814　ARUKAMO 86 EPISODE Ⅹ　回照器Ⅱ①「援護」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆

本作品はフィクションです

本作の内容と実在の事柄は

一切関係ありません

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私立探偵・俣(また)阿野(あの)志(し)隈(わい)は、

過去も今も政治的活動に無関心。

仕事上で、政治家との接触は多々

あるが、特定の政党を支持する訳

では無い。

消極的無党派、すなわちノンポリ。

 

刑事(警視庁捜)時代(査一課)の同僚・鬼頭(きとう)史郎(しろう)を介し

てのミッションには、時の政権争

いに属するものもある。

 

「IR事業」案件が、それ。

どこに造るか、運営をどこに任す

かなど。膨大な利権が絡む。

必然的に、政治家が暗躍する。

 

 

前総理・洲崎(すざき)偉(ひで)吉(よし)は、総務大臣や

官房長官のころからIR事業に関

心が強かった。

 

秋田の片田舎(かたいなか)を飛び出し、政治家

になった苦労人。

資源のない日本を豊かにするに

は、「観光立国を目指す」。

これが、政治信条の根底にある。

 

これまで、さほど多くない外遊の

中で特筆すべきは。

洲崎が訪問した主な都市。

 

・中国/マカオ

・ネバダ州/ラスベガス

・ニュージャージー州/アトラン

　ティクシティ

・オーストリア／ザルツブルグ

・モナコ／モンテカルロ

・バハマ／ナッソー

・韓国/ソウル

・シンガポール

 

これらの都市には、いずれにも

世界に名高いカジノがある。

 

洲崎の具体的な政策目標が、

「７年間で、シンガポール規模の

カジノを１０ヶ所つくる」こと。

ただ「国内第一号」を、出来る

ことなら選挙区の「横浜」に造る

のが夢。

 

 

一方、「福岡IR」を先導する政敵

のA副総裁サイドは、当てにし

ていた「オイルマネーが頓挫(とんざ)」。

この情報は、洲崎に伝わった。

 

今現在、唯一政府が認可したのは。

大阪万博跡地での開業を目指す

「大阪IR」。

だが、

ここに来て万博の規模縮小。

「夢(ゆめ)洲(しま)の地番沈下」が表面化。

29(2029)年(年)中の開業に赤信号。

 

 

 

■

ここは港区西麻布。

11/24にオープンしたばかり

の「麻布台ヒルズ」。

タワープラザ３F「ふかひれ家」。

 

 

 

中央に聳(そび)え立つ森JPタワーは

330mと今のところ、日本一。

27(2027)年(年)度には東京駅前に、390m

の「トーチタワー」が完成するの

で、日本一なのは３年余りの間。

 

 

今宵(こよい)は、ここで。

白木(しらき)唯(ゆい)を囲んでの食事会。

唯(ゆい)は、SMKYのメンバーの一人。

名目は、米国(ニュ)NY(ーヨーク)からの帰国を

祝う会。

 

諜報組織のコードネームSMKY。

志(し)隈(わい)/まり/京歌(きょうか)/唯(ゆい)の頭文字から

付けた名称。

今では、まりの夫の浜智之(はまともゆき)氏も

正式メンバー。

 

「どうだろう、鬼頭氏も加えた

　新たなコードネームにしては」

と、志隈が発言。

 

すると智之が、

「ネーミングなら、お任せを」

 

「私が住職を務める寺院は、代々

　『名づけ寺』と言われた寺院」

と、言うと。

 

京歌が、

「ちょっと待って！戒名(かいみょう)じゃ

　ないのだから」

と、

「反対」

の異議を示した。

 

すると、まりが、

「貴女(あなた)の親の祖国(そこく)フランスでも

　約半分の人が、洗礼のときに

　牧師さんからヒントを」

と、夫の智之をフォロー。

 

援護(えんご)を受けた智之が、

「では、新ネームをmerci(メルシー)に」

 

「仏教の世界では、人は存在その

　ものが有難いことだと教えて

　いる。当り前なことが、実は

　有難く稀(まれ)な事。そこから、あり(・・)

　が(　・)とう(・・)の言葉が生まれた」

 

「よって新コードネームは、

　“ありがとう“」

「フランス語で、“merci(メルシー)”」

 

明るく、前向きなネーミングに。

全員が、賛意を表明した。

 

 

目の前のテーブルに、

高級食材「フカヒレ」料理が

次々に並んだ。

 

・「尾びれの姿煮」

・「尾びれの蒸しスープ」

・「フカヒレあんかけ炒飯(チャーハン)」

 

 

 

中国料理の三大珍味と言えば、

「ツバメの巣」

「鮑(あわび)」

そして「フカヒレ」

 

フカヒレは、鮫(サメ)のヒレを乾燥。

料理をする際に戻し、形が保たれ

たもの「排翅(パイツー)」は、姿煮に。

ほぐれたもの「散翅(サンツー)」は、スープ

や点心に。

 

鮫の種類は多いが、フカヒレ料理

に用いられるのは数種類。

最高級が、絶滅危惧種のジンベイ

ザメ。比較的ポピュラーなのが、

ヨシキリザメ、モウカザメやアオ

ザメ。

 

尾びれが最も貴重、次いで背びれ。

スープには、胸びれ・腹びれ・尻

びれが使われる。

 

 

テーブルの紹興酒が、瞬く間に空

いた。

 

少し顔を紅潮させた唯が、

「私、米国でオモシロイものを観

　て来たワ」

「それは、カジノが都市、延(ひ)いて

　は国を亡ぼす現実を」

 

と語ると、タブレットを開いた。

 

 

（つづく）

 

 

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■主な登場人物（適宜掲）

▶俣(また)阿野(あの)志(し)隈(わい)　私立探偵・極秘諜報員

▶浜(はま)まり　ヤメ検弁護士・極秘諜報員

▶俣(また)阿野(あの)京歌(きょうか)　志隈の妻・極秘諜報員

▶白木(しらき)唯(ゆい)　映像クリエイター・極秘諜報員

▶白木(しらき)香織(かおり)　㈱MJ社長・唯の姉/異母姉妹

▶浜智之(はまともゆき)　まりの夫・寺院の住職

▶深川(ふかがわ)舞(まい)　㈱MJ・事業部長

▶鬼頭(きとう)史郎(しろう)　警視庁公安部・SMKY窓口

 

■本作は、フィクション作。

登場する地域・人物・組織等の名称および

写真イラスト等は、現存のものと無関。

諸制度や時代考証などの齟齬は、ご容赦。

 

■添削・校正なしで配信。

誤字脱字の程、ご容赦。

 

鰯の頭

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本作品はフィクションです

本作の内容と実在の事柄は

一切関係ありません

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