居酒屋伝道師の百名酒場#37 「長野県」松本 葉月 | ★☆日本の酒場をゆくのインフォメーション☆★

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池波和彦の活動を載せていきます。

↑至福の百名酒場認定店

 

↑すべて天然のキノコ鍋は貴重品

 

↑最後はしゃぶしゃぶにして食べ、〆にうどんがつく

 

↑ホタテの刺身で燗酒をクイー

 

↑コムソウのおろしは主人一押しの名物

 

↑お通しの茄子と豚肉の煮物は家庭的なあたたかみがある

 

↑素朴なきゅうりの酢の物がまたいい

 

↑お馴染みのアサヒスーパードライはいつもの味

 

↑長野地酒「大雪渓」の燗で旅酒のはじまりはじまり

 

↑古い佇まいが目を引く松本の老舗

これ以上のきのこ鍋は食べられないだろう
季節を先取りする居酒屋はもう秋だ。
海山の収穫がそろう食欲の秋に、ぼちぼち燗酒が恋しくなる。
山国の名物は、きのこだが、きのこのうまい居酒屋となると難しい。
きのこの王者は言わずもがな、松茸だ。
秋になると雑誌あたりで必ず「国産どこそこの松茸を、豪華に食べ尽くす」などと自慢記事が出るが、さもしいですな。
あれは編集者が取材費でできるから企画する。
そもそも高価なものを食べたことを口に出して言う人物にロクな者はいない【くたばれグルメ評論家】。
取材費で高価なものを食べるのは後ろめたく恥ずかしいことなのだ【ほとんど怒っています】。
京都は松茸を食べる町で、料亭割烹はもちろん秋の献立の主役、どんな居酒屋にも必ずある。
居酒屋好きは季節の品を注文するのが粋ゆえ、私も注文する。
そのとき大切なのは「松茸を話題にしないこと」だ。
まして「これ、国産?」などと尋ねるのは野暮の骨頂で、値段で判るでしょう。
あたりまえに注文し、さりげなく食べて終える。
松茸なんて普通に食べるものという姿勢を保つ【のだ】。
ついでに書けば「松茸の土瓶蒸し」は、盃でおつゆを味わうもので、具は箸をつけない。
若い頃に先輩に連れられた店で食べ方がわからず、つまんだら叱られた【もちろん食べてもいいんですよ】。
松本駅から徒歩約二〇分、上土・下町会館近くの至福の百名酒場(葉月)は、すべて天然物のきのこを出す居酒屋である。
松茸にならぶ名きのこ・舞茸の天然物は松茸以上の貴重品だ。

主人はきのこ採り名人で、毎朝山に入る。

「マツタケも食べたければあるよ。でも高いからおすすめしないけどね」と、主人はきっぱり。
名物の「きのこ鍋」は、クギタケ、リコボウ、マイタケ、ナメコ、シロシメジ、コムソウ、アミタケ、ハナイグチの八種。
何も言わずに座っていると、ガスコンロの上に鍋が乗せられ、客は煮えるのを待って食べるだけだ。
きのこ鍋コースは三千五百円。
昔ながらの、つまり昭和の居酒屋の雰囲気込みで、この値段は安いと言っていいだろう。

メニューはない。

長野県松本市大手4-10-12
0263-35-8885
17時~23時
不定休

筆者「日本の酒場をゆく」居酒屋伝道師