褒めて伸ばす

褒める教育

「褒める指導」が注目されています。



企業の指導者研修をしていても、


「ほめるのが良いんですよね。」
「どんどん褒めるようにします。」


と言ってくる受講生がいます。


私は「ほめる」という事について否定はしま
せんが、その「ほめる」をどう行うかに
ついては注意が必要です。


「ほめる」事のテクニックを書いた本などは
沢山ありますが、私は単に「テクニック」
として「ほめる」という行為については
賛同しかねます。

その理由については後述するとして、まずは
「ほめる」事についてのテクニックとは
どんなものか について参考までに書きます。


例えば、部下が仕事についての提案をした時


①「もっと具体的な数値目標が無いとダメ
      だよ。資料は解りやすくて良いけど
       ね。」

②「すごく解りやすい資料だね。あとは
      もっと具体的な数値目標があると良いと
      思うよ。」


二つのコメントは、意味は同じですが、印象
はどうでしょうか?


アドバイスを受ける立場としては、どちらが
前向きな印象を受けるか、もうお解りかと
思います。

両方ともプラス部分とマイナス部分を伝えて
いますが、①はマイナス部分を『減点』と
して伝えています。
そして「一応褒めておかないとな」的な感じ
でフォローをしています。



それに対して②はマイナス部分について、
「後はこれが出来ていれば満点だよ」
という風に伝えています。


つまり、マイナス部分にもかかわらず、部下
が「前向き」に捉えるアドバイスとなって
います。


そのためには、まず良かった点を評価し、
その後で「ここが出来ればカンペキ」と
前向きなアドバイスをする事です。


【ポイント】
     「ほめ」は順序やタイミングが重要



次に、今回のタイトルの内容について。


ある企業のカリスマエリアマネージャーの話


その企業では全国をエリアに分け、それぞれ
のエリアを統括するエリアマネージャーを
置いています。

エリアマネージャーの主な仕事は、自分が
担当するエリアにある営業所の所長の指導
です。


その方は、ある営業所を訪ねたら、そこの
所長に、

「ねえ、A営業所の〇〇所長は凄いよ。
   あの営業所のスタッフは、全員が素晴らし
   い挨拶をするんだよ。
   スタッフに聞いたら、所長自らが一番元気
   に挨拶をするって言うんだよ。だから
   それが営業所全員に浸透したんだね。
   一度見に行って来ると良いよ。」

と話します。
話を聞いた営業所長がA営業所を訪ね、
所長の〇〇さんに

「エリアマネージャーが〇〇さんのことを
   すごく褒めてたよ。ここの挨拶がすごい
   のは〇〇所長が率先してやってるからだ
   って言ってたよ。」


そうするとA営業所の〇〇所長が、

「本当、嬉しいなあ。でもこの前エリア
    マネージャーがうちに来た時、君のこと
    もすごく褒めてたよ。
    君はアドバイスをしたらすぐに実行して
   成果を出す。彼なら営業所は売上日本一
   を出せると思うって言ってた。」


それを聞いた所長は

「マジっスか! 狙ってみるかぁ日本一。



そうです、そのエリアマネージャーは、
いろんな営業所に行っては、他の営業所長
のことを褒めまくるのです。


エリアマネージャーから直接
「君なら日本一の営業所長になれるよ。」

と言われるのと、

別の営業所長が
「君なら日本一の営業所長になれるって
    エリアマネージャーが言ってたよ。

と聞くのと、どちらが響くか というと
他人から聞かされること  の方が響くと
言われています。


上司からすると「直接褒める」というやり方
をしたくなります。

なぜなら直接褒める場合、相手からの反応が
感じられるからです。


上司「よく頑張ってるね」

部下「ありがとうございます!」


という感じです。

「褒めた」事によるフィードバックを得られ
るのは上司にとっても快感になります。


「最近A営業所の〇〇所長はすごく頑張って
   ると思うよ」


と別の営業所長に伝えても

「そうなんですね」

という反応です。
フィードバックは薄いです。


フィードバックは言い換えれば「見返り」と
も言えるかと思います。


「褒め」に対しての「見返り」を求めるか
求めないか。

効果の高い「褒め」は、見返りを求めない
「褒め」なのです。

これは「褒め」をテクニックでは無く、
本心から「あの人はすごい」と思っている
中で、自然と出てきた「褒め」なのだと
思います。


中には本心ではそれほど思っていないのに、
「褒める」をテクニックとして使おうとして
褒める上司もいます。


こういう人は「褒め」によって部下が反応
する事を期待しています。

褒めた事で部下が喜んだ。
褒めた事で部下がやる気をだした。

こう言ったことを期待して褒めるのです。


そうすると、どう言ったことが起こるかと
いうと、うまくいかなかった時に

「せっかく褒めたのにアイツは変わらない」

などという反応をするのです。



こういった「褒め」をテクニックとして
使っているのは部下にはバレます。

「この人本心では言っていないなぁ」

と解るものです。



「どうやって褒めたら良いですか?」

と聞かれるコトがありますが、私はこの
ように答えています。


「その方に関心を持つことです。」


関心を持って見ていると、いろいろな気づき
があります。
良いところも、そうでないところも見えて
きます。


見つけた良いところは、ぜひ伝えて下さい。


関心を持って見ていると、日常のことが見え
てきて、日常を評価することができます。

「彼は、ある時 ものすごく良い事をした。」

というよりも

「彼は、いつも こういう(小さな)良い
   ことをしている。」

という感じです。

そうすると相手は


「普段から自分のことをよく見ていてくれ
    ている。」


と感じます。

文章で書くと、またテクニック的に感じる
かも知れませんが、その方に関心を持って
頂ければ自然とできることかと思います。


【ポイント】
   「ほめ」はテクニックでは無く、
      本心から出たものでないと響かない。


最後に、前述のエリアマネージャーは、
自分が担当する営業所の所長を褒めまくり、
(それは本人に言うのでは無く、他の所長に
    言うのです。)
担当エリアを日本一の業績にし、そして次の
エリアに転勤していくのだそうです。


かっこよすぎますよね。
私も目指したい姿です。