「か、片翼のブリュンヒルド…!女神の姿…!?」

 あの霧島先輩が一歩後ずさりした。撮影を忘れるほど驚いている。
 ベルセルク化した神河さんも心なしか動揺しているよう。

 自分では先輩達ほど変わった気はしないけど、そんなに変わったのだろうか?

 入口のドアガラスをチラッと見やる。



『あなたは誰ですかー!?』

 白金の鎧を着た金髪女神がドアガラスに映っていた。
 前にも見たゴージャスな金髪が、映っているのは「私」だと教えてくれた。
 着ている鎧はキラキラしてて綺麗だけど、露出が高すぎて何の目的で装備しているのか意味不明だ。
 それよりも気になるのは、背中から生える翼っぽいのが片方しかないこと。右側の翼がない。

 ガラスに近づいて顔を確認してみる。



『え!?なに!?チョー美人なんだけど!なにこれ!?私!?』

 確かめるように自分の顔をベタベタと何度も触る。私が触れるとガラスに映る女神も同じに触った。


 私……とんでもない美人に変身してしまいました!

 身長だって高くなって…なかった。ブーツがヒールタイプなだけだわ。
 でもスタイルはめっちゃ良くなってます。チョーくびれ!そしてついに巨乳の仲間入り…してなかった。鎧なのに寄せて上げてる。良く見たら腰のフリルのお陰でそう見えるだけで、そこまでくびれてなかった。

 あれ?なんか表情が硬いような?というよりも無表情…?


 思い切って変顔をしてみた。
 澄ました女神顔のままだった。
 ほっぺたを抓っても、澄ました女神顔。
 ケツアゴにしてみても、澄ました女神顔。
 鼻の穴に指を入れて…。


「いつまで遊んでいるのですか!さっさと模擬戦を始めてください!」

 寸前のところで霧島先輩に怒られた。女神の鼻の穴に指を入れる事件は、未遂に終わった。


 気を取り直して神河さんと向き合う。
 さすがミステリアスビューティー、なのは関係ないけど、先ほどまで見られた動揺が消えている。
 だけど、今の私なら勝てちゃう気がする♪

 露出高めだけど女神だし、何よりもベルセルク化した神河さんに対して全く恐怖を感じない。

 この舞台の主役は私だ。