2024年の8冊目も森博嗣著の作品を選びました。『すべてがFになる』の再読です。シリーズで考えると7冊目の『冷たい密室と博士たち』の前の作品です。でも、再読なのでどちらかというと、『冷たい密室と博士たち』を読んでから、もう一度『すべてがFになる』という順番で読んでよかったです。

イースター休暇で集中して読書できたことで、お休みが終わってからも読書欲が続いています。

以下、覚え書きです。

67ページ「理想的な職場ですね」

数年前、オフィス勤務から完全在宅ワークを強いられたとき、とても抵抗がありました。もちろん環境が整っていないことへの不安が強かったのだと思います。いまは、以前のように職場で仕事をすることが普通になりました。でも、在宅ワークを経験すると、オフィスで仕事をしているときに巻き込まれる立ち話などに違和感を感じるようになりました。「理想的な職場」についての考え方は人それぞれだと思いますが、わたしの考えも変化していることに気づきました。

79ページ「コンピュータで作られたものは必ず受け入れられるよ。それはまやかしだけど…。本物なんて、そもそもないことに気づくべきなんだ、人間は…。」

人間のさまざまな感情はコンピューターによって満たされるものがこれからも増えていくということなのでしょうか。体験とか経験とかに価値があると認められる時代は終わるのかもしれません。

229ページ「20代は遮二無二勉強をした。研究だけに時間を使ってきた。目の前にある自分だけの問題に興奮し、自分だけの征服感が最高のものだと信じていた。純粋な学問は果てがない。達成感のない虚しさこそが貴重なものだとも思った。」

中学から私立の女子校に通いました。同級生の中で大学院に進学した人を知っています。でも、博士課程まで進学し、修了した人は知りません。もちろんいるかもしれませんが、確実に少数です。長い間学生をしていたわたしは、中学からの友だちからすると「どうしてそんなことがしたいのか理解できない」という対象になっていました。研究の楽しさは経験していない人には分からないかもしれません。わたしは文系なので理系の楽しさとは違うかもしれませんが、いい経験だったと思っています。

289ページ「思い出は全部記憶しているけどね、記憶は全部は思い出せないんだ」

主人公のひとりが思い出と記憶の違いを説明しているところです。そう考えると思い出には限りがあるのだなぁと思います。いい思い出も悪い思い出もあります。思い出せるのがいい記憶だけだったらいいのに…。

485ページ「すべては複雑すぎて、曖昧になり、本質が覆い隠される。単純なモデルは疎まれ、空論、空論と非難される。それがデータで埋もれた時代」

大人になったいまだからこそ、もっといろいろなことをシンプルに捉えてもいいのかもしれません。たくさんの情報が溢れています。それをすべて追い続けることはできません。自分の心に正直に、必要なものだけ受け止めていきたいです。

500ページを超える長編ですが、とっても面白かったです。2023年の一時帰国で、森博嗣の作品を買って帰って来て本当によかったと思っています。出会いに感謝です。フセンをつけた個所はまだまだあります。また読みたい1冊です。