学術分野ごとに異なる学位論文審査要領

 



 

先週の土曜日(2/3)に修士論文の最終審査

口頭試問を終え、無事合格したことをお伝えしましたが、

実はそれですべてが終わるのではなく、

2月末日までの修正作業を続けています。

 

修論審査ではものすごくたくさんの修正指示を受け、

2名の副査からは直しきれないほどの指摘を受けています。

論文の根幹にかかわる修正指示もあり、

「てにおは」を直すと言った単純な作業ではないので

この1週間は毎晩修正原稿を眺めつつ、ため息をつきながら

修正作業を継続しています。この作業が結構大変です。

 

これまでの工学系学位論文(修士と博士)を

2つの大学に提出しており、

文系学位である商学修士の論文も提出しており、

一応受理されています(それなりの審査はありましたので)。

ところが今回はこれまでの経験があまり参考にならないようです。

 

以前の論文執筆経験に比較すると

心理学系学位論文は体裁に非常に厳しく思います。

お作法(論文の体裁)に関わるところから

考察の仕方まで全く異なります。

これまでの経験がかえってことを難しくしている(汗)?

 

まずは大きく異なる処として、

論文構成は一律に決まっているようで、

順番に以下のようにまとめるように指示されています。

 

・目的

・方法

・結果

・考察

・限界と課題

 

これらを明確に分けて記載しなければなりません。

ここに本調査とは別の予備調査が入ってくると、

予備調査のフェーズで同様な構成を求められ

心理学のお作法に沿った記載が必須とされます。

 

予備調査は本調査ほど書くこと無ないので

記述内容を膨らませるのにはかなり苦戦しました。

 → 何とか文章にはしましたが、出来はいまいち?

 

最大の違いであり、執筆していて難しく感じるところは

結果と考察を分けて記載するところです。

箇条書きや脚注を入れることも認められません(汗)。

 

これまで書いてきた論文形式は

Results and Discussion(結果と考察)

多くの場合は一緒に章立てして、流れで議論できました。

自然科学系では客観的なデータに基づき実験を進めるので

予備調査と言う回りくどいことはやらないし、

データには客観性がある(誰がやっても同じ結果)ので

そもそも妥当性検証は必要ありません。

信頼性(何回測っても同じ結果)のみを担保しますが、

妥当性と言った概念は存在しません

基本として、考えなくて良い!

 

これに対して、心理学では主観的な部分を扱うので、

客観性があることが担保されていないために、

研究内容に基づく妥当性検証を先行論文から拾ってくることが

大前提として、学位論文に引用することを求められます。

 

そこで湧いてくる疑問として、

先行研究が無い斬新な研究テーマはどうするのか?

 

残念ながら多くの場合、国外の論文、特に米国論文を

参考(引用)にすることが多い、必須とされるので、

基本は米国の先を行くことができないことになります。

 

主観的なことを扱うが故の難しさとは思いますが、

日本の論文がこの分野で世界的には注目されない理由は

こう言ったところにあるように思いました(批判ではなく現実)。

 → 幸せ科学の第一人者、大石繁宏氏(イリノイ大学)は

   日本語で書く論文は世界的に読まれないので

   これまで日本語で学術的な論文発表はしてこなかったと

   著書の「幸福を科学する(2009,新曜社)」に明記されており

   その言葉に凄く共感しています(笑)。
 

自身が過去(~2004年)に書いてきた論文も、

ほとんどが英文だったし、海外雑誌が主でした。

ご依頼があれば日本語で書くこともありましたが、

日本語の論文は世界では誰も読まないので

自然科学系では論文執筆対象として

カウントされませんでした(1990年代の話)。
 

とは言え、郷に入れば郷に従え、

心理学初心者はまずは有識者の指導を受ける、

そこから次のステップを踏むのが流れでもあると思うので、

頂いている修正指示をありがたく頂戴して、

ひとつづつ対応して、月末に向けての修正を続ける次第です。

 

分野の異なるところで学位を取ると言うことは

結構しんどいことであると再認識していますが、

あと少し、なんとか乗り切りたいと思います。