ドラゴンボール | ニューヨーク 心理カウンセラー 岩田康嗣のブログ

ニューヨーク 心理カウンセラー 岩田康嗣のブログ

アメリカ ニューヨーク在住の心理カウンセラーです。
公認心理師
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日常に起こった出来事を書いています。

今から数十年前、私がアメリカ留学を始めた頃のお話です。


新学期が本格的に始まる前に海外からの留学生だけを集めて英語の補習クラスが開かれました。


多くの留学生は大学入学前に語学学校などで英語の授業に慣れてから入学することが多いのですが、当時私は少しでも留学費用を抑えるために語学学校などには行かず、直接アメリカの大学に入学しました。なのでこの補習クラスが、私が英語で受ける初めての授業でした。リスニングとスピーキングに難があった私はかなり緊張していたのを覚えています。


授業のアクティビティーの中で、自己紹介があって、学生は一人ずつ、数分間のプレゼンテーションを要求されました。あなたはどんな人か、どこの国から来たのか、あなたの国はどんな国か紹介してください、、、、という内容でした。


幸い人前に出ることは日本で散々していたので、人前で話す事はさほど緊張しなかったのですが、クラスの前で拙い英語を話す緊張は半端なく、ドキドキしながら自分の順番を待っていました。


自分の番が来て自己紹介をしました。ぎこちなさはあったものの、一応、つかみ、ツッコミ、ボケ、を一連の流れで入れて、笑いも取りつつ、自己紹介を無難にまとめました。自分のプレゼンが終わりに近づき、内心ほっとしていたところに、一人の黒人女性が私に言い放ちました。


「あなたの話だと、日本があたかも先進国の一つのような説明だけど、あんなちっぽけな貧しい国じゃない、日本って。私はあなたの話を信じないわ。馬鹿げてる(ridiculous)。」


私は突然の日本批判に対して、一瞬頭が真っ白になってしまい、返す言葉が見つかりませんでした。


状況を補足すると、

1)もう何十年も前の話で、昨今の円安のような状況では無く、日本はそこまで貧しい国ではなかった。

2)何十年も前の話とはいえ、日本はすでに先進国の一つだった。

3)予期せぬ批判に反論するには瞬発力も必要で、当時の私の英語力では全く反応できなかった。


「何か言い返したい。」

「くやしい。」

「でも適切な言葉が英語で出てこない。」

「面識のないこの女に、なぜ公衆の面前で批判されているんだ、俺は?」

「これがアメリカなのか、、、」


なんて答えたら良いのだろうか?

脂汗をかきながら、絶望に近い焦燥感に駆られていた私に、シンガポール出身の男子学生が声を上げた。


「日本はドラゴンボールを生み出した国だぞ。あんなすごいクリエーションができる国は他にない。日本はクールそのものだよ。」


って言ってくれました。

その直後、「わー」と歓声が上がって、

「私もそう思う。」

「ドラゴンボールいいよな!」

「私もドラゴンボールを観て育ったよ。」

「日本は素敵な国だよ。」

「行ってみたい国の一つだよ。」

とクラスメイトが次々と言ってくれました。


ふと先生の方を見ると、

私にウィンクをしてくれました。


私は”Thank you”っていうのが精一杯でした。


その時私はドラゴンボールに救われた。

ドラゴンボールがこんなにも世界中に知られていて、支持されていることを驚きを持って知る事になりました。


ありがとう、ドラゴンボール。

ありがとう、鳥山明先生。