下記の記事はビヨンドヘルス様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

健康を維持して元気に過ごすには、身体活動を行うのが良いことは広く知られている。また専門家の間では、身体活動がアルツハイマー病などの認知症予防にも役立つ可能性も指摘されている。

こうした中、身体活動が脳にもたらすベネフィットについて理解するための手がかりとなり得る研究結果が報告された。高齢期に身体活動レベルが高かった人では、脳の神経細胞間での情報伝達の役割を担うシナプスのマーカーとなるタンパク質(以下、シナプスのタンパク質)の量が多いことが示されたという。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)神経学分野のKaitlin Casaletto氏らによるこの研究結果は、「Alzheimer's & Dementia」に1月7日発表された。

この研究は、脳の加齢による変化と認知機能との関連について検討する米ラッシュ大学のプロジェクト(Rush Memory and Aging Project)の参加者から抽出した404人(死亡時の平均年齢90歳)を対象に実施された。対象者はモニターを装着して、毎日の身体活動量を最長で10日間にわたって毎年計測していた。なお、同プロジェクトでは、身体活動レベルの高い高齢者は認知機能が高く、認知症リスクが低いことが既に明らかにされていた。Casaletto氏らは、その理由を明らかにするために、同プロジェクトで凍結保存されていた脳組織を入手して剖検を行い、シナプスのタンパク質量を評価した。

その結果、シナプスのタンパク質量が多い人は、生前、毎日の身体活動レベルが高い傾向にあったことが明らかになった。この関連は、脳の病態とは無関係に認められ、アミロイドやタウの蓄積といったアルツハイマー病に関連する脳所見が確認された高齢者でも、身体活動レベルが高い人ではシナプスのタンパク質量は上昇していた。その一方で、シナプスのタンパク質量と身体活動との関連は、活動量計での身体活動量を測定してから脳の剖検でタンパク質量を評価するまでの期間が2年以内の人で最も強く、身体活動を行った時期が影響を及ぼすことも判明した。さらに、身体活動によるシナプスのタンパク質量の増加は、記憶を司る領域だけでなく、思考や推理に関連する領域など計6カ所の脳領域で認められ、脳全体の現象であることが示唆された。

こうした結果を受けてCasaletto氏は、「身体活動量が多くなるほどシナプスのマーカーとなるタンパク質の量は増えるという線形関係が認められた。これは、わずかな身体活動でも何もしないよりは良いことを示す結果だと私は受け止めている」と話す。また同氏は、「身体活動によりもたらされるこの健康に有益な反応は、加齢に伴う脳の変化を和らげ、認知機能の向上を促す可能性がある」との見方を示している。

Casaletto氏によると、シナプスのタンパク質は、神経細胞間での情報伝達を担う神経伝達物質の産生に関わっている。「これらのタンパク質が多いと、シナプスも多く、またシナプスの働きも良くなるのではないかとわれわれは考えている」と同氏は言う。

アルツハイマー病協会のメディカル・サイエンティフィック・リレーション部門バイスプレジデントのHeather Snyder氏は、「この研究から、身体活動が脳のレジリエンス(回復力)を高める可能性が示唆された」と話す。同氏は、「脳細胞の健康を維持し、情報伝達の機能を保ち続けられれば、疾患による変化を遅らせたり、損傷に対する脳の脆弱性を抑えたりすることができるかもしれない」と述べている。その上で、脳の健康増進のために、社交ダンスやウォーキングなど自分が楽しめる身体活動を取り入れることを勧めている。

[HealthDay News 2022年1月10日]