静岡県伊豆半島北部の道路を研究していこう、というこのブログ

第41回のテーマは『西熱海道路(西熱海パークウェー、相ノ原道路)』です。

資料によって呼称が異なりますが、同じ道路を指していると思われます。
場所はここです。
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県道熱海函南線の相の原入口交差点から笹尻交差点まで、
ちょうど登り坂が2車線になる区間です。

WEBで色々調べたもののあまり情報が出てきません。

このサイトくらいか?(1972年のところ)

知り合いの伊豆箱根のOBの方に伺いましたが、あまり詳しい話は聞けず…。

<1・きっかけ:広報あたみ、熱海市議会会議録より>

この道を知るきっかけは上記サイトではなく、広報あたみや熱海市議会会議録を見たことです。

まず、前後しますが、熱函道路(『ねっかん』と読みます)の開通を報じる
『広報あたみ』3月号(昭和48年3月10日発行、通巻193号)です。
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沼津・三島方面から熱海へ車で行くには、県道三島熱海線(当時)の熱海峠を
経由するしかありませんでした。
この広報の通り、昭和48年4月1日に熱函道路が開通。有料道路ではあるものの
鷹ノ巣山トンネルを通る現在の道路が開通したのです(現在は無料開放)。

さて、熱函道路開通により沼津・三島方面からの交通が楽になる一方、
これにより熱函道路を使っての車の流入が増えるものと予測したようで、
熱函道路から熱海市内までの道をどうするか?という中で、熱海市が目を付けたのが
この伊豆箱根鉄道が所有していた『西熱海道路』です。

関連する広報です。先ほどより少し遡って『広報あたみ』7月号昭和47年7月10日発行、通巻185号です。
この年の6月定例市議会で伊豆箱根鉄道が持っている西熱海道路を熱海市が買収しようという内容です。
写真の部分の文字は、
『西熱海道路/梅園上の三ッ石←→一里茶屋/延長 1,807m 幅員11m』
とあります。
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続いて『広報あたみ』8月号昭和47年8月10日発行です。
6月定例市議会で西熱海道路の買収が決まり、買収した区間と来宮駅までが市道『来の宮駅笹尻線』として認定され、切り離された部分が市道『三ッ石相の原線』に認定され再編されたことを報じています。
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なお、2018年5月に熱海市役所秘書広報課広報情報室さまより転載の許可を頂きました。
ありがとうございました。

該当する市議会の会議録を抜粋します。

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昭和47年6月熱海市議会定例会会議録 より
議案第33号 市有財産の取得並びに処分について
議案第34号 市道路線の廃止について
議案第35号 市道路線の認定について

議案第33号 市有財産の取得並びに処分について
熱函道路の開通に対処するため伊豆箱根鉄道株式会社所有の
西熱海道路を、市道来の宮駅笹尻線の一部として一般交通の
用に供するため、不動産売買契約を締結するにあたり財産の取得
(以下略)

議案第34号 市道路線の廃止につきましては、次の第35号議案との
関連により路線を整備するため、来の宮駅相の原線を廃止しようと
するもの。

議案第35号 市道路線の認定につきましては、熱函道路の開通予定に伴い、
買収予定の西熱海道路を含め将来の道路利用を考慮し、来の宮駅笹尻線と、
これと関連した三ツ石相の原線の2路線を市道として整備するため
認定しようとするもの(以下略)
西熱海道路の延長は1807メートルの記述あり

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元々、来宮駅~相の原団地間が『来の宮駅相の原線』だったのが、
西熱海道路の区間から来宮駅までが、『来の宮駅笹尻線』となり、
切り離された相の原団地への道が『三ツ石相の原線』に再編されました。

<2・市道の姿について>

『三ツ石相の原線』の現在の姿を調べました(熱海市役所にて2017.8.16調査)。
起終点は下図になります。なお、資料では『NO.945 三ッ石相ノ原線』
(『ッ』はカタカナで小さい『ッ』、『ノ』はカタカナの『ノ』)でした。
終点の位置が中途半端です。
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もう一つの『来の宮駅笹尻線』ですが、すでに廃止されています(廃止時期不明)。このため、市役所での調査ではわからず、下記資料が重宝しました。

静岡県歴史的公文書№39053『路線の重複について』を確認しました。
・昭和52年3月31日付けをもって県道熱海函南線の道路の区域を決定するにあたり
 熱海市道来の宮駅笹尻線と下記のとおり道路の区域が重複するので、道路法第11条
 第3項の規定に基づき当該区間については県道に関する規定が適用されるので
 案の1により熱海市長あて、案の2により熱海土木事務所長あて通知して
 よろしいか伺います。
            記
 1、重複区間  熱海市福道町723番地先から
          〃 熱海字笹尻1804番の62地先まで
 2、延長・幅員 L=3,564m W=10.5~77.0(単位なし)

