尾崎南「ダリア」時代考察 | 泉選手を熱烈応援

尾崎南「ダリア」時代考察

※このブログは「高校で世界史を習いました」程度の知識の人間が、一般人向けの歴史書・参考書を読みながら、自分の考えを書いているものです。
専門家ではありませんので、歴史の認識や解釈に間違っている点や偏っている点があるかもしれません。



前回のブログで

「(泉ちゃんの前世の)せめて時代か国名だけでもわかれば参考になるのに」と書きましたが

ヤングキングのサイトをよく見たら書いてありました。

第一話の「作品説明」が、すっげぇネタバレだった。


作品説明

久保田泉…湘南育ちの19歳。山下 礼二…27歳のカメラマン。交差する事のない二人が運命的に出会い一瞬で恋に落ちた…湘南とドイツを舞台に、現世と前世の恋が交錯する。相川七瀬と「絶愛」の尾崎南の強力タッグで贈るスピリチュアル・ラブストーリー。 

(C)相川七瀬・尾崎南・工藤菊香/少年画報社

  「ソク読み」サイトより引用・2015/10/11現在
   
http://sokuyomi.jp/product/dariauxebu_001/CO/1






・・・前世で果たせなかった恋なのかな?ヨーロッパの昔なのかな?というドキドキ感台無しorz


ドイツのお話ですよ~とか、これは二人の前世のお話ですよ~とか、そういうことは漫画の中で語られてほしかったです(´・ω・`)





私は歴史の専門家ではありませんが、作品説明の「ドイツを舞台に」というひとことが、かなりのネタバレであることはわかります。


というのも




現在「ドイツ」と呼ばれている国がある地域は

歴史上、何度も支配者が変わり、国境や文化も大きく変化していますが

中世にあのあたりを支配していたフランク王国やローマ帝国のことを「ドイツ」とはまず言いません。
ナポレオン戦争終結後、1871年にプロイセンを中心に成立したドイツ帝国あたりからが「ドイツ」と呼べる時代ではないでしょうか?


かつ


登場人物がドレスを着ていることから、第二次世界大戦後のお話とは考えにくいです。



つまり

1700年代の中ごろから、1900年代前半あたりまでに年代が絞られました。


・・・うーん、「ベルばら」とか「女帝エカテリーナ」とかと時代がかぶるぞ。

これは漫画家がうかつに手を出しちゃいけない時代・・・池田理代子先生と比較されるから。
1700年代なんて一番だめだぞ?女帝エカテリーナ、ドイツの中流貴族出身だからね?完全かぶりだよ?
1いや、よく考えたらマリー・アントワネット様はオーストリア出身だ、ドイツ文化圏だ。ますますダメだ。

とにかくこの辺の時代はぜったい手を出しちゃだめだ。






・・・ってことを、尾崎先生は全然気にしないんだろうなぁ・・・







泉ちゃんの前世姫の着ているものは、少なくとも2着確認できます。


花園で肖像画を描いているシーンで着ている、パフスリーブのドレスと
逃げているシーンや、鏡の中に現れた時に着ているレースのドレス。








レースのドレスは、ベッドの上で体育座りしている時に着てるので、ネグリジェなのかもしれません。
柔らかそうな素材だし、裸足だし。



花園のドレスは、手袋もしているし、絵を描いているので、一応ちゃんとした外出着のはずです。
こっちをメインに検証します。








この時代にはまだコンシールファスナーが発明されていませんので、上流階級の人はドレスを着るときに、いちいちローブの部分と前見頃の部分(ピエス・デストマ)を、着付け係の人がチクチクまつり縫いする必要があります。
「ベルばら」みたいなドレスは、一人では着ることもできないんです。
コルセットも、お付きの人が後ろからギューッと締めないとつけられません。


ですが


一般人がいちいち、お付きの人に衣類の着脱をお手伝いしてもらうのは不可能ですので

中世くらいには、現在のように体の前にあきがあって、ボタンでとめられるジャケット形式の衣類が、一般人~中流くらいの衣類には用いられていたそうです。
ボタンの発明って偉大ですね!それまではいちいちピンで止めたり縫い付けたりしていたそうです。


ここで泉ちゃんの前世姫の「花園のドレス」を見てみます。


前見頃の真ん中にボタンがついていて、ここで開くようになっています。
現在のブラウスとかジャケットとかと同じ構造ですね。
で、その下にふんわりしたスカートをはいていますが、バッスルスタイルやクリノリンスタイルではないので、1800年代後半ではなさそうな・・・


泉ちゃんの前世、1700年代後半~1800年代はじめ、領主クラス~中流貴族に確定。

そう言われてみると、「レースのドレス」の方も、1795年頃~1800年くらいに流行ったシュミーズ・ドレスに見えなくもない。


身分については、継母にいじめられているような描写があるので、もっと位は高いのに、召使をつけてもらえずに、自分一人で着られる服を着ているだけなのかもしれません。

今後も要検証。


なお、この時代は髪結い専門の職人が生まれるくらい、髪型は盛ったり造形したりする時代です。
マリーアントワネット様のように、髪を大海原に見立てて頭上に船を乗っけたりするのは、相当身分が高い人だけだと思いますが
それでも、ちゃんとした貴婦人は、最低限髪はアップにして巻いていないとおかしい時代です。
使用人や小さな子供など、凝った髪型にするのが難しい場合、ボンネットのような帽子で頭全体を覆っています。

髪をストレートのまま下ろしているのは、現在でいうところの下着で外出するのと同じくらい恥ずかしいことです。



貴婦人の髪型は、一番簡単なものでも自分でセットするのは無理です。
泉ちゃんが継母のいじめで召使をつけてもらえず、しかし身分が高すぎて庶民がするような簡単なアップヘアーの結い方もわからず、恥を忍んでおろしていた、という可能性ありです。

うん、セーラームンよりはシンデレラに近い世界観だな。





どっちにしても


調度品などから、一般庶民や使用人ではないとは思いますが
身分に合わないドレス・髪型をさせられていたのは想像に難くありません。


身分に合わない身なりでは、肖像画は描けません。


つまり



家族の誰かの肖像画を描きにきた肖像画家のレイジが、簡素な服に簡素な髪型をした泉ちゃんに恋をして、花園でこっそり彼女の絵を描いていた。
それが泉ちゃんいとってもレイジにとっても幸せな時間だった、ってことか!




なるほど、それで花園で絵を描いていたんだ。


この時代、「花園」は秘密の逢引をする場所であり、花園を覗いたりそこで起こった事をとやかく言うのは無粋、という文化があったとか。




ここまで検証して、ようやく話がつながりました。


簡素な身なりをしているのに、身分は高いだろう泉ちゃんは、一般人である像画家レイジとは結婚できなかったんだろうなぁ。

上流階級の女性にとっては屈辱的な格好をさせておきながら、一般人に身を落としてレイジと結婚することもできないのは悲恋ですね。




身分の差や、服装や髪型で屈辱的な思いをしなくてすむこの21世紀に、泉ちゃんとレイジが幸せになれるといいですね。