「コースト・ガード」 (韓国、2001年) | 無節操ニンゲンのきまま生活

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見てる途中でようやく気づきましたが、これ、チャン・ドンゴン主演です。

でも韓流ファンが喜ぶシロモノではございません・・。

監督はキム・ギドク

出演はチャン・ドンゴン、キム・ジョンハク、パク・チア



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北朝鮮との国境に近い海岸線。

ここでは韓国軍が24時間体制で不審者の侵入を防ごうと監視体制を敷いていた。

カン上等兵(チャン・ドンゴン)は誰よりも熱心に演習をこなす軍人だったが、

ある夜軽い気持ちで進入禁止区域に入ってきた近所のカップルに向けて

不審者とみなして発砲し、男は女の目の前で死んでしまう。

カンは軍の規律に従って不審者に発砲したと軍隊では表彰を受けたが、

民間人を殺してしまった自責の念にかられていく・・・・・というお話。


☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*



民間人を誤って殺し、自責の念にかられて狂っていく兵士の男。

恋人を目の前で惨たらしく殺され、狂っていく女。

狂っていく妹を見て、憎しみを募らせていく兄。

女に亡くなった恋人を求めて誘われ、優しくするふりをして蹂躙する兵士たち。


キム・ギドクはどこまで毒を描けば気が済むのだろう。

とにかく映画がまるごと地獄絵図へ向かっていくような、巨大なうねりをもった作品だった。


この作品には救いのある人間が誰も出てこない。

あるのは狂気と怒りと憎しみと。負の感情だけがトグロを巻いている。


だれもが普段どおりに生きて、そこにちょっとずるさや悪意を持っていただけなのに。

悲劇が次の悲劇を生み、狂気がさらなる狂気を生む。



じゃあ何が悲劇の原因なのか。

その答えを、ギドクはこの作品をもって「軍隊」と答えているのだろう。


同じ年に制作された「受取人不明」「コースト・ガード」。

2つとも韓国軍とその軍隊が駐留する村の村民との悲劇を描いている。

どちらの作品とも、救う者も救われる者も現れない。

武器を手にしたとたん、人間は人間たることを忘れ

まともな感情を持ったものは狂っていく。



登場人物たちが救われるにはどうしたらいいのか。

それはもう軍隊の排除、つまりは戦争のない世界しかないのだ。


戦争世界を、争いあう世界を、とことん毒をあぶりだして描くことで

その向こうにおぼろげながらみえる争いのない世界に希望を託す。

それが、ギドクの、愛。




・・・・・まっすぐじゃないねえ。