ワンサイドゲームとなりました。

 ボコボコの中のボコボコ。
 初代プリンセス・オブ・ボコボコの決定です!



 もちろんボコボコにされたのは私。

 けっこう離れてたはずなんだけど、いきなり強烈なパンチを食らって、そっこうで首が取れそうになりました。冗談じゃなくて本気で取れかけました。それで完全にフリーズしてしまって、そのあとは防御していた翼をもぎ取られ、更に両腕をもぎ取られ…最後はゴォ!という風切り音がする得意の左ストレートを受けて、上半身に直径20センチほどの穴が空きました。最後のは左ストレート「パンチ」、じゃなくて「爪」。ぶっちゃけ反則。
 もぎ取られた部位や空いた穴は、いつも通り繊維状の血液で元通りです♪てへぺ……泣きたい。

 そして現在の私は、部屋の隅っこで体育座りしながら鬱っている。恥ずかしいので女神モードは解除した。


 思えば当然の結果だった。
 金毛種の私は、身体能力の向上がない上に、戦いの経験値もない。
 一方の神河さんは、黒毛種の身体能力向上に加えて、騎士団員。つまり、戦闘のプロ。
 しかし霧島先輩に言わせると、神河さんは油断のせいでギリギリの勝利だったらしい。その点は神河さん自身も自覚しているようで、しきりに「修行し直します」と敬礼しながら叫んでいた。

 何がギリギリだったかと言うと、最初の攻撃(首が取れそうになったパンチ)があと1000分の1秒遅れていたら、私のVマイクロムが作り出した無数の槍に全身を貫かれ、最悪の場合、神河さんは消滅していた可能性もあるそうだ。
 実際に一方的だったはずの神河さんの身体には、決して少なくない数の刺し傷ができていた。



「田中さんは問題外として、あのVの能力はかなりのものね。」

 霧島先輩が普通に羨ましい胸の谷間から「変な棒」を取り出して言った。
 確かにジャージのポケットに物入れとくとよく落とすけどさぁ。だからって「そこ」に物しまう!?てか、何気にいま、さくっと酷いこと言われた気がする。
 1人で鬱度を上昇させていたら急に視界端のピンク度が増した。視線を上げるとそこには張り切れそうなピンクが2つ。

 フワラテガール、とほざいt…自己紹介してくれた井伊さんだ。間近に見て、彼女が腕立て伏せではなく、乳立て伏せを1000回していたのだと確信した。
 井伊さんは「☆さくらちゃんのデータが送られてきたよ☆」とバカっぽく言い、それから、鬱っている私をヒョイと摘み上げて掌に乗せた。掌に乗せた!
 掌の上に体育座りなんて、普通に生きてたらチャンスすら訪れない超貴重な体験。だけど、掌の面積に自分の全体重が掛かるわけでして、座り心地は最悪です。

 

 お尻に掌が食い込んでめっちゃ痛い。

 痛いけど降りるタイミングが見つからない。