「おあぁぁぁぁ!クソビッチ共がぁぁ!ぐおおおぉぉ!」
爆乳さんが前触れもなく苦しみ出した。
両手両足をバタつかせて、空気を掴もうと必死にもがく姿が演技なのだとしたら、歴代のオスカー女優が尻尾を巻いて逃げる。
だけど、やっぱり不思議ちゃんはキャラ作ってた!
「さっさと落ちろ、デカ乳!」
頭上で苦しむ爆乳さんに向かって、マリナさんがスコープ付きライフルを構えて言った。
タンッ…という乾いた音に続いて、爆乳さんの乳に隠れていたアナライザーがガラスのような音を立てて砕け散る。
本物の銃声はテレビや映画で見るよりもずっと軽い。
チーン…。
その直後、謎の音が私のすぐ側で鳴った。
「それまで!勝者、二階堂姉妹!」
霧島先輩が可愛いデコネイルを見せびらかすように宣言した。
今回が対ルサールカ戦の初勝利だという二階堂姉妹は、抱き合って泣いている。
一方、ニセ不思議ちゃんキャラであることを初日から私に露呈してしまった井伊さんは、不貞腐れながら部屋のど真ん中で血液を補給中。その姿は、日曜の昼間っから呑んだくれる「おっさん」だ。
ヴァンパイアにとって血液は万能薬に等しいのか、井伊さんの剥がれ落ちた皮膚や肉は、血液を補給し始めた途端に物凄いスピードで再生し始めている。
そういえば、私が神河さんにつけた刺し傷も「ちょっと水分補給」程度の血液補給で瞬く間に完治してしまった。
「最後の武器は初めてだな?」
「うしし、電子レンジだにゃ♪」
霧島先輩の質問に、レイナさんがラメラメの左目に横向きVサインをあてて答えた。
「電子レンジ?武器じゃないのか?」
先輩は部員達と話す時だけ上官口調になる。騎士団内の序列の関係だろう。
それなのに、なぜかタメ口で話しかけられても怒らない。
「んー、確かに武器じゃないけど、マリナがリアクターを作るのに成功したから、試してみただけ。」
「爆乳、温めますか…?」
レイナさんの言葉にマリナさんが言葉少なに相槌を打った。模擬戦中はマリナさんの方が叫んでいたのに意外だ。
「それで、あの音…!」
「あぁ、チーンてやつでしょ♪さくにゃんの後ろにリアクター置いといたからね。」
私が納得のいった顔をすると、レイナさんが嬉しそうに「うしし」と笑った。