大きな吹き抜け
ワインが沢山詰まった地下室、
家の中はすべてパイン材
大きな窓から庭と裏の雑木林が見える
高台のお家
大好きなバラを彼が作った
レンガのアーチに絡ませ
夏は美しかった。

冬は庭の真ん中に
Xmasツリーになる木を植え電飾で飾った。
雪の降る日はとりわけ綺麗だった。
子供達と笑ったり、ピアノを弾いて
歌ったり、ボードゲームをして
遊んだ。楽しかった。しかし
未練なんかなかった。

彼といて、私にあたわることは
しあわせもだったけど
苦しみも同じだけあった。

家庭に対して思い入れがあった私は
彼の裏切りは許せなかった。

愛って、互いにひとつと思える相手と
安心と心底の信頼で
結びつかなければ
人として生きていってはいけないと思っていた。
自論。

もう散々苦しんだ。
妥協はしたくない。
ましてや28のとき
スピリチュアルに目覚めた頃から
魂がひとつに溶け合い
信頼と尊敬、信じ合い
大切に思い合える
そういう相手とつながり
生きていく喜びを求めて行く
ということが人として生まれてきた
第一理由だと思っていた。

だから、彼にあったとき
本当に好きだったし
分かり合えるなにかが互いの中に
存在するのがわかっていたから余計
許せなかったのだと思う。

仮に許して愛し続けても良い
しかし、壊れるのは私だけではないと
おもった。

また、私は母で
女か母かと問われたら
私は母で生きます!と
答える人間だから
まず、子供たちを守ろうした。

もちろん、彼といたから
いじめられるわけではない。
しかし慈しむとかが彼にないのであれば
偏った愛しかもらえなかった
私の子供たちがかわいそうだと思った。
ならば私が二人に百パーセント
愛を注ぎたいと思った。
彼も彼で自分の子に
百パーセント注げばよいじゃないか
そう思った。

だから、2人を抱え
また、生きる事に決めた。

また、小さなアパートに引っ越した。

なんども彼からは打診があった。
戻らないのか
戻れないのか
まるでストーカーのように
彼の車が、アパートの近くに停まっているのを
見ながら、心を鬼にしている自分がいた。

新しい仕事。
探して、見つかると
前職が彼の会社だから、内定は決まるのに
取り消しになる。
彼が私を悪く言うから。

私の身内たちはみんな堅い仕事で、
親戚一同しっかりしている。
就職も住宅の保証人も
なにも困ることは無かったのに
戻ってきてほしい彼が
ことごとく私の就職を邪魔をした。

談判し、彼に一切の手をださないように
言った。バツ悪そうに黙っていた。

持ってる資格と
人脈のすべてを使って
やっと、大手の会社に
契約社員だが決まった。
よし!四月から働こう!

そして
運命のある日
彼がどうしてもの用事で
会社に来て欲しいと言う。
書類を書かなくてはいけないし
行く事になった。

車で向かおうとしたら
息子が行方不明
鍵をもたせてないから
困るなと探していた。
あちこち探したが居ない。
もしかして?と
本屋に行くと、ゲームのコーナーで
対戦ゲームをしている。

慌てて乗せて家までの道すがら
初めての道で注意を怠った。
止まれをしっかり止まらなかった私。
スピードは出ていないが
相手は違った。徐行の道を60キロ以上
だしていたらしい。
軽ワゴンの私の車の横っ腹に
突っ込んできた。

瞬間左側の角に
頭をぶつけたのはわかった
しかし
私は横倒しで倒れ
車は橋の欄干で止まっていた。

息子が!

大丈夫?!悲鳴に近いくらいの声で叫んだ‼️

大丈夫だよ、ママ‼️

良かった、生きていた!

周りから人がわらわら寄ってくる
車はガチャガチャに壊れてる
屋根のルーフからガラスが降ってきている

横倒しの車の中から
息子は割れた天井ルーフからそとにでた。

私は出られない。

周りの人が
動かないで!1回転半したんだから!
額から血が出てるんだから!
動かないで!と制する。 

救急車のサイレンが
遠くから近づいて来た
消防車も来た。
車の中から救出され救急車に運ばれるあいだ
なにが起きたのかわからなかった。
問われる名前や住所や
ただ義務的に話した。

彼には救急から電話をしてもらった。


頚椎捻挫
足の打撲、擦傷
肩、腰の捻挫
左こめかみ部分の裂傷

息子は
車がぶつかる直前に
車のドアの上の取っ手をつかんだそう
クルリと1回転半しても
其れで体をささえられたから
怪我をしなかったそう
軽くコツンとぶつけたそうで
不幸中の幸いだと思った。

病院で、なんとか処置が済んだ頃
彼が病院に飛び込んできた
顔を見た瞬間、ほっとした顔をして
お前ならいつかやると思っていたと
アスペルガーらしい
優しい言葉をかけることなく言った。
そして、大事な案件があると
仕事に向かっていった。

暫く、寝ついた私は
体を動かせずに首のカラーをはめて
療養することになった。

新しい仕事場には行けなくなったことを伝え
ただ、ひたすら、人生の疲れをとるかのように
一週間 寝て過ごした。

なにも考えず
泥のように
ただ、寝た。