※この物語は、生まれながらに不安障害を持った男が、2018年頃から現在に至るまでに辿った『実話』である。

 

 

 なおプライバシーの関係上、全ての人物は偽名とする。

 


〈前回のお話〉




 

 

《第99話  思い返せばデート初日》

 

 

 

「そーいや和泉ン(いずみん)って何してんの?」

 

「仕事のこと?」

 

「うん」

 

「Cホテルで働いてるけど」

 

「え? Cホテル? 聞いたことある! 給料良かったりする?」

 

 これはどう答えれば良いだろう……。

 

 バイトなんだよ、なんて言うの恥ずかしいし……。

 

 うーん、そうだ。

 

「あー、俺はCホテル直属で働いてるんじゃなくて、Cホテルに雇ってもらってる会社に居るからそんなに……」

 

「へー、そうなんだ。スーツ着て『お客様』とか言ったりするの?」

 

「あ、いや、俺は備品の発注だったり、裏方の仕事だからそういうことはしないって」

 

「へー。まあ和泉ンらしいっちゃらしいか」

 

「どーせ俺は裏方顔だよ」

 

「なにそれ、面白―い」

 

 ミナミはケタケタ笑ってくれた。

 

 その後、俺たちは手相のことだったり、星座占いのことだったり、学校で好きな給食の話だったりと、長々と話していた。

 

 初めて出会ったときは、嫌な奴という印象しかなかったけど……。

 

 こうして話すと、ミナミは普通の女の子だった。

 

 毒づき方も、一定のラインは越えず、イジリの程度で済ませるし……。

 

 出会い系サイトでお金を貰っていたり、働きたくないとか言ったりと、ちょっと問題はあるけど……。

 

 嬉しいときは素直に喜んでくれるし、楽しいときは笑ってくれる。

 

 ……うん、本当に普通の女の子って感じ。

 

 根は悪い子じゃないかもしれない。

 

 そう思い始めていた。

 

 

             【第100話に続く】