「悪い男」 (韓国、2001年) | 無節操ニンゲンのきまま生活

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キム・ギドク監督の作品はこれで3作品目です。

あらすじではこの作品が一番見たかったのです。

監督はキム・ギドク、出演はチョ・ジェヒョン、ソ・ウォン、チェ・ドンムン



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


ヤクザのハンギ(チョ・ジェヒョン)は街で見かけた女子大生ソナ(ソ・ウォン)に一目ぼれ。

しかし公衆の面前で冷たくあしらわれたハンギは

ソナを策略にはめ、無理やり娼婦にさせてしまう。

最初は自分の身におきたことを受け入れられずにいたが、

後にハンギの罠にはまったことを知り、彼を憎むようになる・・・というお話。


☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*



自分の唇を奪い、自分の恋人を奪い、
自分の自由を奪い、自分の日常を奪い、自分の尊厳も奪う。

何もかも奪われた女と、何もかも奪った男の物語。


男は女だけでなく、自分をも傷つけずにはいられなかったのだろうか。
愛する女が他の男に抱かれるところを
刃物で切られたような顔で見つめる。
自分が地獄にまで貶めた愛する女をただ見つめるだけ。

女を地獄に落とした男は、
当然自分だって地獄からは抜けられないのだ。

いや、むしろ女とともに地獄の底に沈みたかったのかもしれない。
誰も来れないような深みにまで。

そして女に憎まれることで
自分は女の心に残ることができるのだ。


女にとっては、すべてを奪われ
唯一残っているものは自分からすべてを奪った男。
この愛を道しるべに生きていくしかなかったのかもしれない。

そのことに気づいたとき、
写真の失われた顔がよみがえる。


男の愛は本物かもしれないが、
やはり男には他の愛し方はできない。
ラストまで変わらない男はやはり「悪い男」だ。

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見た直後はやりきれなさに心がすっきりしない。
でも日が経つごとに女の哀しさと男の痛々しさがじんわり効いてきます。
効いてきたころには
すっかりギドクの毒と愛に染められてしまっていました。

酒に寄って女に近づいたハンギ、
女の前で倒れたハンギ、
海岸で女と並んだハンギの顔が忘れられません。
私はギドクにやられてしまったというより
役者チョ・ジェヒョンの目にやられてしまったのかもしれないなー