先日の記事でこれからは更新をしていくと決意表明したものの,すっかり更新が滞ってしまいました。
日々の業務が忙しく,なかなかブログまで手が回らないのが正直なところです。
何とか暇を見つけて,更新していきたいと思います。
さて,今日は相続のお話です。
Q 父が入院しており先が長くないため,子どもたちの間で相続について今のうちに話をしたいと思っています。私は父の入院先の手配などたくさんの面倒を見てきましたが,弟は我関せずで全く父の面倒を見ようとしません。こんな弟に父の遺産が渡るのは許せません。ですので,弟には生前に相続放棄をさせたいと思っていますが,そういうことはできるのでしょうか。
A 残念ながらできません。
こういったご相談を良くお受けします。
しかし,父が亡くなる前に,予め相続を放棄するということはできないのです。
相続放棄は,あくまで一旦発生した相続を放棄することであって,発生以前に放棄することは法律上認められておりません。
もっとも,相続放棄と似た制度に,遺留分の放棄というものがあります。
遺留分とは,亡くなった方が持っていた財産について,一定の割合を相続人に保障する制度です。
例えば,2人兄弟の相続人がいるとして,父が弟に全ての財産を相続させるという遺言を遺したとします(母は既に死亡)。
これでは,兄に一銭も渡らず,兄弟間で不平等ですよね。
こうした場合のために,兄に最低限の分け前を残しておこうというのが,遺留分という制度です。
具体的には,直系尊属(父母,祖父母,曾祖父母など)の場合には3分の1,それ以外の場合は2分の1です。
これを,更に法定相続分によってさらに分けます。
本件では,まず兄弟全体の遺留分が2分の1,そして兄弟が2人いるので更にこれが2分の1され,結局兄の遺留分は4分の1になります。
そして,こうした遺留分の放棄であれば,父の生前に行うことができるのです。
これは,遺留分を受けられる権利を持つ相続人が,家庭裁判所の許可を得て,遺留分を放棄することができるというものです。
もっとも,これはあくまで相続人が自主的に遺留分を放棄するものです。
本件でいえば,兄が弟の意思に反して,勝手に弟の遺留分を放棄させることはできません。
Qに挙げた兄の希望を果たすには,父が兄に全ての財産を相続させるよう遺言を書いてもらい,弟が自ら遺留分を放棄する申請をして家庭裁判所から許可をもらう,ということになります。
あまり現実的ではないですが,仕方ないですね。
※参照条文
民法1043条1項
岩谷 和彰