定期的に魅力ある書籍の発行活動を行う遊郭部氏による最新本を読了す。
「昭和歌謡替え歌70選(発行:カストリ出版)」であります。著者は赤線探訪の第一人者として名高い木村聡氏。初回本に限り、木村氏のサインが添えられております。
誰もが一度は耳にし、口遊んだことのある懐かしき昭和の演歌・歌謡曲・・・・・・、木村氏の手による替え歌歌詞及びその解説が本書に収められております。奇しくも昨晩小生が鑑賞していたテレビジョンは昭和歌謡を流す良番組「あなたが聴きたい歌の4時間2016」、一杯飲りながら氏による替え歌の元歌も幾つか拝聴・・・・・。
前述したように所謂「赤線探訪ブーム」を切り拓いた木村氏・・・・・、氏の赤線紀行著書に触れたことが切っ掛けで各地の遊里跡地を巡礼し始めた諸氏も多いことでしょう。それ故に氏のイメージである赤線探訪と、本書の題材たる昭和替え歌が結びつかず疑問符が頭に浮かぶ方もおられましょう。
木村氏は赤線紀行を執筆する以前は、編集者として歌謡曲本にも携わっていた人物。言わば歌謡曲は氏の得意ジャンルでもあり、現在でも趣味の一つとして作詞を行い、作詞活動のトレーニングの途上で替え歌を作っておられるそう。氏の著書の愛読者ならば本書を一読することで、「赤線奇譚」に添えられた三篇の詞を思い出し、作詞に造詣のある方であることが再度窺えるに違いありません。
亦、木村氏と歌謡曲についての四方山話を遊郭部氏がインタビューしております。その内容はカストリ出版サイトに記されております。
替え歌と言うと直ぐに春歌(エロ歌)を想起しがちでありますが、木村氏は敢えてエロや品性のない替え歌は避けた、と言います。しかし乍、気取ったキザな替え歌が主たるものではなく、世相を皮肉ったもの、元歌から駄洒落と韻を効かせたもの、何気ない日常を記したもの、元歌無視した全くのナンセンスもの、還暦を迎える木村氏自身の私人生を回想したもの等々、相当バラエティーに富んだ替え歌ワールドが展開されております。
参考までに木村聡氏が作詞した替え歌を一篇ご紹介致しましょう。元歌作詞は安井かずみ、作曲は平尾昌晃、小柳ルミ子の名曲「わたしの城下町」、木村聡氏によるアレンジは「わたしのシャバ暮らし」であります。
1 拘置所を 出たけれど どこにも行くあて ありません
着たきりすずめの この身では 住むとこありません
ネットカフェ求めて 歩く場末の町
2千5百円 ここで支払いながら この身を嘆きます
2 拘置所に 戻ります お金が底を つきました
小銭で買います 目出し帽 コンビニで探します
シャバの空気を吸って 過ごしたふた月よ
盗むつもりは さらさらないんだから 抵抗しないでね
・・・・・・・拙ブログをご覧の親愛なる読者諸賢の琴線に触れるであろう凄まじくアングラ臭漂う替え歌であります。全く以て元歌が裸足で荒川を渡り、小菅の格子戸もとい鉄格子の中へ逃げ出すかの如き勢いでございます。
赤線探訪と言うサブカルチャーのジャンルを築いたのと同様に、替え歌を新たなムーブメントとして発動させたいと氏は語ります。本書を一読することで赤線探訪家としての木村聡氏とは違う一面を垣間見ることが出来るのであります。