既に十年前のこと。

スコットランドの首都エデ

ィンバラを起点に、湖水地

方からマンチェスター・リ

バプール・バーミンガム・

オックスフォード・ロンド

ン・ヘースティングズまで

縦断(じゅうだん)

 

以来、イングランドの地を

踏むことが無い。

 

なのに時々、夢に現れる。

 

 

鰯の頭は、窓から家の中を

(のぞ)き込んでいる。

1階は(いし)敷き()(ゆか)。広間の

暖炉が赤く揺らぎ、2階へ

続く階段を照らしている。

 

いつものように、鰯の躰は

勝手に家の中に入った。

2階の小部屋の石の壁に、

(はね)ペンで何かを書き始め

た。

 

目を()らすと、

「A Midsummer Nights

 Dream

と、書いていた。

 

この家は、

イングランド中部ストラト

フォード・アポン・エイヴ

ォンに建つ、なんの変哲(へんてつ)

無い民家。

 

イギリス旅行で、(わず)かの時

間に立ち寄った「シェイク

スピア」の生家(せいか)

 

それなのに、何度も夢に

出て来る。

不思議・・・