添付されていた路線図を地理院地図に落としてみました。
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<3・西熱海道路について>
さて、『西熱海道路』とはどういった道だったのでしょう。
WEBにもあまり取り上げられておらず、知らない人も多いのではないかと思います。

伊豆箱根鉄道様に問い合わせました。
2018年3月27日に大変丁寧なご回答をいただきました。ありがとうございます。
しかし、回答内容の二次利用不可とのことでしたので、伊豆箱根鉄道様からの
回答を使用せずに調べたことをまとめます。

まず、『土木概要(昭和39年版)』より
発行から50年経過していますので、著作権保護期間満了と考えます。
事業主体が伊豆箱根鉄道となっている路線の内、『十国峠道路』については、
現在『熱海箱根峠線』となっています。

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もう一つの『相ノ原道路』が該当すると思います。延長が1.8kmとあります。
『広報あたみ』に載っていた延長が1807mですので一致します。

次に、昭和42年11月発行『伊豆箱根・伊豆箱根鉄道創立50周年』です。
(沼津市立図書館所蔵)
発行から50年経過していますので、著作権保護期間満了と考えます。
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ちょっと読みづらいですが、アンダーラインの個所『西熱海パークウェー』とあります。
同じ道路を指していると思います。

色々調べたのですが、この程度の情報しかありませんでした。

西熱海道路とは、どういった道路だったのか
次の新聞記事を見つけました。この記事で何となく見えてきました。
内容抜粋します。

『買収交渉が妥結』『伊豆箱根鉄道の建設した道路 熱函道バイパスに』
静岡新聞 S47.6.13 東部版
・熱海市は、来年4月に予定されている熱函道路開通に備え熱海口の取り合い道路
 (バイパス)を確保するため、伊豆箱根鉄道が建設した道路の買収交渉を
 進めてきた。
 市は、6月定例市議会で承認を得たうえで会社側との間で売買契約に調印する。
・熱函道路の熱海口の取りつけ道路は、中心街と十国峠とを結ぶ県道三島-熱海線
 だが、道幅が狭いうえにカーブが多く事故が絶えないためバイパスとして中心街に
 近く道幅も広い伊豆箱根鉄道の建設道路を当てることを計画、
 昨年から本格的な買収交渉を進めていた。
・同道路は、さる38年から40年にかけ沿線山地を別荘分譲することも兼ねて
 同社所有山地内に建設されたもの。有料経営する計画で申請したが認められず、
 ほとんど閉鎖状態にしてあった。
 同市笹尻(通称一里茶屋)の熱函道路熱海口および同県道(中心街から十国寄りへ
 約3キロ地点)と梅園上の同市滝知山地内の延長1.8キロを結んでおり、
 幅員11-12メートル。以下略
※この記事内には『西熱海道路』という言葉は出てこない。

記事中の『有料経営する計画で申請したが認められず、ほとんど閉鎖状態にしてあった』というのが大きいと思います。だからあまり知られていないのでしょう。

<4・関連する静岡県公報>

関係する静岡県公報も見てみます。
まずは、県道三島熱海線の認定(昭和30年3月31日)
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当時は熱海峠を経由するルートしかありませんでした。

その後、『熱海箱根峠線』でも紹介しましたが、昭和39年12月15日『箱根峠熱海線(当時)』の区域追加と供用開始、
昭和46年10月1日に『箱根峠熱海線』→『熱海箱根峠線』の路線名変更がありました。
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昭和48年3月31日に三島熱海線の区域変更・供用開始があります。
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『熱海市熱海字福道町1114-3』の場所ですが、来宮駅西側の法務局熱海出張所付近です。
図解はかなり下の方<5・まとめ?>にあります。

翌日の昭和48年4月1日に『熱函道路』の供用開始となります(告示日は3月30日)。
前後しますが、昭和46年4月2日の告示で区域追加された区間になります。
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そして、昭和52年2月1日の告示で、三島熱海線が廃止となり、熱海函南線が認定されます。
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昭和52年2月1日の告示では笹尻交差点から西の区間(旧道も)の区域決定・供用開始となっています。
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最後に、昭和52年4月1日の告示にて中央町交差点~笹尻交差点までが区域決定・供用開始となっています。
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<5・まとめ?>

地図をペタペタ貼ってもよかったのかもしれませんが、
わかりにくいと思われましたので、初の試みとしてgifアニメを作りました。
下田市内の国県道の変遷、松崎町内の国県道の変遷の時も使えばよかったな。なんで思いつかなかったんだろう
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※本ブログは公的機関の公式発表ではありませんので、正式な情報が必要と
 される方は関係機関へお問い合わせください。
※今回推測の個所もあります

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※地理院地図は2018年12月12日現在。いずれも300×400ピクセル以内です。
※静岡県公報は著作権法第13条第2号の規定より、地方公共団体が発する告示ですので、著作権を有しないと考えられますので、そのまま転載しました。
※参考資料 『静岡県熱海市土地宝典その一(旧熱海・伊豆山・泉地区)』
      S51.12.24発行 帝国地図