25歳の男性から連絡があった

「魔女コさん、すぐに…すぐにもう一度お会いしてくれませんか?」

彼にあったのは19歳の時…

おかあさまが反抗期で困り果てて引っ張られて連れてこられた男の子でした

当時、二人で話した時には素直だけど目も合わせない少年だった

わたしも慣れていたし淡々とターニングポイントの年表を伝えていた

彼は聞いているのか聞いていないのか目を下に向けたままだった

ある年代の所でわたしの声が止まった

彼もわたしを上目遣いで見た

わたしも姿勢を正し…彼の目をみた


「今からわたしが言う年齢になった時、他の年代は聞かなくていいから、今から言う年齢になった時のことは真剣に聞いてくれますか?」と言うと

彼も座り直しこちらに胸を向けて聞く姿勢になった


「25歳の時、空を見て飛びたくなったら手を掴みなさい。必ず差し出された手を掴みなさいね」

彼は両手を見てわたしに手?と言わんばかりにこれ?と差し出した

「そうです。その手で掴みなさいね…わたしもなにがあるかはわからないけど…そうミエナイモノが言うんよ」

彼は首をかしげながらも小刻みに頷いた





そして25歳の彼がそう連絡してきた時にはすっかりわたしはその事は忘れていた

予約時間に彼が来た

「魔女コさん…お久しぶりです。あのときは失礼な態度すみませんでした。」

彼は立派な大人になっていた

「いやいや…いいのいいの、どうしたんですか?慌てたように連絡くれたけども…」

「25歳の時に空をみて飛びたくなったら手を握れって僕に言ってくれたの覚えてますか?」

「………忘れてる…ような…少し覚えてるような…笑」

「言ったんですよ!僕に!

最初はなに言ってんだ?ってわからなかったんです……今25歳なんです!その意味がわかったんです!!」

前のめりになって話す彼は目がキラキラしていた

「なにかあったんかね?」

「なにがあったもなにも………実は母を半年前に亡くしました。脳に腫瘍ができてだったんですけど…
それからすぐに僕は働いていた会社がコロナの影響で倒産し、付き合っていた人にも最近振られ…

……生きてることが辛くなってしまって…
高い所で下が見えないくらいのところで飛んでやる!と思ってのぼったんです。
あまりにも夕陽がきれいで空が広くて……あぁ最後にこんなきれいな景色で○ねるなんてそれだけでも良しとしよう…なんて空見上げて足揃えてみたんです。

魔女コさん…不思議と怖くなかったんですよね…
そして深呼吸して行こうと思ったら涙が止まらなくなって……泣きながら両手広げて飛ぼうとしたんです

空を上に見て…前に体重をかけた時…僕の左手を誰かが触ったんです!
そして、右手の平にも指のようなものの感触がしたんです
その瞬間……魔女コさんの鑑定室が頭に出てきて…

空をみて飛びたくなったら手を握れ…を思い出して
左手と右手に触るものを両方でギュッ!と掴んだんです

そして気づいたら階段の下にいたんですよ……」

わたしは目を丸くした……

「え?助かったってこと?」

「…そういう…ことだと思います…

で……僕……定かじゃないけれど左手はおかあさんで右手は魔女コさんの気がしたんです」

「…??え??わたし??お母さんならわかる!息子を助けたかったんだもの!きっと!なぜ?わたし?笑」

「いや…確実にあの感覚はそうでした。

そして思い出したんですよ…魔女コさんが鑑定してくれていた時……なにが起きてもいいように守りを込めとくからって手に息を吹き掛けて紙に何かしてたこと!」

わたしも思い出した

「あぁ!!!あれか!!あれやったんか!!わたしよくやった!すげえ!!!」

「魔女コさん…ヤバイですよ!ほんとに!」

「イシキの式神さなぁ~いやー何年たっても働くんだなぁ~なにしろ良かった!!もぉーーーそんなことしたらダメ!!ほんとに!お母さんが救ってくれたんだがな!!!」

「はい……本当にバカだなぁと思ったんです…自分勝手だなぁってあとから思いました。2人に生かされました」

「いやいや…お母さんとミエナイモノが生かしてくれたんだなぁ~辛いことも糧に出きるときが来きます」

そう励ましながら和んでいると

彼を呼ぶ場所が頭に出てきた

すぐに伝えて彼は調べた

写真と共に行ってきました!の報告をもらった翌週…

とても条件の良い会社に就職できたそうだ
そこの新入社員会で隣に座った子ともいい感じなんだそうだ…笑笑


お母さんが助けた息子

もう一つはわたしの手じゃない

未来の彼の手が彼を救ったのだ