IWC OCEAN BUND

1986年出荷の Ref.3509

東京都内のCC店さんで販売されたようです。

 

1986年製ですと、オリジナルは Cal.375.2 が搭載されていたことでしょう。

この個体のように、Cal.375.21 が搭載されているものは、

後年、IWC シャフハウゼンでムーブメント一式の交換を行っているものになります。

もう一つ、1986年製 Ref.3509 は、IWC シャフハウゼンで 1986年に組立てられたときには、Ref.3501 であった可能性があります。

裏ブタの裏側に、ケース番号と Ref.番号の刻印などがありますが、その個体の部品で交換されることがない唯一の部品が裏ブタになり、この個体はおそらく、

3501 の 01 を削って、その上から 09 を再刻印されていた個体であると想像します。

これらは、IWC OCEAN BUND にまつわる2つの問題、1つは、ケースとストラップを接続する構造の問題、もう1つは、IWC Cal.375系 にまつわる問題でした。

 

・時計本体とナイロンストラップ接続の構造的問題

日本語で第1から第3世代または、1ピン式、2ピン式、貫通式1ピン式、海外で GEO.I GEO.II  GEO.III と称される接続ピンの構造ですが、この Ref.3509 は、第2世代 2ピン式 GEO.II です。

1984年の制式採用から Ref.3501 は、第1世代 ( 1ピン式 GEO.I ) でした。

当時 IWC OCEAN BUND は、すべてのモデルが第1世代 ( 1ピン GEO.I ) の接続構造でした。

その後、第1世代 ( 1ピン式 GEO.I ) の接続構造をもつ IWC OCEAN BUND Ref.3314、3501 は、ミリタリーウォッチという性質のためか、時計本体とストラップを接続するチタニウム製リンクの摩耗が進んで時計が腕から脱落してしまう不具合が出ました。

そこで、IWC シャフハウゼンは、第1世代 ( 1ピン式 GEO.I Ref.3314 Ref.3501) から第2世代 ( 2ピン式 GEO.II Ref.3319 Ref.3509 ) へと接続構造を改良しました。

この固体も、不具合がみつかり、IWC シャフハウゼン にてコンプリートサービスを実施したときにミドルケースと接続リンクを交換、Re.3501 → Ref.3509 に再打刻されたのではないかと想像します。

尚、多くの Ref.3501 も、不具合が生ずるたびに、メーカー修理で Ref.3509 へとアップデートされました。

現在、そのような理由で  Ref.3501 はこの世に残っておらず、忘れ去られようとしています。

一方、Ref.3519 は、そもそも生産数が少なかったからか、Ref.番号は変更されませんでした。

尚、現存する Ref.3501 は、ある意味「激レア」アイテムですのでお持ちの方はくれぐれも大切になさっていただきたいと思います。

小情報ですが、Ref.3501 に限らず、 IWC OCEAN BUND の第1、第2世代接続リンク搭載モデルをお持ちで IWC シャフハウゼンへ 整備に出される際は、ブレスレットやナイロンストラップリンクを取り外してケース本体のみを IWCブティック へ持って行ってください。そうしませんと、ほぼ

リンクに不具合があると認定されて、裏ブタ裏の刻印が、Ref.3501 3509 3314 3319 3519 の刻印はそのままに、強制的に第3世代 ( 貫通式1ピン式 GEO.III )のミドルケースと接続リンクとブレスレットに、純正ピン外し工具もついてきて、スイスから戻ってきてしまいます。

なぜわざわざ「第3世代になってしまう」と言及しているのかと申しますと、

「第3世代の構造」 では IWC OCEAN BUND の複雑化した魅力が全体的に損なわれるからです。

 

・ETA 2892系ムーブメントにまつわる問題

当初、IWC OCEAN BUND Ref.3501 や Ref.3509 の前期モデルは、Cal.375.2 22石仕様を搭載していました。

ETA と IWC シャフハウゼンは、IWC OCEAN BUND に搭載した機械式ムーブメント、ETA 2892-2 ( IWC Cal.375.2 地板ニッケルメッキ ) に関する、主に巻き上げに関する問題を解決すべく、ETA 2892-A2 ( IWC Cal.375.21 21石 地板ゴールドメッキ+ペルラージュ ) へとアップデートさせました。

なぜ 22石が 21石に変わったかというと、ローターベアリングに使用していた 9個のルビーが今一歩であったと判断されたからになります。

ルビーベアリングは SPECIAL な構成要素であったため、残念な感じはします。

ですから、22石仕様の Cal.375.2 搭載モデルをお持ちの方は貴重な品をお持ちであると言えます。

この画像の固体は IWC シャフハウゼン にてコンプリートサービスを受けた際、時期的か不具合か何かの理由で Cal.375.21 へムーブメント交換を実施した Re.3501 → Ref.3509 ということになるかと思います。

加えて、ミドルケース、TiCONベゼル、ダイヤル、針もある時期に交換されているように見えています。

しかし、それ自体はマイナス評価にはあたらず、むしろ好ましいことであると考えて良いと思います。

Ref.3509 は東西冷戦時代に西ドイツ海軍で激しく使われた固体が多く、VEVEG から放出された個体の多くはボロボロで、そのまま使用するには厳しい感じでした。そこで、ほとんどの IWC OCEAN BUND Ref.3509 は、IWCシャフハウゼンでコンプリートサービスを受け、アーカイブを取得されています。


こちらの画像の Ref.3509 も、コンプリートサービスを受け、アーカイブを取得した後に前ユーザー様が譲り受けたものと想像しています。それから10年あまり、関東の愛好家様が所有されていたものが 2024年2月に都内港区の有名時計店さん CCさん へ渡り、販売されたものと思います。