大いなる意思にお願いして呼んだの。」
「大いなる…、ただのシステムじゃないのか…」
PINOギャラクシーネットワークの中枢を担い、人類および各惑星の環境マネジメントを目的とした「全知全能」の自律型銀河統括システム。
オレたちは畏敬の念を込めて「大いなる意思」と呼ぶ。その絶対的な能力を持ってしても、資源の枯渇や人類の滅亡は回避できなかった。
噂によると大いなる意思は、数万年単位で人類と関わっているらしい。
「うふふ。そのうち分かるわ。
ねえ、オキタちゃん。アバターってなんだか分かる?」
「正直、今は分からない。
ずっとデータだと思ってたのに、笑ったり泣いたり、ふざけたり。
危険を顧みずオレを守ろうとさえした。まるで意思を持つ生き物のように…。」
「それでいいの。アバターはデータじゃない。生きてる。
オキタちゃんの新しいお友達いるでしょ。彼らの中にいる微生物をユニット化して、デヴァイスに無理やり制御させたのがアバター。適性がない人でも扱えるようにね。」
羽根のように2歩下がった彼女は、性能は25パーセントくらいだけど、と笑って付け加えた。
そして、彼女の言う「新しい友」とは地球人のことだろうか。あのとき以来会っていないのに、まるで近頃のできごとを知っているかのような口ぶりだ。
「…私は新しいアバターシステムの被験体だった。最後に取り込んだのはエクスゲノム・コードイプシロン815・タイプ『レヴェナント』…テスト結果は…」
彼女はうつむき、つま先で白い足元を撫でた。子供のころ、彼女が今と同じように水面を波立てて遊んでいたのを思い出す。
「暴走……」
「してないわよ。あれは儀式。」
頬を膨らませる彼女は、子供のころ見た姿と何も変わらず、瑞々しい。自分がもう、彼女の生涯を追い越してしまったのだと改めて気づかされる。
いや、おかしい。「あのとき」すでに彼女は30歳を過ぎていたはずだから、今のオレと大差ないはず。彼女の年齢不詳さ加減は、地球人たちに匹敵する。
曰く、彼女は「エクスゲノムアバターとの深層域同調を初めて達成したテスト成功例」らしいので、もしかすると、オレとは時の流れが異なるのかも知れない。
「私ね、エリミネートが近かったの。
テストを繰り返した影響でテロメラーゼコントロールが壊れてしまって…。」
彼女の言葉を合図に景色が見知らぬラボに変わった。
忙しないメカたちの向こう、シールドルームの中央で化物へと変容しつつあるのは紛れもなく彼女。
だが、オレの目の前にも彼女がいる。この臨場感はデヴァイスが見せる記憶映像と似て非なるもの。言うなれば「第三者」の記憶の再現。
「だから、大いなる意思に願った。」
完全な化物と化した彼女は、ニタリと笑みを見せ四つん這いになると、凄まじい速さで壁を駆け上がり姿を消した。シールドルームの明かりがブツリと切れた。真っ暗なシールドルームが静寂に包まれる。
少しの間をおいて赤い非常灯が暗闇をぼんやり照らた。しかし彼女の姿は完璧なシールドルームのどこにも見当たらない。脱走を知らせる警告が鳴り響く。
やがて景色は溶けるように元の白い空間へ戻った。
「ダイブ…したのか…?」
「うふふ。正解。私の願いはシンプルだったわ。
オキタちゃんに『レヴェナント』を引き継いでもらうこと。」
何もない白い空間の中、紅く光る彼女の瞳が印象的だった。
風など吹いていないのに、スカートがはためき、華奢な足首を露わにする。
「よく聞いて。『あのとき』オキタちゃんが見たのは、デヴァイスの制御下を離れたレヴェナントの素体。体外活動用のエネルギーを補充するため、私は自分の意思でレヴェナントに身体を食わせた。どうせ数日で消されてしまう命だったし。
私がいなくなれば、レヴェナントは新しい寄生先を探すから。」
彼女の細い指が再び頬に触れた。
オレが転んだとき、彼女はよくこうして「痛くないよ」と微笑みかけてくれた。
「探すも何も、あいつはリオニアさんを食ったあと、すぐ消えちまった!」
幼子のように扱われたのが恥ずかしいかったのだと思う。自分でも分からないまま、意味もなく声を張る。
「消えたのは、すぐそばに適性者がいたからよ。本来なら素体のまま彷徨ってた。
…オキタちゃんのアバター、バージョンコードはなんだっけ?」
