「艶笑地図」にマッチする桃色を基調とした艶っぽい表紙。
原著は昭和二十六年に誕生したカストリ雑誌（艶笑誌）「青春タイムス」（発行：青春タイムス社）昭和二十六年五月～九月号に連載されていた「ジャパン艶笑地圖」。京都、埼玉県川口市、横浜、帝都吉原、神戸の昭和二十年代華やかなりし赤線現役時代の色街事情をリポートしたもの。
遊廓赤線跡地を探訪する好事家諸氏の間で専ら人気の高い五條新地（=五條楽園。五條南にあったことから橋下と呼んでいたらしい）や京阪の橋本遊廓。目下、辛うじて残る遺構の姿を以て我々は往年を想像する術しかないものであるが、五條、橋本共に脂粉の香漂いし現役時代の様子が収められている。蓋し好事家諸氏にとって垂涎の珍書と言っても過言ではあるまい。
原著となった「青春タイムス」。下記写真は昭和二十六年七月号ヨリ。雑誌名に「青春」と付けられているが、青少年向けの雑誌に非ず（掲載小説には青春モノ、ロマンスモノが目立つが）。同時代のカストリ雑誌（=艶笑誌、エロ雑誌）には「青春」と同様に「猟奇」「怪奇」と名付けられる雑誌が多く存在。単純明快に言ってしまえば「エロ」を指し示す当時の流行、シンボル的なものとしての立ち位置だったのだろう。この号には同じく好事家諸氏に人気の高い色街「ヨコハマ」の売笑地帯の様子が掲載されている。
「青春タイムス」自体希少性が高く現在は入手困難。「青春タイムス」の記事はエロに限定されず各界暴露話、現地ルポなど比較的硬派なものも存在した。当時の各地紅灯街レポを纏めた今復刻本は、同時代のカストリ誌にありがちな煽情的な与太記事とは一味違う一級の資料としての見方が出来る。
猶、解説は戦後の色街や闇市、艶笑本に造詣の深い藤木ＴＤＣ氏が行っている。藤木氏の語る「ヨコハマ」戦後史は必見である。