97年に香港が中国に返還された歴史的瞬間から間もなく12年。あの当時の騒ぎが懐かしいですね。当時、香港人が我先にと海外への非難先を確保するために動き回っていたのは、紛れもなく中国への不信感そして恐怖感からです。そして一国二制度が実現し少し落ち着きを取り戻してくると、海外に逃げていた香港人達は少しづつ香港へと戻ってきました。そして香港と中国間の人の往来が増えるにつれて香港人が感じ始めたのは、中国人のとてつもない傲慢さと信じられない非常識な言動への怒りでした。それはまさに同時期に日本人が自由主義経済へと舵を切った中国へと進出していった際に感じたことと同じだったはずです。
しかし数年が過ぎ、中国に富裕層が生まれ、常識が少しづつ通じるようになってきました。そしていつの間にか香港は中国の資本なしでは存在しえない立場へと変わっていったのです。香港に限って主従関係は完全に逆転したと言ってよいでしょう。そうなると香港人は何をするようになってきたか。一言で言うと今彼らは中国人と同じことをするようになってきているのです。日本人から見た以前の香港人は、中国でのビジネスをする際の優秀な緩衝材でした。直接中国人と交渉するとリスクの高い案件を間に香港人を挟むことで、とりあえず国際的に常識的な範囲の商取引にまとめることが出来ました。しかし既にその方法が通用しなくなってきています。
以前からどっぷりと中国国内に展開している日本企業は当然の必要悪として現地の悪習を受け入れざるを得ないと思いますが、そうではなくあくまで中国を世界の中の一つの市場として見てまともな取引を行いたいと考えている企業にとって、この香港人の中国人化は大変深刻な問題です。何が言いたいかというと、つまり香港人が中国人の盗作を手助けする環境が構築されてきているということです。現在香港人から何らかの物品の購入を打診された場合、それは即その製品が彼らを仲介にして中国で複製される意図があると見た方がいいでしょう。そういう裏の仕事を極普通の香港人がこぞって始めているのです。
台湾と違って香港人は漢民族です。従って価値観の点で見れば彼らと大陸中国人との間に大差はありません。香港は長らくイギリスの植民地ではありましたが、当然ながら西洋列強の植民地支配は日本のそれとは違って原住民と支配者との関係は極めて希薄です。つまり香港においても昔ながらの漢民族の価値観は今日まで脈々と保たれてきたのです。一応は西側陣営に属し民主主義と自由主義の影響下にあった香港。したがって香港人は自分達が先進国と価値観を共有していると思い込んでいます。しかし実際にはかなりの点で彼らの発想は恐ろしく第三世界的です。そして香港ならではの価値観、つまり金と飯が人生の全てといういかにも漢民族に合致した風習があるのです。
香港人が中国への返還を恐れた最大の理由は、政治的なものでも倫理的なものでもありません。それは自分達の財産が奪われるかもしれないという唯一点です。そして安全が保障され更により多くの富が彼の地に従うことで得られるとなれば、当然今までの方針は180度転向します。返還当時、香港人は中国人が自分達に中国人であることを強制することを嫌いました。我々は中国人である前にまず香港人であると。しかし今それを言い切れる人がどれほど残っているでしょうか。むしろ彼らは喜んで自分を中国人だと呼び始めている。私はここ数年そうやって反対側に歩き出した人達を多く見ることになりました。
現在日本ではNHKの台湾報道の問題もあって台湾にばかり目がいっていますが、香港がもはや我々の味方ではなくなってきているという事実を伝える情報はあまりありません。金こそが全てという香港独特の価値観が中国の支配によってこれからどのように利用されていくのか、注意深く警戒しなければならないと思います。そしてまたこの香港で起こっている変化が規模こそ違いますが日本でも起こり始めている。金のために今まで築き上げてきた良識を全て捨ててしまう人が現れている。それは最終的には日本の中国化を招くものであり、日本人が世界に誇ってきた礼節や正義感を捨て去り、中国人と同じように行動するようになるということです。
今はまだ香港の中国化はそれほど表面化していません。しかし数年後にはこの問題は日本を震撼させていると思います。