今年も残す所あとひと月になりました。
総決算なんて云いますが、良くも悪くも数字が気になるほど若くもないし、またロクに積んでもいませんので、自分は淡々とした師走を過ごしてます。

過剰な力みも弱気も必要ない稼業と割り切れば、見苦しい気持ちの振り子も静かになります。
何の取り柄も無い自分ですが、案外こんな所が長年しのいでいられる適性の一つなのかもしれません。


欠損といえば、とある20年来の知り合いがいます。
そろそろ還暦を迎えようかというオッサンです。
少しだけ枠外の生き方でしたので、松葉杖が手放せません。
身体のご不自由なお年寄りは沢山いらっしゃいますが、この人は不自由というより、無いんです。
膝から下が欠損です。

他は至って元気だし、欲深いし助平なので悲壮感はまるでありません。
でも時々救い難いほど行儀が悪いので
「50m走でわしに勝ったら1万くれてやる」
とか意地悪を言ってやります。
顔真っ赤にして怒ります。

世間一般に欠損とは、文字通り痛くて重たい意味を持ちます。
欠損と聞いて、皮算用の仕事量に届かない金額としか思いつかないのは、浮き世離れしたガキプだけです。

幾度かの切迫した人生の場面で、このオッサンは自ら欠損を選んだり選ばされたりして、不器用に不細工に永らえてきたのだと想像に難くありません。

もちろん自業自得ゆえの欠損と見るのが自然なのかもしれません。
しかしそんな小賢そうな正論も、身体の欠損という圧倒的なリアリティの前では、ちょっとかすんで聞こえます。
世の中の人全てがガキプのように賢いわけではありません。
頭が足らない分、他で支払った結果が、等価交換の膝から下です。

しかしこのオッサン、憎らしい程ツラの皮が厚くなり過ぎて、約束なんかほとんど守りません。
自分のような苦労足らずはしょっちゅう騙されます。
先月の利息を取れないばかりか、コンビニ弁当と煙草まで買わされました。
悔しいです。
オッサンの障害者手帳をぶん取って市役所に行き、嬉しそうに金を受け取ろうとして通報されたのは10年前のちょうど今頃です。
悔しかったです。


文字通り地に足が付いてない、そんな世間から弾き出されたオッサンの欠損は、永遠に収束しないと思います。
でもその無いはずの膝から下が、オッサンのしたたかさを支えている気がしてなりません。
昨日ユ〇クロのダウン買わされました。



悔しいです。