俣阿野の部屋で、
最終的な詰めのミーティング。
白木唯が、
「ボス、ブリャンの在処が分かっ
たのね。お疲れさま」
と笑いながら。
「でも、上海郊外のマンションへ
忍び込むより。もっと良い手が」
「雪迎さんの仕掛けを、再利用し
ましょう。『鳶に油揚作戦』よ」
「つまり、露思が預かった金塊を。
途中で頂くって言う訳」
俣阿野が続けた、
「金塊は可也の重さ。
車を使うハズ」
「この仕事は、まだ何もしていな
い優君の出番。なに、頭は使わ
ない。この国の言葉が話せる
運転手の仕事」
「手順は」
「金塊を車ごと奪い。
途中で別の車に積換え、
上海港へ向かう」
「そのまま、大型フェリーに
乗る。行先は神戸港」
「埠頭の税関は、賄賂でスルー」
「これが車のキーと、乗船券」
「私達は一足先に、上海を発つ。
成功を祈るわ」
■
『鳶に油揚作戦』は、順調だった。
マンションの駐車場に停めて
いた車に、金塊を積み込んだ瞬間。
露思は、鳩尾を強打され気絶。
セダンは高速道路のSAで、
ワンボックスカーに代わった。
ベンツVクラスは、
上海港ターミナルへ。
そのまま、大型フェリーに乗船。
金塊は。車の全てのシート内に、
分散収納。
乗っていたのは、貝塚優。
優は、二泊三日の快適な船旅を
楽しんだ。
SMKYの四人。
深川舞と鬼頭史郎。
貝塚優と楊雪迎。
計8人、全員が虎ノ門レジデンス
に集まった。
京歌が準備した、
フレンチディナーを前に。
用意されたシャンパンは、
モエ・シャンドン・ドン・ペリニ
オン・1996・ローズゴールド・
マッサレム。 (6ℓボトル540万円)
俣阿野が、
「今宵の乾杯は、ヤメ検の
浜まりさんにお願いします」
と言うと。
「今回のミッション、私は何も。
舞さんのお伴で、マイアミへ
行っただけ。最大の功労者は
深川舞さんです。皆さま、乾杯」
と乾杯の音頭。
食事が始まると、白木唯が。
「優さん。フェリーでの検閲、
平気だったの?」
と問うと。
「全く平気。車に近寄る皆に、
毛△東さんの束を渡したから」
「一人だけ、『車体が重いが、
積み荷は?』と聞いたので」
「唯さんに言われた通り、『シー
トの中に、耳の形をした土器を
隠している。目に触れると、
気持ちが悪くなる代物』と言っ
たら、それで済んでしまった」
と、優が答えた。
「ふう~ん、やっぱり。
そうなんだ」
と言いながら、唯は続けた。
「上海で。一番活躍したのは、
楊雪迎さん。一番楽しんだのは
ボスかなぁ」
と、京歌の顔を見ながら言った。
■
凡そ半月後。
麻薬シンジケートが放った
ヒットマンから、身を守るため。
周妮は、OIPC(国際刑事警察機構)
上海支部に出頭。
宋露思の消息は、上海からも日本
からも途絶えた。
(つづく)
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■主な登場人物(適宜掲載)
▶俣阿野志隈 私立探偵・極秘諜報員
▶浜まり 弁護士・極秘諜報員
▶俣阿野京歌 志隈の妻・極秘諜報員
▶白木唯 映像クリエイター・極秘諜報員
▶白石香織 旧姓白木香織・唯の異母姉妹
▶浜智之 まりの夫・寺の住職
▶深川舞 ㈱マーケティング日本・事業部長
▶周妮 元MJ上海首席・元ルポライター
▶宋露思 夏冬旅行社の派遣ガイド・IQ130
▶楊雪迎 唯の学友・元周妮の部下・IQ135
▶貝塚優 京歌の元カレ・雪迎と結婚
▶鬼頭史郎 警視庁公安部・SMKYの窓口
■本作は、フィクション作品。
登場する地域・人物・組織等の名称及び
写真イラスト等は現存のものと無関係。
諸制度や時代考証などの齟齬は、ご容赦。
■添削・校正なしで配信。
誤字脱字の程、ご赦。
鰯の頭
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