おがん松のいたずら狐 | 伊豆高原 遊リゾートのちーさん

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伊東市八幡野 「おがん松」 と呼ばれていた松の木が

ありました。



やんもの村のものがたり改訂復刻版より      著 小林一之

1・遥拝の松(ようはいのまつ)(遙かに遠い所から拝むこと)または

  御座の松と言い、八幡の区岡の路傍にあり(対島村誌)


2・源頼朝が赤沢の奥野狩の催しの際に、この松の根本において、

八幡宮来宮両神を遥拝(ようはい)して武運長久(武士としての運命)

を祈願せられたと言うので、これに因み「遥拝の松」と命名せられた。

(対島村の名所と旧跡)



         おがん松のいたずら狐


むかし、八幡野の西ノ洞の近くに、チョウジロウどんと、ネギどんと、

タキチどんが住んでいました。


この三人は、秋から冬にかけては、八幡野の沖でサンマやイカが、

たくさんとれるので毎晩海へ行って、魚をたくさんとってきました。


ところで、浜から西ノ洞へ行く途中に、中畑というところがあって、

ここには、「おがん松」と呼んでいる、大きな松の木がありました。


ある日、朝早く、まだ薄暗いときでした。

チョウジロウどんと、ネギどんと、タキチどんが、汗をふきふき

イカカゴをしょって、中畑の「おがん松」までやってくると、

一ぴきの狐が松のかげから、ぴょんと現れました。



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「ははー、これが、おがん松に住んでいる、いたずら狐だな」


三人は、イカカゴのほうが気になりだしたので、急ぎ足で

歩きました。


「天狗さまも、かなわない」といわれるほど、海で働く漁師は力持ち

です。たかが、狐一ぴきぐらいで、驚いたりしません。


いちばん威勢のええ、チョウジロウどんが、雷のような大きな声

を出して言いました。


「これっ、おがん松の狐めっ、おまいは、よく、ここを通る衆を

化かしたり、悪さをしたりするけんど、おらー三人は、

おまいみたいな、糞っくらえの野郎には、だまされないど」


チョウジロウどんは、握りこぶしを振りかざして、狐をおどか

しました。

「おがん松」の狐は、威勢のええチョウジロウどんと、神さんに

つかえるネギどんと、頭のええタキチどんには得意の化かしも、

いたずらも悪さもできず、オッポを巻いてボサッカー(藪)の方へ、

逃げて行きました。


「ハッハッハッ、ざまーみろ。なあー、ネギどん、これで、あの

「おがん松」の狐も悪いことは、しないな」


「そうだな」


ネギどんとタキチどんは、ほっとしたような気持ちで言いました。

せっかく、沖でとった魚を狐にやられたのでは、なんにも

なりません。


次の日のことです。


三人がまた、イカカゴをしょって、中畑の「おがん松」の前を

通りかかると、きのうの狐が、また、松の横っちょから、

ぴょくらんと、現れました。


そして、今度は、三人の後ろに、ぴったし、くっついて、歩いて

きました。

我慢しきれなくなったチョウジロウどんは、

「この、こどー、また、おどかしてやれ」と腹の中で思いながら、

「なんて言って、やっつけるか」と考え、考え、歩いていました。


すると、狐は、一番、先っぽを歩いているチョウジロウどんの

前に、ひょいと踊り出ました。

ますます頭にきたチョウジロウどんは、きのうよりも、でかい声

を出して「この、こどーっ!」と怒鳴りつけました。


すると狐は、すっと、体を引いたかと思うと、オッポをクルリと

丸めて、とんぼ返りをして見せ、囃し立てました。


やーい やーい チョウジロウどん!


チョウジロウどん やーい やーい!


かんかんになったチョウジロウどんは、イカカゴを、うっちゃら

かして、おっかけまわしましたが、なかなか捕まりません。


やーい やーい チョウジロウどん!

ここまでおいで チョウジロウどん!


ひょいと狐のオッポをつかもうとすると、プルンと手から滑り

抜けていきます。

狐は、またも面白がって囃し立てます。


やーい やーい チョウジロウどん!

チョウジロウどん やーい やーい!


かわいそうに、チョウジロウどんは、もう、へたへたです。

狐にからかわれ、あっちゃぁ、こっちゃぁ、すっ飛びまわって、

ついに、ぶっ倒れてしまいました。


狐は、チョウジロウどんを思うまま、からかったので、喜んで

また囃し立てます。


やーい やーい チョウジロウどん!

チョウジロウどん やーい やーい!


これを見ていた、ネギどんとタキチどんは、心の底から、

このいたずら狐を憎いと思いました。

そのときです。


ぶっ倒れたチョウジロウどんのお腹の上に、狐が、ぴょんと

乗りました。

すかさずチョウジロウどんの手が狐のオッポにサッと伸びました。


「キャン!」


このときとばかり、ネギどんもタキチどんも、わっと狐に

飛びかかり、おっぺさえました。

油断していた狐は、とうとう三人に捕まえられ、縄でグルグル

縛りつけられてしまいました。


とうとう、悪い、いたずら狐を生け捕りにしたのです。


「助けてください。ネギどん!」


狐は、悲しい声でネギどんに頼みましたが、

「人をだましたり、いたずらをする悪い狐は、浜へ持っていって

焼いてしまおう!!」ということになりました。


狐は焼き殺されては、大変と、大暴れしましたが、ガッチリと縛った

縄は、どうしても抜けません。


狐がバタバタ、もがいているうちに、とうとう浜に来てしまいました。

ネギどんが、小石で炉を造り、タキチどんは、タキギを集めました。


さあ、いよいよ火がつけられ、もうもうと煙が出てきました。

狐を火の中へ、ギューと廻して、突っ込んだときのことです。


ガッチリと縛ったはずの縄が、プツンと切れてしまいました。

縄のほどけた狐は、またつかまえられたら大変と、一目散に

中島山の方へ、すっ飛んで行きました。

ようやく、大丈夫というところまで逃げると、大きな岩の上に、

ぴょーんと飛び乗って、


おそろしや ネギどんや!

いぐじり焼きの チョウジロウどん!

二度と ふたたび いきあーまい!


と叫んだと言います。

この日から、「おがん松」の、いたずら狐は、いなくなりました。

村の人たちは、チョウジロウどんのことを

「いくじり焼きのチョウジロウどん」と呼んで、

大変に感謝したということです。


現在は松はなくなりましたが、ここがおがん松(拝み松・遥拝の松・御座の松

と言われている所です。
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