... やがて先生の知る真実、そして二人が結ぶ縁とは…。
大きな話題を呼んだ感動実話「縁を生かす」は、月間「致知」
2005年12月号の特集テーマです。
だらしなく、どうしても好きになれない少年がいた。
中間記録に先生は少年の悪いところばかりを記入するように
なっていた。
「朗らかで、友達が好きで、人にも親切。勉強もよくでき、
将来が楽しみ。」とある。
間違いだ。他の子の記録に違いない。先生はそう思った。
時々遅刻する。」と書かれていた。
居眠りをする。」
後半の記録では、「母親が死亡。希望を失い、悲しんでいる。」
とあり、
子どもに暴力をふるう。」
深い悲しみを生き抜いている生身の人間として自分の前に
立ち現われてきたのだ。
先生にとって目を開かれた瞬間であった。
「先生は夕方まで教室で仕事をするから、あなたも勉強を
していかない?分からないところは教えてあげるから。」
熱心に続けた。
授業で少年が初めて手をあげたとき、先生に大きな喜びが
わき起こった。
少年は自信を持ち始めていた。
押し付けてきた。
あとで開けてみると、香水の瓶だった。
亡くなったお母さんが使っていたものに違いない。
雑然とした部屋で独り本を読んでいた少年は、気がつくと
飛んできて、先生の胸に顔をうずめて叫んだ。
「ああ、お母さんの匂いだ!きょうはすてきなクリスマスだ。」
卒業の時、先生に少年から一枚のカードが届いた。
「先生は僕のお母さんのようです。そして、いままで出会った
中で、一番素晴らしい先生でした。」
「明日は高校の卒業式です。僕は五年生で先生に担当して
もらってとても幸せでした。おかげで奨学金をもらって医学部に
進学することができます。」
そこには先生と出会えたことへの感謝と、父親に叩かれた
体験があるから、患者の痛みが分かる医者になれると記され、
こう締めくくられていた。
「僕はよく、五年生の時の先生を思い出します。あのまま
だめになってしまう僕を救ってくださった先生を、神様のように
感じます。
大人になり、医者になった僕にとって最高の先生は、
五年生の時に担任してくださった先生です。」
「母の席に座ってください。」
と一行、書き添えられていた。』
ここまでできなくても、先生になったからには、生徒一人ひとりを自分の子供だと思って、仕事してほしいと思うのは、無理でしょうか?