使用時には必ずノックにて
ある日いつものようにトイレに向かうと・・・、
赤々と「使用中」の札が個室のドアの外にぶら下がっていた。
ついでに言えば、ドアは目が覚めるほど青い。
このトイレがある店舗は、この個室しかトイレがない。
用を足したければ、このトイレにすがるしか他に選択の余地など全くないのだ。
幸い私の用件は厠貼り紙チェックのみだったので、これと言ってコンマ一秒を争うような下半身の一大事もなく、「使用中」の札がぶら下がっているならば、それだけを撮ってすごすごと店内に引き返すのみだった。
そしてしばらく店内で時間を潰しつつ、「なんだか人が何かしら用を足した後のトイレにすぐ直行するのも気が引けるな」と思いながら、トイレの方に目線をやるも、誰かしらが出てくる様子がない。
さらにこちらの神経を配りつつ時間を潰すも、誰も出てこない。
こちらも長期戦だが、個室の中の人も長き長き戦いを奮闘中なのだろうか?と思った。
私では到底計り知れない孤独な戦いが今、正にあの青いドアの向こうで繰り広げられているのではないのかと。
しかし待てど暮らせど、なんなら店内の商品配置まで覚えても誰も出てくる様子がない。
もしやと思い、もう一度先ほどのドアの前に立てば、
「おねがい
ただ今、カギ調整中のため
使用時には必ずノックにて
ご確認をお願い致します。」
先ほどの「使用中」の札の上にあった小さな貼り紙に目をやる。
目をやるも、何を言っているのかが瞬時に理解出来ない。
「ゆで卵か生卵か割ってみてご確認下さい」ということか?
正にDEAD・OR・ALIVE。
鍵が調整中だと、どうだと言うのだ。
もしかして鍵がかからないとでも言うのか?
トイレの個室と外界とを完全に遮断すべく存在するトイレの鍵、それがこのトイレに限っては、その役割がもしかしたらこの「使用中」の札のみだと言うのか?
そんな鍵がかからないかもしれないトイレで、たったお札一枚、そんな脆く儚い城壁(札)だけで安心して個室で用が足せるものか?
他人に絶対見られてはいけない羞恥の最上級の場を、紙切れ一枚に鉄壁ガードしてくれるだけの効力があると思っているのか?まるでキョンシーのおでこのお札のように、これさえ貼っておけばと全身全霊身を任せるなんて私には出来ない。それにそれは札にとっても責任が重いというもの。
もしかしたらこのドアの向こうで、誰かがこれ以上ないってくらいの不安な顔つきで、必死にドアノブを持ちつつ自分なりの仕事をこなしているかもしれない。「早く済め、早く全部出て来い」と・・・。
<クリックで拡大されます>
正に手鍵。
あってないようなもの。
そんなこちらとしても出来るだけ遭遇したくない甚くビジーな状態を想像しつつ、これだけ誰も出てこないのなら札が「使用中」になっているだけで、中は空室なのかもしれないという案ももう一人の私から提案された。
ともかく「使用時には必ずノック」と書かれているんだから、素直に従いノックをしてみる。
中に人がいたらごめんなさい。只でさえ、あれこれ忙しいと思われるときにごめんなさい。
どこかで"こだま"を期待しつつ、「ドアノブを抑えるのに両手が塞がっているのでは?」と、まだ先ほどの心配を引きずってみる・・・。
しかしどうやら私の中のもう一人の自分の意見が正しかったようだ。
「南無三(なむさん)!」と開けてみれば、そこに人影はなく無人の個室があるのみだった。
・・・・・紛らわしい札だこと。
そしてドアの内側に目をやれば、
「レバーが開を指していれば
鍵が開いています。
レバーが閉を指していれば
鍵がかかっています。」
ある程度の年数、日本に生まれ育った者なら誰でも知っている常識をまじまじとここに改めて提示。
ちょっと分かりづらいの補足しておくが、このレバーがこれまた必要以上に大きい。
よくあるスイッチの小さなひねり型のものとは比べてはならないくらい。
おのずと「開」と「閉」の文字も結構な大きさだ。猫の額以上の大きさだ。
そんな目を離すことの出来ない立派なレバーと「開」と「閉」の文字の存在感。
でも言っていることは「だからなんなの?」止まり。
これで「開」と「閉」が逆だと貼り紙の存在価値もグーンと上がるというもの。
ここのトイレでは鍵の調整が上手くいかずに、逆に「開」の方にすれば鍵がかかるんですと・・・。
「開」で閉めて、「閉」で開く。
通常のように「閉」にして安心していると、とんでもないことがおきますよ。
あなたの身にも、知らずにドアを開けてしまった人の身にも・・・。
ならば面白かったのに・・・。
ともかくすごく低年齢のお子様にも分かるようにと「開」と「閉」の解説でした。
そして個室内部の壁には、
「紙づまりの原因となるため、便座シートの使用を一時中止させていただきます。」
とのこと。
つまり詰まったんだな。
