※この物語は、生まれながらに不安障害を持った男が、2018年頃から現在に至るまでに辿った『実話』である。

 

 

 

 なおプライバシーの関係上、全ての人物は偽名とする。


〈前回のお話〉



 

 

《第96話 女心は解らない》

 

 

 俺たちはゲーセンを出て、特に目的地も決めずに歩を進めていた。

 

「ねえ、ちょっと休めるところ入ろうよ」

 

「休めるところ?」

 

「うん、和泉ン(いずみん)が決めて良いよ」

 

 休めるところか……。

 

 休めるところ……。

 

 お、あそこ良いじゃんと、俺は立ち止まった。

 

「じゃあガスト入らないか?」

 

 え? とミナミはとても驚いた表情をした。

 

「……え、ミナミってガスト知らなかったりする?」

 

「ううん、知ってるけど……」

 

 ……じゃあその驚いた顔は何だ……?

 

「ホントにそこで良いの?」

 

 ミナミが何故そう言ったかは、その当時はまったく分からなかった。

 

「……ガストならドリンクバーで時間潰せるし、エアコンきいてるから休めるかなって……」

 

 ミナミはしばらく驚いた表情をした後、フッと吹き出した。

 

「なるほどねえ~。まあ良いけどねぇ。ガストねぇ。和泉ンらしいっていうか」

 

「……何だよそれ……」

 

「別にぃ。あ~可哀想な和泉ンですこと」

 

 と、いつものようにからかうミナミだったが、何故か嬉しそうだった。

 

            

 

           【第97話に続く】