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今日は、本編の前に。
先日(2月3日)、鰯の頭の
地元・千葉県市川市「大本山
中山法華経寺」で開催された、
節分追儺式(節分祭)の豆撒き
風景の一コマを、ご紹介。
鰯の頭の記憶では、
歌手・市川由紀乃さんが、
この会に初めて参加したの
は、確か十年以上前から。
途中、「NHKのど自慢」との
重複やコロナ禍での中断を
除けば。ほぼ毎回の参加。
小生の自慢は、本堂を取巻く
縁側「広縁」の、どの場所に
由紀乃さんが立つかを。知っ
ていること。
例年、二千人以上が境内に
集まるので、豆撒きが始まっ
てからでは、身動きが取れな
い。
今年も鰯が、
予測した場所に由紀乃さんが。
朝から晴天。風なし。暖かい。
絶好の、節分日和?
由紀乃さんが広縁に登場す
るや、すぐに会場のあちらこら
らから「ゆきのコール」の嵐。
今年は由紀乃さん、年女。
正真正銘の「福娘」。
彼女の撒いた福豆を、
しっかりゲット。
今年は、終了後の一時に。
予定外の撮影タイム。
由紀乃さんの優しさ溢れる
笑顔を、皆様にも御裾分け。
〈豆知識〉
★中山法華経寺では、
「鬼は外、福は内」の
掛け声はNG。
鬼子母神が祀られている
ので、
「福は内、福は内」の
掛け声だけ。
★節分は毎年2月3日と
限らない。
立春は、天体の動きで変わ
るため。節分は2月2日も
2月4日もある。(2021
年は124年ぶりに2日
だった。1984年は4日
だった)
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吉原遊郭の総籬「十文字楼」
の番頭から、不忍池の茶屋の
主人の鬼吉に、遣いが来た。
遣いの手紙には、
「年季明けの中年増が一人
いる。中々の器量よし。
直ぐに、引き取り可能」
と、書いてあった。
約束の月の20日に、
吉原の大門前で待って
いると。
中年増の遊女が近づき、
「アタイが、十文字楼の
昼立でオワス」
「悪いけど、急に旦那ハンの
茶屋へ行けノウナッテ。
堪忍してオクレ」
と、言ったのだ。
一目見ただけで、
その器量が気に入った鬼吉。
残念で、仕方が無い。
「してまた、どうして?」
と、訊くと。
「大きい声では、言えないけ
ど。アタイ、富籤で一番富
を引き当てたの」
「感応寺に、3百両寄進した
けど。残り7百両が手に」
「妹と二人で、これから江戸
で悠々自適に暮らすのよ。
ホナラ、ご機嫌よう」
と、クルリと背を向けた。
この話を、聴くや否や。
鬼吉は、思わず舌舐めずり。
心の中で、
「鴨が葱を背負っている」
と、呟いた。
そして、鬼吉。
両手を揉みながら、
「それはそれは、おめでとう」
「江戸の町は物騒な処。
妹さんと暮らす場所が見
つかるまでの間。ワシの
処で暮らすがいい。なにも
遠慮はいらない」
「ささ、直ぐ駕籠を用意する。
妹さんも一緒に、不忍池ま
でご案内いたす」
と言って。
鬼吉は。
強引に昼立と朝立を、
不忍池の茶屋へ連れ帰った。
■
1両小判700枚。
女には、かなりの重さ。
茶屋に来た際、
持っていなかったのだから。
どこかに、隠し置いているに
違いない。
「さて、如何にして口を
割らそうか」
中々、妙案が浮かばない。
前回は、
虫の息の状態で倒れていた
夕立と、たまたま遭遇。
あのとき、
「部屋の、6百両の小判が
危ない」
と夕立が言った。
訳を、問うと。
「富籤の賞金」
だと、言った。
茶屋に戻り、夕立の部屋で
大量の小判を発見。
池の畔に舞い戻り。
夕立の口を塞いで、
息の根を止めたのだった。
折角、
自分の処へ連れて来たのだ。
二人の会話を、
盗み聞きすれば。
隠し場所が、分かるハズ。
二人の部屋の屋根裏に、
潜り込んだ。
行灯を挟んで、
昼立と朝立が、何やら話し込
んでいる。
「朝ちゃん。あの場所は絶対
に、誰にも言っちゃだめよ」
「昼姉ちゃん、大丈夫心配し
ないで。アタイ、誰にも言
わないから」
この会話を聞いていた鬼吉。
実のところ昼立ちが、
本当に富籤で大金を手に
した確証を得ていなかった。
だが、二人の会話は。
明らかに、小判の隠し場所。
「やはり本当か」
「そうか。妹の朝立も、小判
の在処を知っているのか」
「姉の方は、口が堅そうだが
妹の方なら、上手くやれば
喋るかも」
と、舌舐めずりした。
■
「自ら、悪行を白日の下に
公開する」
これが、
隠居の岩志が考えた、脚本。
十文字楼の番頭の協力が、
作戦の始まり。
「鬼吉が必ず、昼立と朝立の
会話を盗み聞く」
「そして、朝立に接近する
ことも」
実は、織り込み済み。
昼立が一人で外出するのを、
見計らって。
鬼吉が、部屋を訪ねた。
「おや、昼立姉さんは。
どこかへお出かけかい。
どこへ行ったのだい」
「さあね、大事な処だと、
言っていたわ」
「朝立さんよ、ワシの部屋で
江戸前のキスとアナゴで、
一杯どうかな。美味いぜ」
一杯どうか、と言われ。
朝立は、鬼吉の部屋へ。
鬼吉は、朝立のお猪口に
休まずに酒を注ぎながら。
「いつも同じ着物を着てい
るけど、お金が無いわけじ
ゃあないだろうに」
「ワシが買って上げようか」
「あら旦那ハン。アタイを
口説いてオイデデ」
「お金なら腐るほどあるわ。
今時分、昼姉ちゃんが
日本橋の越後屋さんに預
けている小判を、両替して
いるハズ」
酒を飲ませたら、いとも簡単
に預け先が分かったものの。
越後屋から持ち出すのは、
至難の業。
鬼吉が考えたのは・・・
(つづく)
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■
主な登場人物(適宜掲載)。
▶鰊真岩志。元・町同心。隠居探偵。
▶鰊真亜治。息子。南町奉行所の町同心。
▶鈴屋双丸。岩志の友人。長屋の大家。
▶大岡越前守。南町奉行所の町奉行。
▶平次。岡っ引き。
▶吉良麹之介。南町奉行所の与力。
▶徳川吉宗。8代将軍。
▶すず、もも。饅頭屋の看板姉妹。
▶夕立。長女、不忍池の女郎。毒殺。
▶昼立。次女、平尾宿の女郎。
▶朝立。三女、谷中の女郎。
▶助八。朝立の内縁の夫。板前。
▶ウニ。岩志の家内。
▶鬼吉。不忍池の茶屋の主人。
■本作は、フィクション。
登場する地域・人物・組等の名称・
写真イラスト等は、実在のと無関係。
諸制度や時代考証などの齟齬、ご容赦。
■添削・校正なしで配信。誤字脱字ご容赦。
鰯の頭
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