「でも、あの人が本当に好きだったのは自分一人」
「一人…」と私は同じようにつぶやいた。


赤いコートの18歳の少女は、白い冬に阿寒湖に向かい、雑木林の中でアドルムをあおり倒れた。人里を離れ圧倒的な自然の静寂に包まれて、短く駆け抜けた生はそのまま凍結した。


( 阿寒に果つ )


 時間って何か?

 頭が作った思い

 脳が作った思考

 つまり心が作ったもの 


 死とは何か?

 頭が作った思い

 脳が作った思考

 つまり心が作ったもの


 形のあるもの

 有為

 作られたもの

 生滅変化するもの


 「無」
 そのものは
 どこまでも考えられない
 「無」
 はない
 無=死
 などあり得ない

 のではなかったのか


 時間軸は

 過去現在未来という

 心によって

 作られたものだ


 形のないものを

 時間軸上の未来に

 設定するということが

 矛盾なのではないか


 「無」、ないものを

 無為

 作られてないものを

 心が時間軸の未来に設定した


 未来のどこかに

 心によって設定された死

 心によって設定した未来に

 形のない無を

 即ち死を勝手に設定した

 

 形のある世界に

 形のない死を

 有為の世界に無為を

 探しても

 見つからない


 無というものを

 死というものを

 無いものを

 時間軸上の未来に

 設定するのはおかしい


 私たちの心が作った

 時間軸上に

 無、死が在る

 というのが間違い


 私たちが持つ

 時間の概念で

 無を死を

 とらえられるはずはない

 有為の世界に無為を




 昔見た映画です

 生と死と芸術の感受性

 

 「でも、あの人が本当に好き

 だったのは自分一人」

 人里を離れ圧倒的な自然の

 静寂に包まれて、

 短く駆け抜けた生は、

 そのまま凍結した。

 

 有為の世界に

 無為を探したのか?

 神を愛する道を

 絵画に芸術に

 見つけられなかったので

 死を望んだのか?


 本当に愛したのは自分一人

 しかし

 その若さ故に

 してはいけないことをした

 阿寒に果つ