「春夏秋冬そして春」 (韓国、2003年) | 無節操ニンゲンのきまま生活

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春夏秋冬そして春 -無修正版- 【韓流Hit ! 】 [DVD]/キム・ギドク,オ・ヨンス,キム・ジョンホ
¥2,940
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韓国の鬼才キム・ギドク監督6作目の鑑賞です。



監督 キム・ギドク

脚本 キム・ギドク

出演 オ・ヨンス、キム・ジョンホ、ソ・ジェギョン

102分



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


俗世間から離れた湖上の寺で老僧と少年は今年も春を迎えた。

しかし祈りにきた娘が寺に寝泊まりすることになり

少年の穏やかな心に波風が立ち始める・・・・というお話。


☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*



この映画では水も風も呼吸する。
静かに。ただ静かに。


山あいで俗世間から切り離されて暮らす老僧と少年僧。
悟りを開いた者と、悟りをいまだ開けない者。
老僧の心の凪と少年の将来の明るさが
芽吹くとして描かれている。


その後、欲望のままに未知の世界へ両手を広げて駆け出していく
欲望を求めたが故に心には木枯らしが吹き荒れ
絶望の淵に立たされる


悟りを開けない者は、
己の欲望と葛藤し、己の欲望に絶望し、苦しみぬいてそれでも人生は続いていく。
人の気持ちの移ろいを呪い、自分の気持ちの移ろいに耐えられず
それでも季節は巡っていく。


苦しむ先に求めたのは
日常の喧騒から逃れてたどり着く静寂。
己を赦してくれる存在がほしかったのだろうか。
ひたすら変わらない中に身を置きたかったのだろうか。


こうして無なる真っ白なを迎え。
そして春。
人には必ず暖かな日差しが訪れる。
荒れ果てた心の荒れ野にも必ず緑が芽吹く。



もっとも印象的なのは般若心経を一心不乱に彫る男のシーン。
悲しみと苦しみに包まれた彼の目が人間の業をまざまざと見せつける。
この苦しみが、その後の冬の厳しさがあればこそ
の春の訪れは一段と暖かい。


人生は四季の繰り返し。
希望と絶望が幾重にも折り重なって、春夏秋冬自分の人生をつむいでいく。
自然はただ淡々と四季を重ねていくだけなのに
人間だけが道化師のように欲望に翻弄されていく。


最後にタイトルに添えられた「そして春」。
ここにこそ、キム・ギドクの人間愛がたっぷりと込められているのではないだろうか。