『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』(齋藤ジン著/文春新書)を読了しました。

著者は米国で投資コンサルタントとして活躍し、世界トップクラスの投資家「ジョージ・ソロス」を儲けさせたという伝説的なコンサルタントです。
日本の経済は長期的に低迷状態が続いていますが、世界の経済のフォーマットであり続けた「新自由主義」の時代が終わり、日本が復活するチャンスの時期が到来した、というテーマとのことで興味を持ちました。
内容についてですが、まずは新自由主義に至るまでの世界の流れについて記されています。
これまで、世界では2度の大転換が発生。“自由放任主義”から、1930年代の“大きな政府”(政府がさまざまな場面で国民の活動に介入する)の時代へ。
冷戦が終結し、経済活動が重視されるようになった1990年代からはマーケットが大きな影響力を持ち、政府の介入を抑えた“小さな政府”をベースとした個人の能力を重視する新自由主義へ。
そして、その考えがグローバルな規模で拡がっていった経緯が説明されています。
また、世界の覇権を握るアメリカは、その国のGDPが自国の50%に迫った時点で、パートナーであっても「敵国」とみなして態度を一変させる傾向があるそうです。
世界観や統治観を変えるタイミングとなった1990年代に、それまで勢い良く成長して米国を脅かす存在となった日本はさまざまな手法で徹底的に潰されます。それが現在に至る、失われた30年へとつながったのです。
一方で、日本に代わって有力な投資先となり、新自由主義の申し子的な存在となったのが中国です。しかし、その成長スピードは急速で、日本と同じ条件で今度はアメリカから“敵国認定”されている状況にあるとしています。
そして現在。新自由主義の時代が終焉を迎え、デフレへの脱却が重視されるようになり、経済の時代から政治・地政学・安全保障を重視する時代へと移行する時期に突入。
ロシア・ウクライナ戦争でNATOが復権したように、アジア対策で中国に対抗するため、強い日本がアメリカから待望されていること。経済的にも日米関係が緊密となって投資も増え、再び「勝てる席」へ座らされることになるだろう…ということです。
面白いと思ったのは、日本が失われた30年になった要因として、バブル世代の“ゾンビ社員”や“働かないおじさん”の雇用を守ったから…という記述です。
その人たちが軒並み退職してどの業界も急激に人手不足となっているほか、他国と違って痛みを伴う経済的な改革にも着手しなかったために社会の分断が起こらず、今後も構造改革が進むだろうということ。
そのうえで、今後は中小企業やサービス業でAIを利用した効率化や賃上げが進んでいくだろう、としています。
アメリカが依然として世界の覇権にあり、あらゆるゲームのオーナーである状況は変わらないものの、新しい世界に向かう上で日本は相対的に勝者になるだろう…ということが記されています。
この書は1年前に出版されました。その間、イランをめぐる戦闘の勃発により時代は再び不透明感や混迷の度を深めています。著者の言うような明るい未来に日本が果たして歩を進められるのか…。大きな不安と希望が入り混じった時代を、日本は進もうとしています。
