「うつせみ」 (韓国、2004年) | 無節操ニンゲンのきまま生活

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うつせみ
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前から気になっていた韓国の鬼才、キム・ギドク監督デビューしました

そういえば、先週オダギリジョーが彼の作品に出演することで話題になっていましたね。

すごく楽しみですよ~。

さてさてこの「うつせみ」ですが、

監督はキム・ギドク監督、出演はイ・スンヨン、ジェヒ



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


若者テソク(ジェヒ)は留守宅に侵入し、

住人が戻るまでの間そこで暮らすとい奇妙な犯罪の常習犯。

ある日豪邸に忍び込み、留守宅だと思ってそこでの生活を楽しんでいたが、

夫から暴力を受けておびえていた主婦ソナ(イ・スンヨン)が物陰から見つめていた・・・というお話。


☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*



なんと形容したらいいのかわからない物語。

でもすごく印象に残る映画で、ずっと目が釘付けだった。


家を持たない若者テソク。

彼はすごく身軽に気軽に留守宅に忍び込み、そこでの生活を楽しむ。


でも、家の一部を必ず写真に撮り、その際必ず自分も一緒に写りこむのはなぜだろうか。

そう考えると、もしかしたら彼の微笑は、

そこの家族の幸せな姿を想像してのものなのか。

その幸せをたくさん見たいがためだけに家に忍び込むのだろうか。


画面に映っているのは単に男が他人の家を楽しむ姿なのに、

ふと垣間見える彼の抱える「孤独」に胸がしめつけられる。



その孤独に引き寄せられた、孤独な主婦ソナ。

二人はいつしか寄り添うように、今日も他人の家に忍び込む。

自分がモデルだったときのポスターをある他人の家で見つけ

バラバラにしてモザイク模様のように作りなおすソナの姿も痛々しい。


ここまでの会話は一切なし。

でも画面からはほのかに温かい空気がこちらまで漂ってくる。

二人は言葉を交わさなくても、傷を舐め合い、慈しみ合いながら

同じものを食べ、同じ空間で時を過ごして寄生生活を繰り返す。



後半は思いもよらなかった展開に。

いやー、かなり好きですこの映画。

なんですか、あの後半のキスシーンは。

私のラブシーン10傑に入るであろう素敵過ぎるシーンと

ここに来て初めて見せた彼女の満ち足りた微笑が

観た後もいつまでも余韻として残ります。



ちなみにタイトルの「うつせみ」とは、この世に現に生きている人のこと。

なかなか素敵な邦題をつけたものです。