かの国には、アヘン貿易を巡り
西欧列強と国の存亡を賭けた、
悍ましい過去がある。
1950年代に撲滅化された
ハズのアヘンの流通が。
70年代の改革開放政策以降。
薬物の密輸、乱用が再燃。
「ラオス・タイ」と「雲南省」
更に「ミャンマーのシャン高原」
いわゆる、黄金の三角地帯。
ここでの
栽培・密輸・売買等の犯罪件数は、
世界のアヘンの7割とも。
かの国の「麻薬犯罪」の刑罰は、
極めて重い。
なのに、犯罪件数は増加の一途。
羽田国際空港の手荷物検査場で、
麻薬探知犬によって発見された
麻薬は。
史上最悪の麻薬と言われる、
「クロコダイル」
鎮痛剤のコデインにガソリンや
ペイント希釈剤などを添加した、
猛毒のアヘン剤。
ヘロインと類似した高揚感を
短時間で齎す薬物。
所持者から得た情報では、
「旅行中、ツアーガイドに勧めら
れ試飲。媚薬のサンプル」
「現物は、帰国後に宅配」
俣阿野から深川舞への、
ミッションは。
「夏冬旅行社の派遣社員を一人
引抜き、二重スパイに」
「その者を使い、ニセ情報を
周妮側に流す」
「ミッション完結迄の経費は、
無制限」
■
舞は、直ぐに動た。
「自社の派遣ガイドの現場視察」
と称して。
J社の「東京観光」に同行。
夏冬旅行社の派遣ガイドを、
終日物色した。
その中から、
俣阿野から聞かされていた条件。
「周妮が好みそうな、IQが高く
長身美人」
に、目星を付けた。
そのガイドの名は「宋露思㉔」。
名前と顔写真を、京歌に送ると。
翌日、舞のスマホに宋のプロファ
イルが届いた。
浅草観光の途中、首尾よく彼女
に接近。夜の約束に成功。
宋の東京滞在中のホテルは、
「アパヴィラホテル赤坂見附」
舞は近くの、
「ホテルニューオータニ東京」
17F「SKY BAR」で待った。
約束の時間に、宗が隣に着席。
舞が片言で、話すより前に。
流暢な日本語で、挨拶して来た。
「好きなドリンクを」
と、促すと。
「テキーラサンセット」
と、即答。
既に夕食は済んでいるハズ。
この時間帯に、このカクテル。
「彼女、中々の通」
と、酒豪を自負する舞は思った。
互いが一杯目を飲み干し、本題へ。
「呼ばれたことに、心当たりは」
の問いに。
「ヘッドハンティング?
それとも、御社のスタッフに
何かご迷惑でも」
「後者なら、J社から連絡が。
では、やはりWHネ」
▼ヘッドハンティング
「WHでは無いわ。只のスカウト」
「WHは、エグゼクティブに使う
言葉。今貴女は只のガイドよ」
と、ワザと出鼻を挫いた。
組織のNo2として、活躍する
深川舞。
「上と下を取り持つ術に、絶対の
自信がある」
「幼少時から培われた、緩衝器と
してのバランス感覚」
まさに、「次女」の特性。
プロファイルに記された、
宋露思㉔。
学歴は上海交通大学卒。
専攻は外国語学院・日本語系。
IQ130。身長170cm。
「交大は、国家主席・江沢民を
排出。何故ツアーガイドに」
「まさかIQ130で、倍率6千
倍の国家公務員試験に不合格」
と、先制パンチ。
IQが高い女性。
「ストイックで、プライドが高い」
のが、特徴の一つ。
彼女も、然り。
「世間の常識基準」を否定する
ことで、自身のプライドを維持す
る傾向がある。
舞には、露思の心は読めている。
「単刀直入に言うわ」
「貴女達のボス周妮は、いずれ
当局に捕まるわ。貴女達も一緒」
「私から貴女へのミッションは、
日本へ送り込まれた50名の
夏冬旅行社の派遣ガイド全員
を私のMJ社へスカウトする
こと」
「彼女らの待遇は、現状を保障」
「貴女の待遇は、上海支社長よ」
IQ130の頭脳が高速回転した。
結論は二杯目の、テキーラベース
カクテル「マルガリータ」の注文
と同時に、告げられた。
(つづく)
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■主な登場人物(適宜掲載)
▶俣阿野志隈 私立探偵・極秘諜報員
▶浜まり 弁護士・極秘諜報員
▶俣阿野京歌 志隈の妻・極秘諜報員
▶白木唯 映像クリエイター・極秘諜報員
▶白石香織 旧姓白木香織・唯の異母姉妹
▶浜智之 まりの夫・寺の住職
▶深川舞 ㈱マーケティング日本・事業部長
▶周妮 元MJ上海首席・元ルポライター
▶宋露思 夏冬旅行社の派遣ガイド・IQ130
■本作は、フィクション作品。
登場する地域・人物・組織等の名称及び
写真イラスト等は現存のものと無関係。
諸制度や時代考証などの齟齬は、ご容赦。
■添削・校正なしでの配信。
誤字脱字の程、ご容赦。
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