拒絶、のつもりだったが、オレに向けられた彼女の眼差しも、頬に触れる指も、何一つ変わらなかった。
あのとき「すぐそば」にいたのはオレだけだ。彼女の言葉を要約すれば、彼女の言う適性者とはオレであり、彼女を食った化物は、何らかの方法でオレの中に入ったことになる。
そういえばあのとき、オレのデヴァイスは計らずも再起動中だった。
「K9…」
「何歳のときから一緒?」
「分からない…。だから、産まれる前だと思う」
「じゃあ、オキタちゃん以外にK9を使ってる人は?」
「知る限り…いない…」
「そうね。K9なんてバージョンコードないもの。元は私の中にいたテスト個体だから。」
「う、うそだっ!K9は間違いなく現行モデルにリストされてた!」
「大いなる意思がリストを書き換えた、とは考えないの?」
「そんな…」
「書き換えられた時点で『存在する』のが当たり前になってしまう。ギャラクシーネットワークって不思議よね。書いてあることを誰も疑わないんだから。」
ネットワークから提供される情報は全銀河共通の、正しい知識。オレの生きる時代の常識だ。
全知が共有化されたことで人類の知性は、デヴァイス処理能力次第。そんな世の中にも関わらず、オレの身体は高性能な最新デヴァイスと相性が悪い。適合するのは、いつも安定感が売りの「アンティーク」ばかり。はっきり言って、軍人としては致命的だった。
「オキタちゃん…、あなたに私の瞳はどう見える?」
「輝く赤…。」
「じゃあ、自分の瞳は?」
「…こげ茶か、黒。」
彼女はいったい何を伝えたいのか。オレには見当もつかない。
処理能力が速ければ、この意味不明な問答もすぐに解決できるだろう。過去の世界に来てから、日々処理能力に悩まされている。タニキァのヘルプがあってやっと一人前。ソロじゃ部下たちへの指示すら危うい。
「私にはオキタちゃんの瞳が宝石みたいに『赤く光って』見えるわ。
自分の瞳は茶色。うふふ。不思議ね。」
柔らかく微笑んだ彼女は、ごく自然な動作でオレの背中に手を回し、胸に左頬を当てた。手をつなぎ見上げていた彼女は、いつの間にか頭ひとつ小さい。
それよりも異性と密着しているはずなのに、いつだったかタニキァを抱き寄せたときとは違う、えも言われぬこの感覚は一体…。無理やり言葉にするならば「安らぎ」と表現すべきか。処理能力の悩みなど、とるに足りないこと、そう思わせてくれる。
時間にして数分、あるいはもっと短かったかも知れない。しばらくの間オレは、まつ毛越しに輝く、彼女の赤い瞳を見つめていた。
「K9の適性者は、広い銀河に私たち『2人』だけ…」
彼女がポツリと言った。
たったそれだけの言葉だったのに、理解しがたい常軌を逸する「イメージ」を生み、膨張し、頭の中で弾けた。
暗い。騒々しい。だけど暖かい。
男の声。女の叫び。
一筋の光。必死に光を目指す。
苦しい。苦しい。
早く。もっと早く。
世界に光が満みた。
眩しい。うるさい。だけど寒い。
ごつごつした手。頼もしい。
暖かい。嬉しい。
柔らかい手。優しい。
暖かい。嬉しい。
落ち着く音。いい匂い。
「本当に大きくなったね……」
彼女の声を聞くたび、鼓動を感じるたび、全身が、脳が、イメージを受け入れろと叫ぶ。
混乱の渦中、オレはひたすらに、答えをデヴァイスに求め続けた。けれどもデヴァイスが応答することは、ついになかった。
「さて、オキタちゃんはそろそろ戻らないとね。
耳をすまして。可愛らしい歌声が聴こえるわ。」
顔を上げた彼女が言った。遠くから美しい旋律の鈴の音が聴こえる。
旋律の出どころを探って振り返ると、青い女神が背後の空間を金色に照らしていた。
「あれは…ララさん…?」
「へぇ。ララちゃんていうの。
素敵な名前ね。いつか…、私にも紹介してね……」
背後に気を取られたのは一瞬だったのに、笑顔の彼女には手を伸ばしても届かない。
徐々に曖昧なる彼女の輪郭。愛おしい笑顔は、白い空間の奥へ霞んで消えた。
「待ってくれ!オレは…、あなたはオレの…………………」
2度目の目覚めは、祈る美しい少女の、澄んだ歌声から始まった。歌声に呼応しているのか、果てしない暗闇が穏やかに輝いて見える。
それが自分の視界が変わったからだと気づくのに、さほど時間は掛からなかった。
オレの視界のどこを探しても、デヴァイスはもうない。
つづく
ーーー
まとまらないまま、つづく!