会社帰りのとあるビルの前

重夫(54)と留美(28)が人目を避けるように

待ち合わせをしていた。

今宵もまた許されない逢瀬を楽しむ。

端から見れば親子とでも思われるだろうか…

時間に少し遅れたのに

悪びれた様子もなく満面の笑みの留美。

今夜こそ終わりを告げようと覚悟の重夫。

軽い足取りの留美とは対照的な重夫だが

優しい口調で今日一日の出来事を

語りながらどこかのお店に入ろうと

夜の道を並んで歩いていた。

今夜はだいぶん冷えるようだ…

コートの襟を立て縮こまった留美の肩を抱く

そんな時に見つけた店。

今夜はここにお邪魔しようか…

「いらっしゃい」

狭い店内にはポツリポツリと客がいる

店を入った左側の

他の客から少し離れた席に

向かい合って座ってみたが、

あらためて重夫の左側の席に

角を隔てて座りなおした留美。

しばらくして出てきた酒でお互いに

グラスをぶつけ合う。

いわゆる乾杯というやつだ。

なんのために…誰のために乾杯をするのか

わからないがこの些細なやり取りが

二人にとっては幸せな瞬間なのだ。

愛想のない店員が注文を聞きにくる。

とりあえずつまみを3~4品注文する

他の客とも店員とも殆ど交わる事のない。

この席なら二人きりの

ある意味では大切な話ができる。

酒を2杯から3杯…4杯とすすむうちに

愛しくなった留美の手を握る重夫。

わかってはいるんだ。

やめなければならない思いと

やめたくないという思いが交差する中

重夫はポツリと話始めた…

「もう終わりにしよう」

突然の言葉に返す言葉のない留美。

いつかこんな日が来ることは

頭でわかっていても、

それが今日ではないと願っていたのだ。

今まで握られていた手を留美の方から

強く握り返す。手のひらに伝わる重夫の

温もりを感じた瞬間、堪えていた涙が

溢れてくる。

「嫌よ…そんな突然言われても…」

頭を垂れ泣いている留美の髪を撫でる重夫。

恋は盲目。

もう誰に見られたって恥ずかしくはない。

やっぱり俺には留美が必要だ❤

そう思いながらも頭の中をよぎる妻、

敏子(49)とひとり息子の重昭(19)の存在。

去年から通い出した東京の大学。

サラリーマンの重夫にとって

毎月の仕送りも結構な負担だ。

少なくされた小遣いの中で不倫をする

余裕なんて無いことはわかっている。



嗚呼、また先へ進むことができないのか…



「会計をお願いします」


手渡された会計伝票を見て重夫


「留美ちゃん3000円」


恋は盲目・・・



端から見れば親子とでも思われるのだろうか…





あー疲れた汗汗汗


何処の店の出来事で

フィクションなのか

ノンフィクションなのか…

考えるのはあなた次第ひらめき電球