二男は小学校4年のころ、目をぱちくり、首を定期的にかしげる症状が出て、母である素人の私にも「チック症」かな、と感じるほどでした。

はじめは癖かと思ったものの、激しいまばたき、何度も首を振るしぐさ。自覚している症状であるかを聞いたところ、自分でも止められないと言いました。

本人を責めているように感じさせては悪化すると考え、黙って何もせず様子を見ていました。できるだけ気にしないように努めるのが精一杯でした。

 

ある日、ストレスになるような心当たりがあるか聞いてみました。「○○君に毎日みんなの前で笑い者にされるんだ」ということでした。

「貧乏人のこども」、「顔にほくろがある」など、自分の力ではどうすることもできないことで笑われる、そしてみんなも一緒に笑う、それが何よりショックだと。

ん~! 小学校4年生が、なかなか正しく分析ができていることに感心してしまいました。

 

夫にそのことを話したところ、「○○君は無理よ、能力が違う」の一言でした。自分のこどもの能力を大変高く評価していることに、私は驚きました。

父ってそういうものなのでしょうか? 自慢とかいう意味ではなく、人事担当者のような見方です。

 

そのころ子供会世話人という、小学校の子供の行事に関する役員のようなことを任命されていた私は、月に何度か平日学校に出入りしていました。

その折、二男の担任の先生に廊下で会いました。その時聞かれたのです。「彼のあの目はどうして?」と。

私は二男に聞いたままを話しました。その時先生から、○○君の親子関係についての私の知るところを聞きたいとのことでしたから、出来る限り客観的に話したつもりです。

 

その日二男が学校から帰ってくるなり、先生がみんなにチック症について、「自分がそんな体になったらどう? 苦しいのよ、自分もやってごらんなさい!」と言ってくれたと。

みんなが謝ってくれた、と嬉しそうに話しました。

その日から症状が全部消えました。こどもってそういうものなんですね。

 

その夜○○君の母から電話がありました。息子たち二人は耳ダンボにして聞いていたのでしょう。「謝った?」と聞くので「いや、なんでうちが先生にそんなことを言われなきゃいけないのかわからないって。お兄ちゃん(うちの長男)にいじられたお返しだったって」と。

「え~! そんなわけないだろう、なんだよ謝んないのかよ、しぶといかあちゃんだな」、と二人はその日から彼の母を「しぶといかあちゃん」と呼んでいます。

 

 

そんなわけで、二男は貴重な体験学習をさせて頂いたわけで、29歳になった今、その体験がいきているでしょうか。

人の痛みのわかる人になりたい、そんな弁護士になりたいと言っていたはずです。