※この物語は、生まれながらに不安障害を持った男が、2018年頃から現在に至るまでに辿った『実話』である。
なおプライバシーの関係上、全ての人物は偽名とする
〈前回のお話〉
《第36話 エレベーターと謎の女の子》
今日は昨日教わったことの復習。
やることは同じで、1つのエレベーターの清掃をし、後できちんと出来ているか鞘師さんに確認してもらうという流れ。
(……ん?)
清掃を開始して間もなく、上るエレベーターが13階で止まった。
ゲストが入ってくることに備えていると……。
またこの前の女性……というか女の子?
どちらか判別しづらい、あっさりとした顔立ちの女の人が、エレベーターの扉が完全に開き切る前に入ってきた。
「あ、間違えた」
と、またもこの前と同じセリフを残して出て行った。
(何なんだ……あの人……)
彼女は前も下に行こうとして、間違えて上ボタンを押して入ってきた。
そして前も扉がしまり切る前に。
相当急いでいるのだろうか?
だから今日も同じミスを?
(んー、でもなあ……)
だからといって、前と全くミスと全く同じセリフを残したのは、不可解に思えた。
(何なんだろう……)
その妙さは『いろいろな人が居るんだろう』と割り切ることを許さなかった。
エレベーターと彼女を結びつけるほどに。
【第37話に続く】