◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

今日は、本編の前に。

 

先日(2月3日)、鰯の頭の

地元・千葉県市川市「大本山

中山(なかやま)法華経寺(ほけきょうじ)」で開催された、

節分追儺式(せつぶんついなしき)(節分祭)の豆撒(まめま)

風景の一コマを、ご紹介。

 

鰯の頭の記憶では、

歌手・市川由紀乃さんが、

この会に初めて参加したの

は、確か十年以上前から。

 

途中、「NHKのど自慢」との

重複やコロナ禍での中断を

除けば。ほぼ毎回の参加。

 

小生(鰯の頭)の自慢は、本堂を取巻く

縁側「広縁(ひろえん)」の、どの場所に

由紀乃さんが立つかを。知っ

ていること。

 

例年、二千人以上が境内(けいだい)

集まるので、豆撒きが始まっ

てからでは、身動きが取れな

い。

 

今年も鰯が、

予測した場所に由紀乃さんが。

 

朝から晴天。風なし。暖かい。

絶好の、節分(せつぶん)日和(びより)

 

 

由紀乃さんが広縁に登場す

るや、すぐに会場のあちらこら

らから「ゆきのコール」の嵐。

 

今年は由紀乃さん、年女(としおんな)

正真正銘の「福娘(ふくむすめ)」。

彼女の()いた福豆を、

しっかりゲット。

 

 

今年は、終了後の一時(ひととき)に。

予定外の撮影タイム。

 

由紀乃さんの(やさ)しさ(あふ)れる

笑顔を、皆様にも御裾分(おすそわ)け。


 

 

〈豆知識〉

★中山法華経寺では、

「鬼は外、福は内」の

 掛け声はNG。

 鬼子母神(きしぼじん)(まつ)られている

 ので、

「福は内、福は内」の

 掛け声だけ。

 

★節分は毎年2月3日と

 限らない。

 立春は、天体の動きで変わ

 るため。節分は2月2日も

 2月4日もある。(2021

 年は124年ぶりに2日

 だった。1984年は4日

 だった)

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

吉原遊郭(ゆうかく)総籬(そうまがき)十文(じゅうも)字楼(んじろう)

の番頭から、不忍(しのばず)(のい)()茶屋の

主人の(おに)(きち)に、(つか)いが来た。

 

遣いの手紙には、

 

年季(ねんき)()けの中年増(ちゅうどしま)が一人

 いる。中々の器量(きりょう)よし。

 直ぐに、引き取り可能」

 

と、書いてあった。

 

 

 

 

 

約束の月の20日に、

吉原の大門(おおもん)前で待って

いると。

 

中年増の遊女が近づき、

 

「アタイが、十文(じゅうもん)字楼(じろう)

 (ひる)(だち)でオワス」

 

「悪いけど、急に旦那(だんな)ハンの

 茶屋へ行けノウナッテ。

 堪忍(  かんにん)してオクレ」

 

と、言ったのだ。

 

 

一目見ただけで、

その器量が気に入った鬼吉。

残念で、仕方が無い。

 

「してまた、どうして?」

 

と、()くと。

 

「大きい声では、言えないけ

 ど。アタイ、富籤(とみくじ)一番(いちばん)(とみ)

 を引き当てたの」

 

感応寺(かんのうじ)に、3百両寄進(きしん)した

 けど。残り7百両が手に」

 

「妹と二人で、これから江戸

 で悠々自適(ゆうゆうじてき)に暮らすのよ。

 ホナラ、ご機嫌(きげん)よう」

 

と、クルリと背を向けた。

 

 

この話を、聴くや(いな)や。

鬼吉は、思わず舌舐(したな)めずり。

 

心の中で、

 

(かも)(ねぎ)背負(しょ)っている」

 

と、(つぶや)いた。

 

 

そして、鬼吉。

両手を()みながら、

 

「それはそれは、おめでとう」

 

「江戸の町は物騒(ぶっそう)(ところ)

 妹さんと暮らす場所が見

 つかるまでの間。ワシの

 処で暮らすがいい。なにも

 遠慮はいらない」

 

「ささ、直ぐ駕籠(かご)を用意する。

 妹さんも一緒に、不忍池ま

 でご案内いたす」

 

と言って。

 

鬼吉は。

強引に昼立と朝立(あさだち)を、

不忍池の茶屋へ連れ帰った。

 

 

1両小判700枚。

女には、かなりの重さ(約13kg)

 

茶屋に来た際、

持っていなかったのだから。

どこかに、隠し置いているに

違いない。

 

「さて、如何(いか)にして口を

 割らそうか」

 

中々、妙案が浮かばない。

 

 

 