何度か実際詰まってしまったが故に、このような貼り紙が存在するんだろう。
しかしそれ自体が細長い理由は私は知らない。
便座シートって普通使用後に一緒に流すけど、それさえ流せない水流のトイレって、なかなか大きな物を排出出来ない便器ですな。
小まめな水洗レバーの活用を。
その他には、
「禁煙
NO SMOKING
健康増進法の施行に伴い
当店内は終日禁煙とさせて
いただきます。
皆様のご理解とご協力を
よろしくお願いいたします。」
今まで火災報知器の誤作動を招くために禁煙という貼り紙は幾度となく見てきた。
しかし「健康増進法」という単語は貼り紙の中で初めてみたぞ。どうも、初めまして。
そんな「健康増進法」をみんなの辞書のWikipediaから抜粋させてもらえば、
「健康増進法(けんこうぞうしんほう;2002年8月2日法律第103号)とは、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された法律。国民の責務として、健康な生活習慣の重要性への関心と理解を深め、生涯に渡り、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならないとしている(第2条)。医学的証明のない健康食品における効能の表示など、誇大広告を禁止しているほか、第25条では、たばこ(受動喫煙)の防止を取り上げている。」
何事もやばくなってからあれこれ言ってくる、踏み込むまでの第一歩の遅い日本国だけど、これも同じようなもの。どうやらタバコに関してはこの第25条にバッチリ当てはまっているようだ。
タバコを吸わない人が喫煙者の吐き出す、副流煙により健康に害をもよおしてしまう受動喫煙を防ぐ案には私も大賛成だ。私は一切タバコは吸わないし、依存するなら別のことに依存する。
あれだけ国を挙げて吸えよ吸えよとしておきながら、今更健康に悪いから吸っちゃ駄目よでは、あまりに矛盾し過ぎている。簡単にひっくり返るオセロのコマか?どうせ両面黒なんだろ。
しかもそういう建前を立てつつも、まだ売っているわ、そこから税金取ってるわと矛盾点なんて当に通り過ぎてて、どうやら狸以上に本当に人間って化けることが出来るんじゃないのかと思うようなことが平然と行われているので納得いかない。
吸わない者としては「禁煙」の場が増えるのは大変嬉しい。しかし中途半端なことばかりなのがどうも困っちゃうのよ、もう。
そしてここのトイレでは健康増進法の下に店内も含め、トイレ内も禁煙ということらしい。
そういえば新幹線などもどんどん禁煙車両が増えて、今度は全席禁煙の車両も走り出す。
ますます喫煙者の方々は不甲斐ない想いを抱えることだろうが、どこか魔女狩りのような匂いもする。
せめてタバコに代わるものを開発するなりして、そこから新しいタバコ税も搾取すればいいのに。
ただ押し付けるように、「吸ったら悪い人だかんね」と世間から絶対悪視されても、元々依存性のあるものなんだし喫煙者の方々も急に止めれないはずだ。
もうみんな「小梅ちゃん 」食え。
多分、パチンコ屋の店員には当分「健康増進法」が適用されない。
そして個室の外に出て、先ほどの札をひっくり返す。
「トイレをご使用の際には、このプレートを
裏返してください
ご使用が終わられましたら、元にお戻し
ください」
これがね、これがね、これが実行されていたら、もうちょっと早くこのトイレに突入していたところだ。
とてもアナログチックかつ、利用する人と人のバトンのようにぶら下がる札。
やってることはかなりどうしちゃったの?といった感じだが、こんなところで小さなコミュニケーションが生まれています。
ちなみに私が使うときは、練達バトンが「使用中」のまま断絶されていたことになる。
こういう札って、子供部屋にぶら下がっていたりするよね。
勉強なんてあまりしない「●●くんの勉強部屋」とか。
今更の鍵の説明、便座シートの流れない水流、店員のためを含む健康増進法の適用、そしナイストイレコミュニケーションアイテムの「使用中」の札と、ちょっといろいろ難があるトイレでした。
もしかしたら鍵がかかっていることを表示する穴の色が変わらないんじゃないのか?という難点も考えられる。それだと「使用中」の札の存在も必要表示となるんだけど、私が中に入って鍵をかけてみたところで、外から確認しようがないもんで真実は定かどうか不明です。
座っていたら、時間が経つと共に自動的にレバーが徐々に上にと、「閉」から「開」へと上がって行きドアが開いてしまう仕組みでも面白かったのに。
早便強要、もしくはレバーを押さえ込むのに腕力が必要とされる。
「使用中」の札、トイレ以外にも使えそうだ。
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