甲府の老舗旅館 常盤ホテルが負債20億5,857万円
今日(9/16)の山梨日日新聞からです.
経営が大変,苦しんでいるとの噂はありましたが,
ここまで危機的な状況であったとは,知りませんでした.
湯村興産が特別清算
常盤ホテル旧経営会社 負債20億円超
新会社がホテル継承 甲府の2施設 厳しい経営環境
実質的には破産と言える状況ですが,経営は継続できる特別措置です.
破産は債務者の全財産を債権者に平等に分配しますが,
特別清算では,債権者の多数決で配分額を決め
柔軟な清算を進めることができるので,
債権者の2016年設立の新会社である湯村興産が
旅館・ホテル事業に関する権利義務を継承し,
名称を常盤ホテルに変更して経営を継続できたとのことです.
債権者は5者,この間の話し合いによって破綻を免れた,
実質的には融資先の金融機関が債権の放棄をしたと思われます.
そのあたりのことは細かく書かれていませんが,
ここで常盤ホテルを潰すより,債権を放棄してでも
常盤ホテルに経営を継続させる方が長い目で見て,
得策と判断した銀行の英断があったものと推察します.
この判断は正しかったと思います!
常盤ホテルと言えば,山梨県の最高峰の旅館,
天皇陛下が宿泊される,甲府の迎賓館的別格でしたが,
ホテル業界の経営状況は厳しいようで,
今年の5月に山梨県内2番目ランクの甲府富士屋ホテルが
経営権を譲渡,実質的にはホテルを売ったという事態が発生しています.
昨年(2017年)には,甲府の積翠寺温泉にある老舗旅館
『要害』と『坐忘庵』が営業を停止しています.
この背景にはいろいろな変化がありますが,
儲けの柱であったホテルでの結婚式が激減,
年間40~50件程度(220件@1990年),
この落ち込みをほかのイベントでは取り戻せなかったとあります.
→ 今の主流はハウスウェディング,こじんまりとやる!
加えて,甲府駅前には東横イン,ドーミーインが2件づつ
低価格を売りに進出してきています.
1989年の19件の甲府市内ホテルが
2017年には35件に増加,
客室数は2,911室にまでなっているとのことで競争は激化しています.
更に加えて,常盤ホテルも富士屋ホテルも甲府駅から
徒歩圏にはなく,タクシーを使わなければならない
地の利の悪さがあったと推察します.
→ 特に外国人観光客は駅前を選ぶと思います.
いずれにせよ,古い形態のビジネスを継続していても
昔のように収益を確保できない環境の変化があるわけです.
それを早めに察知して手を打つべきタイミングを逸すると,
大概は常盤ホテルや富士屋ホテルのように経営難に陥ります.
それを事前に察知して先手を打つことができる経営者は
案外少ないように思いました.
変化に対して敏感になれるか否か,
これが経営者に一番必要なセンスだと思います.
これが難しいのはよくわかりますが,会社を潰さない,
これが経営者に求められる最低限の要求事項と言えるでしょうね!