3月のある日、
電話をかけてきた友人A子。
「最後の抗がん剤が効かなくなっちゃた。
今の元気を維持出来るのは2ヶ月くらい、
平均的な余命は4ヶ月だって。」
(えっ!4月?5月?いつまで?🥲)
激しく動揺する心を必死に抑えながら、
♨️温泉、行こう手配するよ。
言葉が口をついて出ました。
我が家のお気に入りの温泉宿。
A子にもいつか一緒に行こうねと
以前から話してはいたのに、
未だ実現していませんでした。
急がないと
そのいつかは来ないかもしれない。
今、行かなくては
今回の旅行は、
そうして急遽、計画・実行した旅でした。
「死ぬのは確実なんだけど、
今こんなに元気で食欲もあるし、
なんだか死ぬ気がしないんだよねー。
いつ頃から弱ってくるんだろ。」
「孫たちの成長を見られないのが残念。」
「親より先に死ぬのが申し訳なくて。
余命の事、いつ言おうかな。」
「元気に動けて食べられるうちに、
もっもたくさん遊んでおかないとねー」
世間話でもするように、飄々と話すA子。
そして温泉宿での夕食時。
酢味噌の和え物を食べながら
「私、大好きなんだよねー酢味噌💕」
と言うA子。
「え❓初耳ーーそうなの⁉️
じゃあ梅の時期が来たら
梅酢味噌を作ってあげるよ。」
と言ったら、
「生きてたらね」と、おどけて笑うA子。
「生きてるよ」と私。
A子は泣きません。
弱音も吐かず、泣き言も言いません。
2年前の5月。
ステージ2の膵臓癌と診断された時も、
抗がん剤治療後、
10月に手術が決まった時も。
そして、
退院わずか1ヶ月後に腹膜播種になり、
抗がん剤治療をしなかったら4ヶ月、
治療をしても1年、と余命宣告された時でさえ
涙は見せなかったそうです。
「再発する可能性が高いとは聞いていたから
覚悟はしてたよ。
でもたった1ヶ月で腹膜播種だなんて....
流石にあの時は少し凹んだわ。」
「だけどこうなってしまったら
もう、しょうがないじゃない❓
泣いたって落ち込んだって治らないし。
クヨクヨしてたら逆に免疫力下がるんだよ。」
そう言っていつも明るくポジティブなA子。
強い....というより、
どんと肝が据わった清々しさ、
とでもいうのでしょうか。
まるで人生を達観しているようなA子。
清々しいほどに覚悟を決めているA子に
私がかける言葉はありません。
多分、慰めも励ましも要らないはず。
そんなわけで、
思いっきり楽しい旅行にしよう❗️と
計画した一泊二日の旅は
お喋りして、笑って、食べて〜
♨️温泉に浸かって、
お喋りして、笑って、食べて〜
本当に楽しい時間でした。
行って良かった本当に。
A子はこの4月から
緩和ケアの専門病院に転院しました。
可能な限り通院、
そして、訪問看護も取り入れながら
痛みに対するケアをしていくそうです。
そして昨日。
A子は無類のパン好き❤️
ウールロールパンが食べたいと言うので、
2種類用意しました。
次に
先日作ったマーマレードとクリームチーズ。
「やっぱり焼きたては美味しいね」
「クリームチーズが合うーー」
喜んで食べてくれて、ほっこり
私にはこんな事しかできません。
「次は何が食べたい」
「うーん....考えとく。また来るねー」
約4時間あまり、喋りに喋って
A子はバタバタと帰っていきました
元気な彼女を見ていると
余命が云々..など信じられない気持ちです。
また来るねーと帰っていくけれど
いつまで来れるのかな...
見送ったあとは涙がこぼれます
私が彼女のために願うことはただ一つ。
痛くなりませんように。
痛みを感じる時間が
少しでも短くすみますように。
それだけです。
長々と読んでいただき、
ありがとうございました。