前回は、

(むし)(いき)の状態で倒れていた

夕立と、たまたま遭遇(そうぐう)

 

あのとき、

 

「部屋の、6百両の小判が

 危ない」

 

と夕立が言った。

 

訳を、問うと。

 

富籤(とみくじ)の賞金」

 

だと、言った。

 

茶屋に戻り、夕立の部屋で

大量の小判を発見。

 

池の(ほとり)に舞い戻り。

夕立の(くち)(ふさ)いで、

息の根を止めたのだった。

 

 

 

折角、

自分の処へ連れて来たのだ。

二人の会話を、

盗み聞きすれば。

隠し場所が、分かるハズ。

 

二人の部屋の屋根裏に、

(もぐ)り込んだ。

 

 

行灯(あんどん)(はさ)んで、

昼立と朝立が、何やら話し込

んでいる。

 

「朝ちゃん。あの場所は絶対

 に、誰にも言っちゃだめよ」

 

(ひる)(ねえ)ちゃん、大丈夫心配し

 ないで。アタイ、誰にも言

 わないから」

 

 

 

この会話を聞いていた鬼吉。

 

実のところ昼立ちが、

本当に富籤(とみくじ)で大金を手に

した確証を得ていなかった。

 

だが、二人の会話は。

明らかに、小判の隠し場所。

 

「やはり本当か」

 

「そうか。妹の朝立も、小判

 の在処(ありか)を知っているのか」

 

「姉の方は、口が(かた)そうだが

 妹の方なら、上手くやれば

 (しゃべ)るかも」

 

と、舌舐(したな)めずりした。

 

 

 

(鬼吉)ら、悪行(あくぎょう)白日(はくじつ)(もと)

 公開する」

 

これが、

隠居の(いわ)()が考えた、脚本(きゃくほん)

 

 

十文字楼の番頭の協力が、

作戦の始まり。

 

「鬼吉が必ず、昼立と朝立の

 会話を盗み聞く」

 

「そして、朝立に接近する

 ことも」

 

実は、()()()み。

 

 

 

昼立が一人で外出するのを、

見計(みはか)らって。

鬼吉が、部屋を訪ねた。

 

 

「おや、(ひる)(だち)(ねえ)さんは。

 どこかへお出かけかい。

 どこへ行ったのだい」

 

「さあね、大事な(とこ)()と、

 言っていたわ」

 

 

「朝立さんよ、ワシの部屋で

 江戸前のキスとアナゴで、

 一杯どうかな。美味(うま)いぜ」

 

 

一杯どうか、と言われ。

朝立は、鬼吉の部屋へ。

 

鬼吉は、朝立のお猪口(ちょこ)

休まずに酒を注ぎながら。

 

「いつも同じ着物を着てい

 るけど、お金が無いわけじ

 ゃあないだろうに」

 

「ワシが買って上げようか」

 

「あら旦那(だんな)ハン。アタイを

 口説いてオイデデ」

 

「お金なら(くさ)るほどあるわ。

 今時分(いまじぶん)(ひる)(ねえ)ちゃんが

 日本橋の越後屋(えちごや)さんに(あず)

 けている小判を、両替して

 いるハズ」

 

 

酒を飲ませたら、いとも簡単

に預け先が分かったものの。

越後屋から持ち出すのは、

至難(しなん)(わざ)

 

鬼吉が考えたのは・・・

 

 

 

 

(つづく)

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

主な登場人物(適宜掲載)。

 

(にし)(んま)(いわ)()。元・町同心。隠居探偵。

▶鰊真亜治(あじ)。息子。南町奉行所の町同心。

鈴屋(すずや)双丸(ふたまる)。岩志の友人。長屋の大家。

大岡(おおおか)越前(えちぜん)(のか)()(みな)(みま)()行所の町奉行。

(へい)()。岡っ引き。

吉良麹之(きらこうじの)(すけ)。南町奉行所の与力。

徳川(とくがわ)吉宗(よしむね)。8代将軍。

▶すず、もも。饅頭屋の看(本当)姉妹(は姉弟)

夕立(ゆうだち)。長女、不忍池の女郎。毒殺。

(ひる)(だち)。次女、平尾宿の女郎。

朝立(あさだち)。三女、谷中の女郎。

助八(すけはち)。朝立の内縁の夫。板前。

▶ウニ。岩志の家内。

(おに)(きち)。不忍池の茶屋の主人。

 

■本作は、フィクション。

登場する地域・人物・組等の名称・

写真イラスト等は、実在のと無関係。

諸制度や時代考証などの齟齬、ご容赦。

 

■添削・校正なしで配信。誤字脱字ご容赦。

 

鰯の頭

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