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関節や筋肉などの運動器の機能が低下した状態である「ロコモティブシンドローム」の関連因子が、若年者も含む8千人以上の日本人を対象とする調査から明らかになった。東京大学医学部附属病院企画情報運営部の山田恵子氏らの研究によるもので11月19日、「BMC Geriatrics」に論文が掲載された。

ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)は、運動器の障害のために身体の移動機能が低下した状態で、放置すると要介護リスクが高まる。ロコモ該当者は高齢者に多いが、高齢だからロコモになるのではなく、若い時期からリスクのある状態が続いていた結果としてロコモになると考えられる。しかし、これまでのロコモの疫学研究は高齢者を対象としたものが多く、非高齢者とロコモの関連はよく分かっていない。山田氏らは、この点を明らかにするため、若年者を含めた幅広い年齢層での調査を行った。

 

調査対象は、2017~2019年に全国各地の公的健康診断受診者や健康講義会参加者から募集された、20~89歳の一般住民1万444人。要介護認定を受けている人や、疾患などのために移動機能に支障のある人、回答内容に不備のある人などを除き、8,681人(平均年齢51.6歳、女性58.5%)を解析対象とした。なお、全国を7ブロックに分け、その人口比に応じて対象者数を調整している。

歩幅や椅子からの立ち上がり動作、および25項目のチェックリストから移動機能を評価する、日本整形外科学会の「ロコモ度テスト」に基づき対象全体を、ロコモなし、ロコモ度1~3に分類。すると、ロコモ度1(移動機能の低下が始まっている状態)が31.6%、ロコモ度2(移動機能の低下が進行している状態)が5.8%、ロコモ度3(社会参加に支障をきたしている状態)が3.2%だった。

ロコモとの関連が想定される因子として、年齢、性別、BMI、喫煙・身体活動習慣、食習慣、併存疾患、就労状況などを調査。その結果、ロコモ度1~3に該当する人は、高齢で身体活動習慣のない人が多く、高血圧や糖尿病などの併存疾患の有病率が高いという点で、ロコモなし群との間に有意差が認められた。

続いて、多変量ロジスティック回帰分析にて、ロコモの関連因子を検討。その結果、ロコモ度1~3に独立して関連する、以下の因子が明らかになった。

まず年齢に関しては、40歳以上では1歳高齢であるごとに、ロコモ度1のオッズ比(OR)が1.05~1.20、ロコモ度2はOR1.04~1.22、ロコモ度3はOR1.05~1.22だった(いずれも有意であり、高齢層ほどオッズ比が高い)。一方、40歳未満では、ロコモ度1に関しては1歳高齢であるごとにOR1.03~1.04の有意な関連が見られたが、ロコモ度2や3に関しては加齢に伴うオッズ比の上昇は認められなかった。

BMIに関しては、25以上の肥満はロコモ度1~3の全てと有意な関連があった(ロコモ度1から順にOR1.56、3.19、2.87)。反対にBMI18.5未満のやせは、ロコモ度1のオッズ比が0.81で有意に低く、一方でロコモ度3のオッズ比は有意でないながら1.34と高かった。この点の理由として著者らは、ロコモ度1にはやせている若年者が多く含まれており、その人たちの移動機能が高い一方、ロコモ度3には高齢でやせている人が多く、その人たちの移動機能が低いことの表れではないかと考察している。

性別については、女性であることがロコモ度1~3の全てと有意な関連があった(同順にOR2.28、2.40、1.80)。そのほか、高血圧(OR1.20、1.99、2.10)や、糖尿病(OR1.62、1.57、2.10)とも、有意な関連が存在した。脂質異常症は関連がなかった。

一方、オッズ比の低さと関連する因子として、身体活動習慣が抽出された。具体的には、ロコモ度1に対しては月に数回程度の運動でも、ほとんど運動をしない人に比べてOR0.72であり、さらにロコモ度3に対しても月に数回の運動でOR0.53、ほぼ毎日の場合はOR0.36と、オッズ比の大幅な低下が認められた。

このほか、喫煙はロコモ度1のオッズ比上昇、多様な食品の摂取はロコモ度1~2のオッズ比低下と関連していた。また、貧血はロコモ度2~3のオッズ比上昇と関連していた。

著者らは、「40歳未満の加齢はロコモ度1とのみ関連があり、40歳以上の加齢はあらゆるレベルの移動機能低下と関連していた。健康なエイジングには、若年世代も含めた啓発が必要であり、特に女性を対象とした介入が不可欠」と結論付けている。

[HealthDay News 2021年12月24日]