静岡県伊豆半島北部の道路を研究していこう、というこのブログ

第34回のテーマは『県道十国峠伊豆山線』です。
※第33回は欠番となります。

2018/10/30(火)の当ブログ『静岡県地理情報システムについて』に記載したとおり、
静岡県地理情報システムにて、地図切り替えで『道の情報』を選ぶとこれまで、
『道路現況平面図』『ブロック図(一部路線を除く)』が閲覧できましたが、
『ブロック接続起終点図』『道路幅員図』も閲覧可能となりました。

それを記念し、元々別のテーマの執筆途中だったのですが、急遽予定変更し、
みんな大好き点線県道『十国峠伊豆山線』を取り上げます。

※伊豆半島北部『3大点線県道』の一つです(勝手命名)
 ちなみに他の2つは『三島静浦港線』『田原野函南停車場線』です。
 『中大見八幡野線』は一部バイパスが出来、やる気が感じられるので次点です。

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<1・調査のきっかけ>

『県道十国峠伊豆山線』を調べようとしたきっかけは函南町立図書館で
『平成元年第2回(6月)定例会 函南町議会会議録』を見たことです。

平成元年第2回(6月)定例会 函南町議会会議録 より抜粋
議案第52号 区域外の道路の認定について
・平成元年6月15日熱海市から区域外の市道の認定について協議がなされたので、
 これについて承諾する旨回答するものとする
 平成元年6月23日提出。函南町長、中村博夫
・熱海市が霊園墓地を造成する。伊豆スカイラインの料金所付近から、
 この開発区域まで道路が造成されているが、その道路をこの霊園の進入路として
 使用したいということから市道として認定するよう県の方の指導もあったよう。
・スカイラインの料金所の前からS字で進入している。
・伊豆箱根で(伊豆箱根鉄道のこと:管理人注)造成されてできている路線を
 市道として認定したい。路線名は日金熱海峠線。
 延長については函南町分で93メートル。

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この道、熱海市の市道だというのです。

道路法では、市町村道の認定について、第八条にて次のように定めています。

3 市町村長は、特に必要があると認める場合においては、
  当該市町村の区域をこえて、市町村道の路線を認定することができる。
  この場合においては、当該市町村長は、関係市町村長の承諾を得なければ
  ならない。
4 前項後段の場合においては、関係市町村長は、当該市町村の議会の議決を
  経なければ承諾をすることができない。

このように道路法では、他の市町村の敷地に市町村道を認定することを認めています。
函南町内に熱海市の市道を認定できるのです(ただし議会の議決が必要)。

ということで函南町の敷地に熱海市の市道が認定された、というのです。

逆に言うと、この道は県道十国峠伊豆山線ではないようです。
では、十国峠伊豆山線の起点はどこなのか?

<2・十国峠伊豆山線の認定、区域決定、供用開始>
いつものように、認定時の告示を確認します。

認定(昭和31年11月27日)
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区域決定(昭和35年4月1日)
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供用開始(昭和35年4月1日)
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告示によると、起点は『熱海市熱海字峠2010の3』とのことです。あとで土地宝典で調べてみよう

※ちなみに2017.3.14告示175号(新たに地上に設ける電柱を制限する告示)でも
 『熱海市熱海字峠2010番の3』で出ています。
 (県公報のページで十国峠伊豆山線で検索してください)

<3・十国峠伊豆山線の起点>
H29.1.17熱海土木事務所にて『ブロック接続起終点図』を確認しました。
(静岡県地理情報システムで見ることができます)

それによると、十国峠伊豆山線の起点は下図です。
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『ブロック接続起終点図』を見る限り、十国峠伊豆山線の起点は、伊豆スカイライン熱海峠料金所付近と思われます。

起点付近の現地写真はありません。
探索しようとしましたが、思いっきり不審者扱いされました。
(昭和35年4月1日の告示で供用開始されているはずなんだがなぁ…。
 供用開始した道路に入ろうとして何がいけないんだ)

ところで上述の通り、告示より起点の地番は『熱海市熱海字峠2010の3』です。
土地宝典(熱海市立図書館所蔵)及び公図を調べました。位置は下図です。
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…ちょっと思っていた場所と違う。

逆に言うと、『ブロック接続起終点図』に記載の起点の地番は
熱海市熱海字姫ノ尾1802-1付近と思われます。



起点付近の道ですが、公開されている『道路幅員図』によると、
起点から603.5mが車交通不能とされています。

『創立15周年記念 伊豆の日金山と日金山石仏の道検証』
伊豆の日金・熱海を語る会会長鈴木徳治著によると(以下引用)

函南からの日金山への石仏の道の基点は熱海峠の県道から細い山道が東光寺まで通じ、
此処に十八丁の石仏道が江戸時代「享保年間(1720)」に建てられた。
しかし伊豆スカイラインの有料道路や日金霊園が出来て霊園や日金山東光寺まで
自動車道路が出来た為、石仏の道は消滅して、そして多くの石仏は現在不明である。

