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本作品はフィクションです
本作の内容と実在の事柄は
一切関係ありません
特に法制度など
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Mに代わって官房長官の職に就
いたのが、バンド仲間のY・H。
バンドは、今は休眠状態。
彼もイニシャルがYH。
元防衛大臣H。
羽田空港のダイヤモンド・プレミ
アラウンジで。
「危なかったよ。私も官房長官
候補の一人だった。私は、泥船
に乗るほど馬鹿じゃない。YH
のヤツ、同じ派閥のKから次
の総理の座でも囁かれたか」
「ヤツも意外に、馬鹿だよ」
と、政治に興味の無さそうな
白木唯を相手に、政局談議。
Hの大K民国の訪問目的は、
同国の「IR視察」。
想定外の事情で、
同行することになった唯。
出発ロビーの、
「ダイヤモンド・プレミアラウンジ」
に入るのも。
ましてや、国際線のファースト
クラスなんて見たことも無い。
正直なところ、ビジネスクラス
どころかプレミアムエコノミー
すら乗ったことが無い。
僅か2.5時間のフライトなのに、
料金が10倍も違う。
広々としたFC席の隣から。
Hは途切れることなく、これから
訪れる国のカジノ事情を唯に話
し掛けた。
実に、詳しい。
「この人、本当に国会議員?
国防政策より詳しいのでは」
「視察の必要、要ら無いのでは」
と、唯は思った。
Hが、
同国の主なカジノについて
語ったことを、要約すると。
統合型リゾート施設と、
呼べるのは。
仁川国際空港に直結する
「パラダイスシティカジノ仁川」
と、
「済州島のカジノ」
くらいらしい。
他のカジノは。
ホテルが併設されているものの
他の複合施設は、ほぼ無い。
だから「統合型リゾート施設」
では無く、只のカジノ。
カジノ施設として最大は、ソウル
郊外の「パラダイスカジノ・ウオ
ーカーヒル」。シェラトン・グラ
ンデ・ウオーカーヒル・ソウル内
に併設。
首都の中心なら「セブンラックカ
ジノ・ドラゴンシティ」や「セブ
ンラックカジノ・ソウル江南店」。
日本から近いのが、「セブンラッ
クカジノ・釜山ロッテ店」
ヨーロピアンスタイルの落着い
た格調。
済州島は、島全体がリゾート地。
複数のカジノがある。
最大規模を誇るのが、
IRの「済州神話ワールド」内に
ある、「ランディングカジノ」。
島には他に、
「パラダイスカジノ済州グランド」
や、高級リゾートホテル「済州新
羅ホテル」内の「マジェスターカ
ジノ」などがある。
同国内には他にも、
第三の都市「大邱」にあるのが、
「テグカジノ」。
自然豊かな環境の「ホテルインタ
ーブル」内に。
「まさに、大K民国はカジノ
パラダイスなのだ」
「だが同国民は原則、カジノは
国法で禁止。やってはいけない
入場すら出来ない」
「私が、幕張に造るカジノは。
18歳以上の日本人OK」
「これが、最大の目玉」
「外国人だけにカジノ解禁なん
て。愚策中の愚策」
「空の上で俺の親父が、泣いて
いる」
「そうそう、正確には。大K民
国に自国民が入れるカジノが
一ヶ所だけある」
「それが江原ランド」
「ソウルから東へ3時間。福岡
PayPayドーム77個分の
広大な地が、江原ランド」
「旧産炭地の振興策として開設。
スキー場やゴルフ場なども」
「ただ、こんなデータも。それは、
入場者の6割がギャンブル依
存症。だから今は、月1回まで
の入場制限の依存症対策を採
っている」
「セレちゃん、ディーラーの勉強
をするなら。パラダイスシティ
カジノ仁川がいい。あそこは、
教育システムがしっかりして
いる」
カジノに関するHの高説を聞い
ていたら。
アッと言う間に、仁川国際空港
に着いた。
唯にしてみれば、カジノもディー
ラーの話も。どうでもいい話。
どうやって、48年前の事件を
訊き出そうか。そればかりを考え
ていた。
■
Hがセレに用意したホテルは、
ソウルの中心から12km。
ロッテワールドタワー76~101階
「Signiel Seoul」。
こんな最高級ホテルに宿泊する
のは。
唯にしてみれば、俣阿野探偵事務
所での見習いのころ経験した。
「ザリッツカールトン上海浦東」
以来。
胸板が厚く、冬でも褐色の顔色。
「エネルギッシュ」を絵に描いた
ようなHも、同じホテル。
確か古希には、二つ若いハズ。
その辺を深く考えず、取材目的
で同行したものの。少し不安に。
直ぐに、杞憂に終わった。
Hのコネクティングルームの
隣室は。
公設秘書と地元の秘書の2人。
更に隣には外務省の官僚が2人。
唯の部屋は、ツインルーム。
女性の私設秘書と一緒。
「意外に、ジェントルマンかも」
と思った。
反面、
「二人きりで無いと、アノ事を
探れない」
と、少し悔やんだ。
初日の夕食は、
漢江の夜景を観ながら。会員専用
レストラン「シグニエルクラブ」
で。
席に着いて、ビックリ。
テーブルに食器が、二人分だけ。
「他の方たちは?」
の問いに。
Hは、
「こんな席に、秘書や役人は同席
させない」
「彼らには、君のことを」
「CLUBゆき乃のママの年の離れ
た妹。将来有望な、映像クリエ
イターと言ってあるので。その
つもりで」
と、豪快に笑った。
降って湧いたような、
千載一遇のチャンスと思ったが。
「ここは、急がば回れ」
と、
この夜は「あの話題」を封印。
翌日の朝食には。
一行7人、全員がテーブルに。
「これから、私たちは大統領府に
向かう。K総理の親書を預かっ
て来た」
とHが言った。
「じゃあ、青瓦台?」
と、唯。
すると、
「大統領府は、今は龍山区」
「青瓦台は、今は市民公園よ」
と、同室の私設秘書が答えた。
どうやら、Hは今日。
大統領と面談らしい。
今回の訪大K民国の目的は、
これがメイン。
カジノ視察はオマケと分かった。
明日から三日間は、非公式日程。
そこで唯は、一人タクシーで。
「パラダイスカジノ・ウオーカー
ヒル」に向かった。
(つづく)
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■主な登場人物(適宜掲載)
▶俣阿野志隈 私立探偵・極秘諜報員
▶浜まり ヤメ検弁護士・極秘諜報員
▶俣阿野京歌 志隈の妻・極秘諜報員
▶白木唯 映像クリエイター・極秘諜報員
▶白木香織 ㈱MJ社長・唯の姉/異母姉妹
▶浜智之 まりの夫・寺院の住職・極秘諜報員
▶深川舞 ㈱MJ事業部長・白木香織の親友
▶鬼頭史郎 警視庁公安部・極秘諜報員の窓口
■本作は、フィクション。
登場する地域・人物・組織等の名称おび
写真イラスト等は、現存のものと無関係。
諸制度や時代考証などの齟齬は、ご容赦。
■添削・校正なしで配信。
誤字脱字の程、ご容赦。
鰯の頭
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