公民館の文化祭は無事終わり、地域の方々がたくさん来られて盛況のうちに二日間が終わって、私たちのお花も好評で「新たに習いたいという人もいたのよ」と先生は嬉しそうにおっしゃった

 

 

長女家族も来てくれて、その日はみんなでにぎやかに晩御飯を食べ、私は心地よい疲れを感じて早めに床についた

 

 

その後は急ぎの校正の仕事をすませ、長女の出産の際に夫を預かってもらうショートステイ先との契約をし、父を預かってもらう施設の見学を妹としたり、長らく休んでいた夫の作業所にも挨拶に行き、また4月から再開することをお願いしたりと、そんなこんなであっという間に1週間は過ぎていった

 

 

今日は父に明日の外出のことと、退院後の施設の話をちょっとしてパンフレットも見せて「○○のお産もあるし、申し訳ないけどしばらくここにお世話になってね・・・4月の終わりか5月には空きがでそうなんよ・・・うちからも近いし環境もとってもいいからお父さん気に入ると思うわ・・・」

 

 

そう言うと父は「そこは個室?」と尋ねたので「そうよ!南向きでまだできて6年ぐらいのところだから新しくて気持ちいいよ」と答えるとまんざらでもないなという顔で「テレビもある?」と聞くので「うん・・・家のあの大きなテレビを持って行くわ」と答えた

 

 

「僕はどこも悪くないのにな・・・お手伝いさん雇って家に帰れへんのか?」

 

 

「それは無理だよ・・・お父さん認知症のテスト30点満点の19点だから、もうひとりでは暮らせないわ」

 

 

母が生きていてくれたら多少の認知症が進んでも、住み慣れたあの家で父は最後の日々を送れただろうけど、現実は父の希望どおりにはならず、私たちの住む町に父を移住させるしか方法がない

 

 

「明日は何時にくる?僕のズボン持ってきてな・・・おいしいもの食べような!ここは門番がいるから勝手に脱走もできひん・・・早く退院したいわ」

 

 

「そうだね・・・お父さんよく頑張ってるよ」

 

 

「今日から野球が始まるやろ?」

 

 

「そうだね・・・巨人と中日の開幕戦があるよ」

 

 

「何チャンネル?」

 

 

「6時から4チャンネル・・・書いとこうか?」

 

 

「大丈夫・・・6時やな」

 

 

 

来週には施設の方が病院に来てくださって面接がある

 

 

そして4月には実家の家の簡単な工事もお願いしていて、わが家の屋根の工事も始まり、夫の作業所通いも再開して、私はどうやって日々をやりくりしようかと考えている

 

 

病院のケースワーカーのイケメンのM氏は他にも4つほど施設を紹介してくださるそうで、父はいい時代に高齢者になったものだとつくづく感謝だ

 

 

「ナンダカンダ無敵」「もってます、もってます」・・・父の年金の額を聞いたらみんな驚くけど、それは高度成長期に頑張った企業戦士であった父の唯一の誇りでもある

 

 

贅沢はせず、「分相応」と「質実剛健」が父のモットーで、目が飛び出るような退職金も娘や孫たちのために使い、気が付いたらそこそこに減って父は自分の代できれいに使い切って亡くなっていくのだろう

 

 

若いときはいろいろと確執もあった父と娘だったけれど、ここにきて今は父が幸せと思える時間がたくさん持てるように、私はできるだけのことをしてあげたいと思っている

 

 

そしてたまに実家に父を連れ帰って、母の思い出話などをしながらまたふたりでワインでもあけましょうかね・・・

 

 

  文化祭に出した「ダイアゴナル(斜めの形)」

  今週の作品(ツーポイントスタイル)