


この猿くんは、5日前から、とあるお宅の縁側に現れたそうです。
まんまると太った、人なつこい、そして何故か、柔軟剤のようないい香りのする
子猿だったので、たちまち、地域のアイドルとなりました。
がしかし、この縁側のお宅に住み着いた上に近所の畑を荒し回り、
可愛い可愛いといいながらも、迷惑な存在となりつつありました。
そこで、途方に暮れたそのお宅の方から、「有害鳥獣」として処分して
欲しいという連絡があり、私たち担当職員と、猟友会が出向くこととなりました。
しかし、写真を見ていただいてわかるとおり、
びっくりするほどの人なつこさです。
私の背中におんぶされたり、へそ天で、お腹さすって!・・・とくる
ほど、めちゃくちゃ可愛いのです。
しかし・・・・・。
そう、猿は狩猟鳥獣ではありません。
通常は捕獲などできません。
捕獲されるときは、有害鳥獣と判断されて、
山へ放獣されるか、殺処分となります。
しかし、今はどの地域も猿被害は深刻で、
猿をどこかの山へ離すことは、実際には難しいことでした。
また、猿は、許可さえあれば、一応、飼うことができます。
幸い、私たちの県では、許可は難しいものではなく、ちゃんと手続きをすれば、ペットにもなりえます。もちろん、飼うことは大変ですが。
地域の方に、「みんなで地域猿として可愛がってみては?」と提案したものの、
やはり、理解は得られませんでした。
それから、必死にみなさんにすがる思いでその場からいろんなツテを使って方々を探しまわったところ、
「猿回し」をされている方から連絡が入りました。
「殺処分してもいい」と言っていた地域の方々も、涙を流して喜んでくれました。
本当に本当にありがたいお話でした。
いつか、彼が猿回しの芸人としてデビューする日が来たら、
地域のみなさんと一緒に必ず会いに行きます!と約束しました。
・・・・・
でも、みなさん、今一度考えて下さい。
犬にしてもネコにしても、役所へ持って行くと、どうしても
やむなく殺処分という選択肢が現実としてあります。
ましてや、有害鳥獣ともなればなおさらです。
犬やネコは、まだもらい手を探せば見つかります。
でも、興味本位で飼っている、今回のような猿くんなどは、
そのもらい手すら見つかりません。
今回のケースは、おそらく、「違法」で飼っていた猿を
遠くから捨てにきたものと思われます。
その証拠に、近くの道を車が通るたびに、猿くんは、キュンキュン言って
見つめていました。
私たち、有害鳥獣担当者は、同時に自然保護の担当者でもあります。
5日も餌付けをしてしまった猿は、山へ返してもきっと生きられません。
ましてや、それまで飼われていたと思われる猿はもっと生きられません。
興味本位であれ、一度飼ったのであれば、ちゃんと最期まで面倒をみてください。
その覚悟がないのであれば、例えば、山道などで親猿とはぐれてしまったかわいそうな猿だから・・・などの理由で、家には持って帰らないでください。
本当に、今回は特別な例でした。
でも、これからもこういうことは起こりえることです。
お願いいたします。何度でも言います。
ちゃんと最期まで面倒をみてください。
という、有害鳥獣の話、でした。