とあり、元々の道は失われている模様です。

2018.11.05追記
1ブロック付近。ルート不明ですが、こんな感じと思われますので下図参照ください。
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<4・十国峠伊豆山線の終点>
終点は国道135号交点です。終点付近の区域変更の告示が出ています。
同時に国道135号の告示も出ています。
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十国峠伊豆山線ですが、155m伸びたようです。
国道135号が線形改良されたものによると思われます。
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熱海市立図書館デジタルライブラリーの
静岡県熱海市熱海局郵便区市内図
を参考に、国道135号のかつての線形を推定し、緑色のラインで記入しました。
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<5・関連する熱海市道>
まずは、最初に紹介した『日金熱海峠線』
熱海市役所にて確認(2017年1月17日確認)
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続いて、車道と登山道の境界部
熱海市役所にて確認(2017年1月17日確認)
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<6・現地写真>
・終点付近。2017年4月29日撮影
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 ヘキサが立っています
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 ここから2017年5月6日撮影
 国道135号側に設置された青看(赤矢印部、何か隠されています)
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 『十国峠 Jukkoku Pass』が消されていました。
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『十国峠伊豆山線』の終点側なので、行先に起点の『十国峠』と書きたい気持ちもわからないでもないですが。
一旦は書いたものの、車では行けないことに気づき隠したのか?

それとも、開通した時に『剥がせるように』仕込んであるのか!?

開通させたい、という想いを込め、隠すことを前提に書いてあるのか?


・車道端点(2ブロック・3ブロック境界)
 2017年4月29日撮影
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 ここから2017年5月6日撮影
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・1ブロック・2ブロック境界付近(日金山東光寺)
 この石段も県道とのことです。階段県道。2017年1月22日撮影
 (階段県道自体はあまり珍しくはないようですが…)
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<7・データ集>
ここで、『一般国道・県道路線調書(昭和58年4月1日現在)』のデータを引用します。

・整理番号    102
・路線名     十国峠伊豆山線
・法第7条該当号 5
・起点      熱海市熱海
・終点      熱海市伊豆山
・重要な経過地  (空欄)
・認定等年月日  昭31.11.27(第1158号)認定
         昭48.1.20(第43号)整理番号、起点の告示改正
・区域決定    熱海市熱海字峠2010の3 から
         熱海市伊豆山字前鳴沢810番の5地先 まで
・告示年月日   昭35.4.1(第220号)
         昭41.10.14(第630号)
・供用開始    熱海市熱海字峠2010の3 から
         熱海市伊豆山字前鳴沢810番の5地先 まで
・告示年月日   昭35.4.1(第221号)
         昭41.10.14(第631号)
・沿革等     (空欄)

なお、『道路台帳』をH29.2.6に静岡県庁で確認したところ、
供用開始の区間、区域決定、ともに

熱海市熱海字峠2010番の3 から
熱海市伊豆山字前鳴沢811番の3 まで

となっておりました。
続いて『道路現況調書』のデータから。

<十国峠伊豆山線>
路線番号      3102
路線名       十国峠伊豆山線
読み        じっこくとうげいずさんせん <注>
総延長       14215m
重用延長      (空欄)
実延長       14215m
自動車交通不能区間 3008m
起点        熱海市熱海[熱海峠]
終点        熱海市伊豆山[国道135号交点]

<注>『じゅっこく』ではなく『じっこく』です。ママ引用しております。
   高校の国語の先生も同じことを言っていたので、強調することではないかも
   しれませんが…。

出典『平成28年4月1日現在 静岡県道路現況調書』静岡県道路保全課

なお、静岡県地理情報システムにて、地図切り替えで『道の情報』を選ぶと『道路台帳図』が閲覧可能です。
見たい路線を拡大してクリックすると右側にリンクが表示されます(2018年11月3日現在)。
併せてご確認ください


<8・その他>
熱海市議会の会議録を見ていたら次のような内容がありました。

昭和60年6月熱海市議会定例会会議録 より
請願第1号 県道十国峠・伊豆山線を日金山トンネルにより熱海峠・丹那線への建設促進について
7/9採択
本請願は去る6月29日、▲▲▲▲▲議員ほか22名の議員の紹介により市内泉●●●番地、県道十国峠・伊豆山線延長期成同盟発起人代表■■■■さんほか1,345名より
提出されたもので、その要旨としては昭和30年泉分離紛争当時に県道十国峠・伊豆山線として、伊豆山と泉地域の市道の一部が県道に認定され今日に至っているが、本道路は泉奥西山から日金山を越えて熱海峠の県道丹那線に接続させる計画を泉の住民に約束してあるのに、いまだにその延長が進んでおらず、地域開発と交通緩和の面から重要であるので、本市議会で取り上げて延長計画が促進できるようにされたい旨の内容であります。
建設委員長報告
今後車両交通不能区間を積極的に整備・建設促進するよう県当局に要請していくことで、本請願を採決した結果全会一致をもって採択することに決定いたしました。


『熱海峠・丹那線』『県道丹那線』とありますが、原文ママ引用しています。
熱海函南線(旧道)のことと思われます。
なお、会議録中、▲▲▲▲▲には議員名、■■■■には個人名、●●●には番地が記載されておりましたので、引用にあたり伏せさせていただきました。

このように過去にも十国峠伊豆山線の整備については議論されているようですが、
実を結んでいません。

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※地理院地図は2018年11月1日現在(1枚だけ11月5日)。いずれも300×400ピクセル以内です。
※静岡県公報は著作権法第13条第2号の規定より、地方公共団体が発する告示ですので、著作権を有しないと考えられますので、そのまま転載しました。
※参考資料 『静岡県熱海市土地宝典その一(旧熱海・伊豆山・泉地区)』
      S51.12.24発行 帝国地図