昼休みに呼び出しをくらいました。
呼び出してきたお相手は、今まで一度も接点どころかカスリもしたことがない、苗字しか知らない格付け上位の女子、霧島先輩。
やっちまいました。これは完全に目を付けられた流れです。
私の平和な高校生活は終わりました!皆さん、ありがとうございました。
「あなたが中田さん?」
先輩は、私の隣りにいる琴美に対して言った。
「…あのー、田中で良いなら、私ですけど…?」
私は控えめに手を挙げた。
本当は「くそ間違ってんじゃん!バーカバーカ!」と言ってやりたかったが、ブチ切れられそうなので止めておいた。
先輩が小さく「えぇぇ!?」と言ったのはたぶん気のせいだろう。
「霧島先輩、さくらに何の用ですか?」
こういう時の琴美は強い。ちなみに、琴美は昨日の一件を夢だと思っている。
「昨日さー、家でた瞬間に頭ぶつけてチョー痛かったんだけどー。夕方まで気絶してたっぽい。まじウケるよねー。夢の中で、さくらがネタ画像の金髪だったし、ウケるー。」と、登校時に笑いながら話してくれた。
琴美が夢だと思い込んでるのは、ペラ男が裏で何か細工したんじゃないかと、私は睨んでいる。
「あなたが中t…田中さんではないなら、関係ないことよ。私は1人で来るよう伝えたはずです。関係のないあなたは今すぐ立ち去りなさい。安心なさい、彼女に手荒なことはしないわ。」
そのまま琴美と先輩のプリティキャットデスマッチが始まりそうな雰囲気になってしまったので、私は1人で大丈夫だから、と琴美を強制退場させた。
先輩の「世界の中心は私」的な感じ、正直苦手です。
「改めて、あなたが中t…田中さんね。呼ばれた理由はお分かり?」
「いいえ。」
金髪だった昨日ならまだしも、今日はいつもの根暗眼鏡スタイルなので、本気で思い当たる節がない。
「ヤノーシュ大佐に頼まれた、と言えば分かるかしら?」
「ヤノーシュ?大佐?…あ!ペ、ペラ男!?てか、そっちですか?」
口から漏れたペラ男という単語に、先輩はほんの一瞬だけ眉をひそめた。
改めて見ると、霧島先輩はとんでもなく美人だ。ストレートロングの黒髪が似合う正統派の美人。居るだけでその場の中心になってしまう圧倒的な存在感。マーベラス。しかも、けっこう立派な胸をしている…。
私が男子なら、琴美と先輩のどちらに惹かれるだろう。太陽の光が差し込んだせいか先輩が神々しく、輝いて見える。
そんなちょっとポエちっくなことをボケっと考えてたら、先輩に身体を貫かれた!
『本当に輝いてたんかぃ!手荒なことしないって言ってたじゃん!』
あ、貫かれてなかった。
爪の先数ミリが身体に食い込んでいるだけで、Vが先輩の手にしっかりと巻きついて食い止めている。
宿主を守る為の自発的なオンセット。ペラ男の言っていた現象がこれか。いくら意識外だとはいえ、髪の毛一部だけ金髪になって伸びるのはデザイン的にどうかと思う。
「完全にスキを突いたと思ったのにさすがは金毛種ね。これでも私は部隊内で最速なのよ。あの、申し訳ないけど、そろそろ放してくださる?」
「え?あ、はい。すみません。」
私は意識を集中して普通の髪の毛をイメージをした。
まだ先輩を警戒しているのか、Vマイクロムは焦れったいくらいゆっくりとその姿を薄めていく。自由を得た先輩は再び輝くと、瞬き半分の間に元の場所に戻っていた。まさに瞬間移動。よくあの速度に反応したものだ、と我ながら感心してしまう。
昨日、ペラ男に反応できなかったってことは、移動速度はペラ男>先輩ってことなのかな?
「試すようなことをしてごめんなさい。私は王国東方騎士団第2特務部隊所属、霧島リカ少尉です。中央騎士団のヤノーシュ大佐の命により私以下5名、本日よりあなたの教育と護衛を任されました。」
軍人の敬礼とはこんなにも美しい物なのか。輝く先輩の敬礼を見て、心からそう思った。
そんなことより、ペラ男って大佐だったんかい!ケツアゴのくせに!